第20回 INPITタイムスタンプ保管サービス

僕のあのエビデンスどうしたんでしょうね? ご安心ください! 無償でタイムスタンプを預かるサービスを特許庁の外郭機関であるINPITが開始しました。今回はそのINPITタイムスタンプ保管サービスについて解説します。

INPITタイムスタンプ保管サービス

第7回のコラムで解説しました、「特許庁における営業秘密保護サービス」が、2017年3月27日に開始されました。
認定事業者によるタイムスタンプを公的機関であるINPITが預かり、預かり証を発行するシステムです。
国内外における営業秘密に係る証拠保全に有用なサービスとして、利活用されることが期待されます。
今回は、その内容を解説します。

サービス開始の背景

イノベーション手法の変化や新興国企業の技術力向上に伴い産業構造のパラダイムシフトによって企業の知財戦略が高度化しつつあり、生み出した技術について、権利化する戦略と秘匿化する戦略とを適切に組み合わせることなどが求められるようになっています。これをオープン&クローズ戦略と言います。

第7回 知財保護でのデジタルエビデンス活用

また、人材の異動による営業秘密の漏えい事件も多数発生し、世間を騒がせています。
技術情報や営業秘密の保有の立証手段確保は、企業にとって大変重要ですね。
さて、情報保有の立証手段……
公証制度がありますね。しかし、手続きが複雑だし、デジタル時代の大量な技術情報を適時に保全するには、コストもかかるし処置もとてもとても大変ですよね。
一方、簡単に利用できる、一般財団法人日本データ通信協会のタイムビジネス信頼・安心認定制度で認定されている事業者が発行したセキュアなタイムスタンプ(以下、認定タイムスタンプ)がありますが(注)、利用者自身が保管する際に紛失してしまうリスクや民間サービスであることや、まだ認知度が低いことから、その証拠能力に疑問を持たれることもあります。

注:本コラムでは、認定された事業者が発行したデジタルエビデンスとして、時刻ログとの区別から、認定タイムスタンプというコトバにしています。

これらの背景から、平成25年(2013年)に閣議決定された「日本再興戦略」において、「世界最高の知的財産立国」を目指す取り組みの中で検討された結果、情報保有立証をより簡便に行えるように、認定タイムスタンプをもっと利活用する仕組みとしてこのサービスが開始されたのです。

表-1:公証制度と認定タイムスタンプの比較

 公証人の活用(公証制度)認定タイムスタンプ
費用日付情報の付与700円1件につき数円程度
取得手段事前に公証役場と調整のうえ請求
事務取扱時間は平日の08:30~17:00
インターネットでいつでもどこでも取得可能
根拠民法467条、515条の確定日付のある証書とみなされます。電子帳簿保存法施行規則第三条にて規定されています。
総務省指針「タイムビジネスに係る指針」によるタイムビジネス信頼・安心認定制度(日本データ通信協会)
技術標準特になし日本標準 JISX5063-1
国際標準 RFC3161、ISO/IEC18014

認定タイムスタンプは、

  • 「重要な秘密情報」を持ちだすことなく、保有時点の立証説明を国内外において長期にわたって可能にします。
  • 低コストで、営業秘密や先使用権などの知的財産に関する電子データの存在日付を確保できます。

さらに今般、公的機関にて預かるサービスが開始されたことで、

  • 紛失リスクを軽減、国内外での電子データの存在立証説明が容易になったのです。

サービス概要

このサービスは、企業における戦略的知財管理の支援として、認定タイムスタンプを公的機関が預かるというサービスです。クラウドサービスで、インターネットにつながる環境があれば誰でも簡単に登録して利用ができます。

INPITタイムスタンプ保管サービスサイト

預かってくれる機関は、独立行政法人 工業所有権情報・研修館(National Center for INdustrial Property Information and Training 略称INPIT<インピット>)です。INPITは、特許庁の外郭機関で、産業所有権に関する、対外情報サービス、人材育成支援や営業秘密・知財戦略の相談窓口等の業務を行っている機関です。

公的機関が預かっていることを証明するので、いい加減なものを預かるわけにはいきませんね。
なので、信用のおけるタイムスタンプである、総務省の「タイムビジネスに係る指針」にのっとって運営されている、一般財団法人日本データ通信協会の認定制度で認定されている事業者が発行した認定タイムスタンプのみを受け付けます。

サービス提供時間は、一般的な業務時間に合わせて平日の08:00~19:00です。
セキュアタイムスタンプを預かってくれる期間は10年間で、認定タイムスタンプの時刻に関係なく、いつからでも可能です。
さらに、10年後の延長も可能です。

形態
クラウドサービス
預かり対象
認定タイムスタンプ
証書発行
公的機関の署名付き預入証明書発行(英文併記)
費用
無償
預かり期間
10年間、延長あり
サービス時間
平日 08:00~19:00

活用のメリット

このサービスのメリットは何でしょうか?
2つあります。

  1. 認定タイムスタンプを無なくしてしまうリスクを回避できる。

    デジタルデータの扱いはついつい煩雑になってしまいませんか?
    会社もプロジェクトも事業の状況に応じて、組織はどんどん変化します。
    しかし営業秘密に関するトラブルが発生するのは、将来のいつのことだかわかりません。

    僕のあのエビデンスはどうしたでしょうね?
    “遠い過去のあの情報”の存在を証明しなくてはならない事態になるかもしれません。

    証明したい情報を推測できるメモを付与してこのサービスへ預けておけば、後日、エビデンスとなる認定タイムスタンプを引き出すことができるのです!

    このサービスはよくできていて、預かっている認定タイムスタンプのリストをCSVでいつでもダウンロードできます。

表-3:リストの項目と例

項目備考
タイムスタンプトークン管理番号2017000000004 
ファイル名TimeStamping説明資料.pptx.tst 
アカウントID10000081登録時に付与される預入者のアカウント
タイムスタンプトークン発行日時2017/1/10 19:55:58 
タイムスタンプトークン有効期限2027/5/26 9:00:00 
預入日時2017/3/27 9:19:10 
預入期限2027/3/27 
最終払出日  
預入証明書最終発行日  
メモXXプロジェクト、YY社、基本資料……預入時に自由に記載できるメモ。
検索に有用な内容を記載しましょう。
ハッシュ値F5C1FFE77CD0A4CC2A764144E5F33F10
DDB481E44EBBF8A3C9F3F51B9F794F02
タイムスタンプに含まれている対象情報のハッシュ値
元情報のハッシュ値と比較確認します。
ハッシュアルゴリズムSHA-256タイムスタンプ署名時のアルゴリズム
表示/非表示表示テキスト

なんと、タイムスタンプの中身を復号してリスト化されて、対象情報のハッシュ値も確認できてしまいます!
また、検索も充実しています。これで「僕のあのエビデンス」は簡単に見つけられますね。

図-1:検索画面

  1. 国内外において訴訟に疑義が生じたときに作成日付の立証負担を軽減できる。

    認定タイムスタンプであれば、その対象情報の存在証明は技術的に検証が可能です。
    しかしながら、認定タイムスタンプは日本の民間のタイムスタンプ事業者が発行していますので、場合によっては、その立証に費やす余計な労力を要するかもしれません。
    このサービスは、公的機関が預かっていることをその証明書まで発行してくれるのでとても安心です。
    この預入証明書は、英文も併記してあり、国内にとどまらず海外における立証にも強力なエビデンスになると考えられます。
    預入証明書は、INPITの電子署名(AATL証明書)が付与されたPDFをダウンロードすることで提供されるので、電子データでやりとりすることができます。

図-2:預入証明書の例

立証については、INPITのタイムスタンプ保管サービスについて解説しているページに、その想定活用例として記載されています。

  1. 特許、意匠、商標等の侵害訴訟において、被疑侵害者が先使用権を主張する際に、発明や意匠の実施である事業又はその準備をしていたことを立証したり、商標の先使用を立証したりするケース
  2. 他者の特許権や意匠権の有効性を争う審判や訴訟等において、特許や意匠登録の無効理由となる技術情報等が、出願された時点において公知であった事実を立証するケース
  3. 商標登録の取消しの審判において、商標権者等が登録商標の使用を立証するケース
  4. 営業秘密漏えい事件の訴訟において、漏えいした技術を営業秘密保有者自らがその時点以前に保有していたことを立証するケース

引用元:タイムスタンプ保管サービスについて「4.想定活用例」

この無償サービスが開始されたことで、デジタルデータの存在証明が確実・簡便にできる認定タイムスタンプに、運用・活用上のユーザサイドにおける不安点が補完されたと筆者は思います。
ノウハウや生成された時点で有効か否かわからない情報、営業秘密等、日々大量に発生します。
これらは、事業活動の継続のために必要な重要情報であるにも関わらず、個人に蓄積される環境ではありませんか?
社内の情報管理を見直し、情報保有の立証手段として認定タイムスタンプとINPITのタイムスタンプ保管サービスの活用を検討されることをお勧めします。

次回は6月6日(火)更新予定です。

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この記事の著者

セイコーソリューションズ株式会社 戦略事業開発部 部長

柴田 孝一

1982年 電気通信大学通信工学科を卒業し、株式会社第二精工舎(現セイコーインスツル株式会社)に入社。
2000年にタイムビジネス事業(クロノトラスト)を立ち上げ、2013年にはセイコーソリューションズ株式会社の設立と共に移籍。SEIKOグループのサイバータイムビジネス責任者として現在に至る。
専門分野は、タイムビジネス(TrustedTime) 論理回路設計・PKI・情報セキュリティ。
タイムビジネス協議会 (2006年発足時より委員、2011年より企画運営部会長)
『概説e-文書法 / タイムビジネス推進協議会編著』(NTT出版)共著
タイムビジネス信頼・安心認定制度 認定基準作成委員
セイコーソリューションズ株式会社

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