第5回 e-Japan戦略とe-文書法

e-文書法、ネーミングが良いですよね。
この法律は、まだiPhoneも無くJ-SOX法も施行されていない、今から約10年前の2005年、世界に先駆けてペーパーレス化を推進しよう!と進めた画期的な法律です。

◇e-Japan戦略

e-文書法の背景として、e-Japan戦略を説明します。
21世紀を迎えたまさに2001年1月22日、これからの日本が世界最先端のICT国家になることを目指し、内閣のIT戦略本部により国家戦略として「e-Japan戦略※1」が策定、公開されました。

--------------------------------------------------
※1 e-Japan戦略(首相官邸Webサイト)
--------------------------------------------------

そこには、基本理念や基本戦略、そして具体的重点政策が掲げられています。
20世紀後半に急速に発展した情報社会の未来像を、具現化しようと検討された内容が描かれています。そして、5年以内に実現を目指すとありました。

デジタル記録文化という観点では、電子政府の実現の目標として、「文書の電子化、ペーパーレス化及び情報ネットワークを通じた情報共有・活用に向けた業務改革を重点的に推進することにより、2003年度には、電子情報を紙情報と同等に扱う行政を実現し、ひいては幅広い国民・事業者のIT化を促す。」との記載があります。

素晴らしいですね。既に2001年の時点で、国が率先してペーパーレス化を推進する構想があったのです。
しかし2003年度には実現できず、この後のe-Japan戦略IIでIT規制改革の推進として、e-文書法イニシアティブ※2を掲げた統一的な法律としてe-文書法が制定される流れになったのです。

--------------------------------------------------
※2 e-文書イニシアティブ
法令により民間に保存が義務付けられている財務関係書類、税務関係書類等の文書・帳票のうち、電子的な保存が認められていないものについて、近年の情報技術の進展等を踏まえ、文書・帳票の内容、性格に応じた真実性・可視性等を確保しつつ、原則としてこれらの文書・帳票の電子保存が可能となるようにすることを、統一的な法律(通称「e-文書法」)の制定等により行うこととする。このため、電子保存の容認の要件、対象範囲等について早急にとりまとめ、2004年6月頃を目途にIT戦略本部に報告を行い、法案を早期に国会に提出する。(内閣官房及び関係府省)
--------------------------------------------------

あれから15年……
電車の中を見渡すと、ほとんどの人がスマホをいじっていますね。
ひと昔前では、新聞、漫画、文庫本だったりしたのですが、スマホを介して、SNS、ニュース、ゲーム、メール、、、、、いまや、インターネットが無い日常は考えられません。
e-Japan戦略の成果として、いまや国民のほとんどがインターネットを利用しており、そのデータ量がうなぎのぼりに増加している実態を示すチャートがありましたので紹介します。

平成27年版情報通信白書より

平成27年版 情報通信白書のポイント(総務省Webサイト)

こうしてe-Japan戦略によるインターネット革命は、知識をいつでも入手できる環境を作り出しました。
そう、だれもが「にわか博士」です。疑問に感じたこと、なんでもいつでもどこでも教えてくれます。
その情報が正しければ……良いのですが……
おっと、話がそれました。。。

e-文書法

……という背景で、e-文書法は、e-Japan戦略で宣言した、5年以内ぎりぎりの2005年4月に施行されました。
e-文書法の画期的なところは、書面による保存義務のある規定、原則全てに対して特例規定として、各法令の改正を必要とせずに電磁的記録による保存等を可能としたことです。
これを実現するため、各法令の上位の位置付けとして、通則法と整備法を制定しました。
関連する法律を個別に改正することなく、個々の法律を改正したものと同様の意味を持つ「通則法※3」

通則法の例外事項と、通則法のみでは対応しきれない部分を補うための「整備法※4」です。

そして対象法令は、それぞれの所管府省庁から主務省令にて、
「○○○の所管する法令に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則」という形で、その対象書類等の詳細と技術的要件が規定されています。
各主務省令で規定されている技術的要件は、以下の4点です。

見読性:情報を読み取ることができる
完全性:改ざん、ねつ造、消失の防止
機密性:不正アクセス、情報漏えいの防止
検索性:大量の情報から効率的に引き出せる

法によって規定されている保存期間は、短いもので3年、長いものは数十年にわたります。
これらの要件は、その規定されている期間にわたって満たす必要があり、完全性要件では、起算日以降、改ざん・ねつ造がされていないことを証明するための方策が求められました。
そこで、前回コラムで説明しました、“信頼の時刻”によるタイムスタンプの登場となるわけです。

e-文書法の対象書類は、約250本の法律にある書面による保存等の義務がある書類で、以下からご確認いただけます。

--------------------------------------------------
※3通則法
民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成16年法律第149号)

※4 整備法
民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成16年法律第150号)
--------------------------------------------------

e-文書法によって電磁的記録による保存が可能となった規定(首相官邸Webサイト)

通則法をもう一歩踏み込むと、
第一条に目的が記載されており、e-Japan戦略の流れとイニシアティブによって制定していることが分かります。
第一条(目的)
法令の規定により民間事業者等が行う書面の保存等に関し、「電磁的方法」により行うことができるようにするための共通する事項を定めることにより、
・電磁的方法による情報処理の促進を図るとともに、
・書面の保存等に係る負担の軽減等を通じて国民の利便性の向上を図り、
もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

また、第二条では定義が記載されています。このうちポイントを以下に記します。
・書面=書面、書類、文書、謄本、抄本、正本、副本、複本その他文字、図形等人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物をいう。
・電磁的記録=電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。
・保存等=保存、作成、縦覧等又は交付等をいう。

ここで特記することは、この法律は書面の電子保存のみを容認するのではなく、書面に保存義務がある場合は、作成、縦覧、交付も電磁的記録で容認していることです。
第三条から六条で、それぞれに対して規定しています。
三条=保存、四条=作成、五条=縦覧、六条=交付
なお、書面での保存義務ではなく、たとえば「記録を保存しなくてはならない」とある場合は、e-文書法の主務省令に関係なく、電磁的に保存することが可能です。

さらに整備法では、通則法で包括的に規定する事項の例外事項、通則法案のみでは手当てが完全でないもの等72法律について所要の規定を整備しています。

こうして、e-文書法で、会社関係書類のほとんど全ての文書が電子で保存等が容認され、企業活動で日々発生する紙文書の破棄が可能になったというわけです。

次回は、e-文書法「整備法」で国税関係書類の電子化が容認された、電子帳簿保存法について書きたいと思います。

次回は4月5日(火)更新予定です。

★更新情報は「ERPナビ(大塚商会)Facebookページ」にて!

このコラム読者におすすめの製品

この記事の著者

セイコーソリューションズ株式会社 戦略事業開発部 部長

柴田 孝一

1982年 電気通信大学通信工学科を卒業し、株式会社第二精工舎(現セイコーインスツル株式会社)に入社。
2000年にタイムビジネス事業(クロノトラスト)を立ち上げ、2013年にはセイコーソリューションズ株式会社の設立と共に移籍。SEIKOグループのサイバータイムビジネス責任者として現在に至る。
専門分野は、タイムビジネス(TrustedTime) 論理回路設計・PKI・情報セキュリティ。
タイムビジネス協議会 (2006年発足時より委員、2011年より企画運営部会長)
『概説e-文書法 / タイムビジネス推進協議会編著』(NTT出版)共著
タイムビジネス信頼・安心認定制度 認定基準作成委員
セイコーソリューションズ株式会社

ICT社会における新しい文化「デジタルエビデンス」 バックナンバー

ページID:00110783