深夜手当(深夜割増賃金)とは? 夜勤手当との違いと計算方法

従業員の労働意欲を損なわないためにも、割増賃金を正確に計算して給与の未支払いを防ぐことは、企業にとって大変重要です。本記事では、給与計算を行ううえで戸惑いが生じがちな深夜手当(深夜割増賃金)について、夜勤手当や残業手当との違いを明示しつつ解説します。また、深夜手当を正しく理解して算出できるように計算方法もご紹介します。

深夜手当(深夜割増賃金)とは?

深夜手当とは、深夜帯に勤務した従業員に対して支払われる、その労働時間分の割増賃金のことです。法定労働の時間内・時間外や、正社員・アルバイトなどの雇用形態を問わず、深夜帯に勤務した全ての労働時間に対して割増賃金を支払う必要があります。深夜手当は労働基準法に定めがあり、順守しなければなりません。

深夜手当が発生する時間帯

労働基準法で定められた深夜手当として、割増賃金の支払いが必要になる深夜帯は、午後10時から午前5時までです。ただし、厚生労働大臣の承認により、期間や地域を限定して、午後11時から午前6時までを深夜帯とする場合があるので注意しましょう。

また、1日8時間、1週間で40時間が法定労働時間として定められており、これを超えて働かせると、時間外労働として扱わなければなりません。なお、時間外労働には上限があり、臨時的な特別の事情がない場合には月45時間かつ年間360時間、そのような事情がある場合で労使が合意していれば年間720時間です。深夜労働の時間については、特に上限などの規制はないので、時間外労働の上限規制を守れば事足ります。

参照元:労働基準法(e-GOV)

深夜手当の割増率

深夜労働をさせた場合に支払う賃金の割増率は、労働基準法で25%以上と定められています。例えば、時給1,000円で雇用している従業員を所定の勤務時間内に深夜労働させた場合には、1時間あたり割増分が250円以上必要なため、1時間あたり1,250円以上を支払わなければなりません。

また、深夜労働が法定の1日8時間または1週間40時間を超える勤務となる場合には、深夜労働の割増率(25%以上)に時間外労働の割増率(25%以上)が加算されるため、150%以上の賃金の支払いが必要です。従って、時給1,000円の従業員ならば、割増分の500円以上を含めて、1時間あたり1,500円以上を支払わなければなりません。

さらに法定休日に深夜労働させた場合には、深夜労働の割増率(25%以上)と休日労働の割増率(35%以上)の両方が適用されるため、支払わなければならない賃金は160%以上と計算されます。これを時給1,000円の従業員に当てはめると、1時間あたり1,600円以上となります。

深夜手当と夜勤手当の違い

深夜手当と似た言葉に夜勤手当があります。両者は、法律で定められたものか否かで区別が可能です。

労働基準法で規定される深夜手当とは異なり、夜勤手当は企業が自由に設定できる手当の一種です。深夜手当は企業側が従業員に対して支払い義務を負いますが、夜勤手当については法律上の支払い義務がありません。

【手順解説】深夜手当(深夜割増賃金)の計算方法

深夜手当は「1時間あたりの賃金×深夜労働の割増率0.25×深夜帯の労働時間」で求められます。詳しい計算方法を以下に解説します。

Step1. 1時間あたりの賃金を求める

給料が月給制の場合には、最初に1時間あたりの賃金を求めておかなければなりません。そのためには、まず「(365-1年間の所定休日数)×1日の所定労働時間÷12」という計算を行い、その年の月平均所定労働時間を算出します。そして、「月給÷月平均所定労働時間」を計算することで、1時間あたりの賃金が求められます。ただし、ここで計算に用いる月給には、一律に支給するものを除き、通勤手当や家族手当などの手当は含まれないので、注意が必要です。

なお、給料が時給制の場合は、そのままの時給を用いて計算して構いません。

Step2. 深夜帯にあたる労働時間を計算する

次に、全労働時間のうち、深夜に労働した時間を出勤簿などから算出します。それと同時に、その深夜労働が法定労働時間外労働や法定外休日労働(会社が定めた休日の労働)に該当するか否かも、確認しておかなければなりません。

なぜなら、深夜労働が法定労働時間外に行われた場合は時間外労働分の割増賃金を、法定休日労働として行われた場合は休日労働分の割増賃金を、別途支払う必要があるからです。「法定外残業時間」「休日労働時間」「法定内・外を問わない深夜労働時間」については、別々に求めておきましょう。

Step3. 時給に割増率と労働時間を乗算する

最後に、時給に割増率と労働時間をかければ、深夜手当が算出できます。

ここでは具体例を示すため、所定労働時間を午後3時から午前0時とし、午後7時から午後8時まで休憩させて8時間労働させたと仮定して、時給1,500円の従業員に支払う深夜手当を計算します。この場合には、午後3時から午後10時までは時給1,500円のままです。しかし、午後10時から午前0時の2時間は深夜労働にあたり、深夜労働の割増率は25%なので、1,500円×(1+0.25)×2=3,750円が深夜労働の割増賃金となります。

ここで、注意しなければならないのは、所定労働時間が変わると賃金の計算結果も変わることです。所定労働時間が午前9時から午後6時(内休憩1時間)の場合に、時給1,500円の従業員が、月45時間の範囲内で午前0時まで残業したケースでは、午後6時から午前0時まで時間外労働による割増率25%が適用されます。午後10時から午前0時は、深夜労働の割増率25%も加わって、二つの割増率が適用され、1,500円×(1+0.25+0.25)×2=4,500円が深夜労働の割増賃金となります。

こんなときどうする? 深夜手当計算のケース別対処法

深夜手当の計算で判断に迷いやすいケースを三つピックアップし、ケースごとの対応方法を解説します。

固定残業時間制の場合

企業側が定めた時間分の時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金を毎月定額で支払う「固定残業時間制」を採用している場合は、原則として、通常の手順どおりに支払いが必要です。深夜労働分が固定残業代に含まれていない場合には、深夜手当を別途支給しなければなりません。

また、深夜手当が固定残業代に含まれていても、企業があらかじめ設定した時間分を超えて深夜労働をさせた場合には、別途、割増賃金の支給が必要です。

裁量労働制の場合

企業が、みなし労働時間を定めて給与を計算し、労働者に働き方をゆだねる裁量労働制でも、通常の手順どおりに深夜手当を支給しなければなりません。

出勤簿などに基づいて深夜手当を計算し、8時間を超えるみなし労働時間を設定している場合には超えた分について時間外手当を加算します。また、労働者が法定休日に働いた場合には、休日手当の加算も必要となります。

割増額に端数が生じた場合

労働基準法上は賃金の全額払いが定められているところ、通達により例外処理が認められています。すなわち、1時間あたりの割増賃金や1カ月間の割増賃金の総額を計算して、1円未満の端数が出た場合には、50銭以上ならば1円に切り上げ、50銭未満ならば切り捨てます。

また、事前に就業規則で定めておけば、1カ月の賃金を計算する際に100円未満の端数に対して、50円未満ならば切り捨て、50円以上ならば100円に切り上げという処理が可能です。

労基法違反を防ぐ! 深夜手当・深夜労働に関する注意点

労働基準法違反を防いで、深夜手当を正しく計算・支給するために、特に注意したいことは次の3点です。

時間外労働・休日労働とは別に計算が必要

深夜手当の計算では、所定労働時間などの条件に応じて、時間外労働の割増率や休日労働の割増率を加算しなければなりません。従って、深夜労働は、時間外労働や休日労働と切り離して計算する必要があります。これに伴って、勤怠管理には、時間外労働時間、休日労働時間、深夜労働時間をそれぞれ別に記録・計算できる仕組みが必要です。

「管理監督者」にも深夜手当は発生する

「管理監督者」とは、労働基準法第41条に定められる監督者や管理者のことであり、経営者と共に労働条件などの決定や労務管理を行う立場にある者を指します。企業内での権限を有し、その地位に見合う待遇を受けているとされるのが管理監督者であるため、時間外手当や休日手当は適用されません。しかし、管理監督者であっても、深夜手当は支払わなければならないので注意が必要です。

「従業員によっては深夜労働自体が禁止・制限される

労働基準法によって、深夜労働自体が禁じられたり、深夜労働が制限されたりして、深夜手当の支払いとは関係なく深夜労働をさせられない従業員もいるので注意しましょう。

満18歳に達していない年少者は、交代制で勤務する満16歳以上の男子を除き、深夜労働が禁止されています。また、妊産婦は深夜労働を拒否する権利を持ち、小学校に入る前の子どもの保育や要介護状態となっている家族の介護を行う労働者は、深夜に保育や介護が可能な同居家族がいない場合に、深夜労働の免除を受けられます。

深夜手当の計算を効率化できる「勤怠管理システム」の導入も検討を

深夜手当の計算は、ケース・バイ・ケースで加算するものが変わるため、時間外労働、休日労働、深夜労働をそれぞれ正しくリアルタイムに記録することが不可欠です。雇用形態や勤務形態が複雑になればなるほど、計算が煩雑になり、ミスも増えがちになることなどが、深夜手当の計算・支給に関する業務の課題となります。このような課題の解決策として、複雑な雇用・勤務形態にも柔軟に対応できる勤怠管理システムの導入を検討しましょう。

この記事の監修者

監修者:勝山 未夢
社会保険労務士法人ベスト・パートナーズ所属社労士
立命館大学法学部国際法務特修卒業後、新卒より社会保険労務士法人にて勤務。

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