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タイムカードを計算するための効率的な方法と、改善方法
タイムカードの集計は、多くの手間を取られるうえにミスも起こりやすい作業です。本記事では、給与計算にも関連するタイムカードの集計方法を示し、集計時にどこでミスが発生しやすいのかを明らかにします。また、法律違反やトラブルを未然に防ぐため、ルールや注意点について解説します。さらに、タイムカードの集計作業を効率よく行うためのアイデアもご紹介します。
タイムカードから給与計算を行う二つのやり方
各従業員が記録したタイムカードから労働時間を集計し、それに基づいて給与計算を行う場合の流れを解説します。毎月の集計作業は次の二つの方法で行えます。
1. 電卓を使った集計方法
電卓を使えば、パソコンやソフトウェアなどの導入費用をかけずに集計が可能です。ただし、入力ミスなどが発生しやすくなるため、注意しなければなりません。
終業時刻から始業時刻を引いて出せる勤務時間から、さらに休憩時間を差し引けば労働時間が算出できます。例えば、出勤時刻が7時30分で休憩1時間をはさみ、退勤時刻が16時15分のケースで労働時間を計算してみましょう。
10進数しか扱えない一般的な電卓を用いて、60進数で表される時間(1時間=60分)を計算するには、分を時間の単位に変換しなければなりません。7時30分ならば「7+30/60=7.5時間」、16時15分ならば「16+15/60=16.25時間」です。労働時間は、「16.25-7.5-1=7.75時間」となり、時給1,500円の従業員ならば、7.75×1,500で1万1,625円が賃金となります。
なお、度分秒形式で60進数を扱える電卓では、10進数に変換しなくとも、そのまま計算できるので便利です。
2. Excelを使った集計方法
Excelを使用すれば、従業員の就業形態や自社の勤怠ルールで計算が複雑になっても、簡単に集計できます。
Excelを使った集計方法では、例えば
- A列に日付
- B列に出勤時刻
- C列に退勤時刻
- D列に休憩時間
という入力欄を設けてタイムカードから転記し、E列に労働時間の計算結果を出力できるような表を作成します。
ここで出勤時刻、退勤時刻、休憩時間、労働時間を入出力するセルは、セルの書式設定で分類のユーザー定義から、[h]:mmと入力して書式を設定しておきましょう。
タイムカードの情報を転記して、
- 日付のセルA2が「4月1日」
- 出勤時刻のセルB2が「7:30」
- 退勤時刻のセルC2が「16:15」
- 休憩時間のセルD2が「1:00」
となっている場合には、労働時間のセルE2に「=C2-B2-D2」と計算式を打ち込めば労働時間が自動計算され、「7:45」と表示されます。
E2セルを選択したままセル右下にある小さな黒塗りの四角形をドラッグし、適用する日付のセルに到達するまで下に動かせば、この計算式を他の日付にも適用して自動計算することが可能です。
1カ月分をまとめて合計労働時間を出す場合に用いる関数が、数値を加算するSUMです。
E2からE31に記入された労働時間を足し合わせ、E32に合計労働時間を出したい場合には、E32に「=SUM(E2:E31)」と入力するか、E2からE31を選択してオートSUMをクリックすれば自動計算されます。
合計労働時間直下のE33に時給の金額を記入し、E34に給料の金額を表示する場合には、セルの書式設定でE33とE34を通貨という形式に変更し、時給1,500円ならばE33に1,500と入力します。
ここで、E34には「=E32*E33」ではなく、単位を合わせるために「=E32*E33*24」と入力するのがポイントです。
「合計労働時間×時給」が給料の金額になるはずですが、E32の書式を[h]:mmとしているため、24を掛けないと正しい計算結果が得られません。
なお、Excelを利用する場合には、多様なテンプレート類がネットで配布されているため、必要に応じてダウンロードして活用するのがおすすめです。
タイムカードの集計時に間違えやすいポイント
タイムカードの集計時に間違えやすいポイントや、特に知っておきたい給与計算上のルールには、次のようなものがあります。
労働時間の計算は「1分単位」で行う
労働時間の計算は1分単位で行わなければならず、15分単位や30分単位といった独自ルールによる労働時間の切り捨ては、労働基準法に反します。残業の増額が1分単位なのはもちろん、遅刻があった場合の減額も1分単位なので、注意が必要です。
なお、集計をExcelで行っている場合、セルの表示形式の設定方法次第では小数点以下の数字が勝手に四捨五入されてしまうため、セルの書式設定を必ず確認しましょう。
残業や深夜・休日の労働時間は別途集計しておく
時間外労働や深夜・休日の労働については、労働基準法で定められた割増率をかけて割増賃金を算出し支払う必要があります。そのため、総労働時間とは別にそれぞれの労働時間を集計して、割増賃金を正確に計算しなければなりません。
1カ月の総残業時間は端数処理できる
時間外労働や深夜・休日の労働時間を1カ月単位で算出している場合は、それらの時間総数について30分未満を切り捨て、30分を超過した分を切り上げる端数処理が認められています。ただし、この端数処理は月単位での計算に限られるため、日ごとの残業時間などを端数処理してはなりません。
休憩時間は労働時間から差し引く
休憩時間は労働時間に含まれないため、タイムカードに出勤と退勤の時刻のみが打刻されている場合は、休憩時間を忘れずに差し引きましょう。なお、作業服への着替えや始業準備、後片付けの時間などは、労働時間に含まれるので差し引いてはなりません。
タイムカードの集計担当者が知っておくべきルールと注意点
タイムカードから労働時間を集計して給与計算を行う際には、上記のほかにも実務担当者が知っておくべきルールや注意点があります。いずれも法律違反状態やトラブルなどを防ぐために必要です。
タイムカード原本の保管期限は5年間
2020年の労働基準法改正で、タイムカードの原本を含む勤怠情報の保存年限が、3年から5年へと引き延ばされました。勤怠情報は、労働基準監督署などの求めがあれば提示しなければならないので、5年間適切に保管しなければなりません。
“扶養内勤務”の労働時間は会社側が管理する
扶養内での勤務を希望する従業員を抱えている場合には、いわゆる「130万円の壁」などを超えないように、労働時間の管理・調整が必要です。法律上の義務はありませんが、労働時間の管理・調整は従業員本人ではなく、会社側がきちんと行えると理想的です。
勤怠管理にアナログのタイムカードを使用している企業では、総労働時間をリアルタイムで把握しにくいため、特に気を配らなければなりません。
労働時間の集計や給与計算のミスには罰則も
労働基準法には、給与が正しく支払われなかった場合の罰則規定があります。計算ミスなどで給与が適切に支払われなければ、いわゆる未払い賃金とみなされて30万円以下の罰金刑(第24条・第120条第1号)が科せられますこともあります。また、割増賃金分が少なく支払われると、6カ月以下の懲役刑か30万円以下の罰金刑(第37条・第119条第1号)に処せられる可能性もあるので、いずれも細心の注意が必要です。
支払いミスは企業の信頼低下にもつながるため、ダブルチェックなどを徹底し、ミスをなくす体制をつくりましょう。
業務改善!タイムカードの集計作業を効率化するアイデア
タイムカードを手作業で集計する作業はミスが起きやすく、従業員数によっては担当者の事務負担がかなり大きくなります。集計作業はシステムやツールを活用しながら、できる限り省力化していくべきです。タイムカードを勤怠管理に用いている場合、給与計算を効率化する方法には、例えば次のようなものがあります。
集計機能付きタイムレコーダーを導入する
集計機能がついていたり、給与計算ソフトと連動したりするタイムレコーダーを導入すると、担当者や担当部署の省力化が可能です。自動集計されるので、タイムカードの打刻を手作業で転記する必要がなくなり、集計から給与計算までの作業の負担が軽減できます。従業員にとっても、タイムカードの打刻と出退勤時刻の申請という動きは変わらないため、負担が増えません。
勤怠管理システムで打刻をデジタル化する
アナログなタイムカードを廃止し、勤怠管理システムを導入すれば、集計作業の自動化が可能です。例えば、ICカードやスマートフォン・タブレット、生体認証などを用いた打刻を行えるシステムが挙げられます。
勤怠管理システムで打刻をデジタル化するメリットは、集計作業の省力化にとどまりません。まず、紙の書類で勤怠情報を保管する場合と比べて、原本の保管場所が不要になります。加えて、リアルタイムで労働時間が把握でき、扶養内勤務など注意を要する従業員の管理も容易になります。さらには、自動集計でヒューマンエラーが起きにくくなる点も便利です。
ミスのない効率的なタイムカード集計に、勤怠管理システムの活用を
タイムカードの集計作業は電卓による手作業でも可能ですが、労力がかかってミスもしやすいのが難点です。計算を間違えれば、従業員の給料が正しく支払われず、労働基準法違反の罪に問われかねません。そのため、タイムカードの集計にあたっては、ミスが起こりにくく、効率的に行えるような仕組みが求められます。勤怠管理システムの導入により、タイムカードをデジタル化すれば、極めてミスの少ない効率的なタイムカード集計が可能となります。ぜひ活用をご検討ください。
この記事の監修者
監修者:山根 丈宗 氏(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人ベスト・パートナーズ所属社労士。
複数の社会保険労務士法人にて職務に従事。社労士業務歴は約10年にわたる。
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