第21回 フェイクニュース・加計問題で思うこと

SNSで流れたフェイクニュースで米国大統領選や英国のEU離脱国民投票に影響が出ました。加計問題では、政府要人から、「作成した日付や作成した部局が明確でない怪文書で、信ぴょう性に欠ける」という発言がありました。タイムスタンプが付与されていれば……今回は、本コラムの主たるテーマである「トラスト」について書きたいと思います。

フェイクニュース・加計問題で思うこと

データの信ぴょう性について、世界中で話題となっている今日このごろですね。
2017年5月、「データ」がヒトを豊かにする社会の実現を目指して、「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」が閣議決定されました。
今回は、あらためてトラストを整理し、インターネット社会におけるデジタルデータのトラストについて解説しようと思います。

トラストって何?

トラストについて整理します。
トラスト=Trustを辞書で確認すると、信用する、信頼すると記載されています。
信用と信頼は、同意語ではないですよね。

小学館デジタル大辞泉によると
「信用」とは、

  • 確かなものと信じて受け入れること。(例:「相手の言葉を信用する」)
  • それまでの行為・業績などから、信頼できると判断すること。

また、世間が与える、そのような評価。(例:「信用を得る」「信用を失う」「信用の置けない人物」「店の信用に傷がつく」)

「信頼」とは、
信じて頼りにすること。頼りになると信じること。また、その気持ち。
(例:「信頼できる人物」「両親の信頼にこたえる」「医学を信頼する」)
とあります。

信は、虚偽が無ないことなので
「虚偽が無ないと思われるので用いることとしよう、」が信用です。
「虚偽が無ないことが確認できたので頼ろう、」が信頼です。

この違いは、時制で考えると、もっとよく理解できます。
信用:過去のさまざまな情報から、虚偽が無ないので信じて用いる。
信頼:信じて用いるので、将来も虚偽なくやり通すだろうと信じて頼る。

過去の情報から、今信用して、未来の成果を信頼するのです。

本コラムでは、
トラスト=信用して信頼すること
トラスト基盤は、過去情報を信じて未来の結果を委ねることができる社会の仕組み
という概念で書いています。

真偽の判断

では、皆さんはどうやってモノ・コトの信を判断していますか?
次の二つに集約されるのではないでしょうか。

  1. 情報の発信源は?
     これは、情報元を確認するということです。
     「信用に値する相手なのか?」 相手の目を見て話すってやつですね。

     相手を信用できない場合は、
     利害関係が直接発生しない、第三者を介在させることになります。

     この第三者を我々の業界では、
     トラスト(信用)をアンカー(いかりで固定)するトラストアンカーと言います。

     信用できる第三者を介すことで、安心するということです。
     国家であったり、メディアであったり、企業、著名人・有識者、友人・知人、
     自分が判断するうえで、過去の情報から何らかの信用ができる相手ですね。
  2. 情報の確からしさは?
     情報は過去の事象なので、必ず何らかの証跡があるはずです。
     提供される情報が「どれだけ信用に値するか?」を確認することです。
     既に自分が知り得ている知識との相対的比較をする作業ですね。

    さまざまな情報を総合して判断のしたうえで信用し、未来を託すのですね。
    大変高度な作業を、知らず知らずのうちに人は行っているのです。
    AIやビッグデータ時代には、膨大な情報から、機械が信を判断してくれてしまうのでしょうか。
    それには、そもそもの情報の信をきちんと担保しないと大変なことになりますね。

情報の発信源

うわさをどうしてヒトは信じてしまうのでしょう?

現在のようにインターネットが発達していないころの話ですが、
女子高生のたわいもない会話が、銀行の倒産話になって、実際に取り付け騒動が発生したというトンデモない事例があります。
これは、そもそも悪意のない冗談がエスカレートしてうわさとなってどんどん、口コミで広がってしまったという事件です。
ここで、口コミというのが、友人・知人なので、ニュースソースとしてはある程度信用の置けるものだったのです。
この事件が発生したのは1973年、第一次オイルショックによる不景気という社会背景が何らかの影響をもたらしたのでしょう。
いかに、情報の発信源だけでは信を見極めることが難しいかということを教えてくれます。

このことは、フェイクニュースで影響を受けた、アメリカ大統領選や英国のEU離脱に通じる事例です。
さもありえそうなコトが、現代の口コミであるSNSを通して伝搬し、とうとう、国の将来を託す(信頼)判断をしてしまっています。

となると、やはり「情報の確からしさ」が、これまで以上に重要な判断基準になります。
改ざんされていないか? でっち上げられた情報ではないか?

さぁ、何をもって情報の確からしさを確認しましょうか。

情報の確からしさ

証拠、根拠、証言、形跡、痕跡、すなわちエビデンスという記録を求める作業ですね。
情報は過去の事象なので、必ず何らかのエビデンスがあります、それを探して自分の常識と照らし合わせる作業です。
新聞やテレビを通じて報道されるニュースはもとより、行政や企業から発信される情報は、ある程度の偏りはあるにしても、
しっかりとファクトチェックを通して記録・広報される文化が形成されてきました。

しかし、エビデンスも改ざん・ねつ造がされる可能性はあります。
昔は、勝者側が記録することで、不明瞭な情報でも、公開・広告することで世間の常識として残されていました。
裁判制度や情報の精度が向上している現代でも、
現職検事が、重要なエビデンスであるフロッピーディスクの時刻を改ざんした事件(大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件)
現職衆院議員が、証拠の電子メールをでっち上げた事件(偽メール問題)……。
改ざんができてしまう余地がある限り、無なくならないリスクですね。

エビデンス(evidence)とは、e+videre(見ること)が語源です。
当たり前のことですが、人は、自分の眼・耳で見聴きしたことを一番信じるのです。

東名高速で車が飛んでくるという事故がありました。
現場では、いったいどういう状況だったのか不明で、まず、一番に疑義を持たれるのは被害者である運転手でした。
しかし、ドライブレコーダーシステムによって、事故瞬間の動画が明白なエビデンスとして提供されたことで世間の常識を超える事故の事実を、その日のうちに日本中で共有できました。

第三者のサービスによる、複数のカメラ情報はもとより、バスの運行などのメタ情報、そして情報伝達の速さ。
これは、現代のエビデンスを考えるうえで重要なヒントがあると思っています。

インターネット社会でのエビデンス

これまでの現実社会では、対面、書面で、トラストしています。
対面で、相手と直接会話し、
書面で、時間を超えた過去情報を、エビデンスとして入手することで信用し、信頼してきました。

インターネット社会では、これが大変!
無法地帯で、あらゆる情報が流れていますね。
誰もが匿名で瞬時に情報を全世界に流す社会では、膨大な情報が常時流通して、しかも、それらの情報は
削除されることもなく、2次・3次とコピーされ、さらに流通する。
とんでもない社会になってしまったのです!

地球の裏側からでも空間を超えて、情報のやりとりが可能となり、
膨大な情報が時間を超えて、提供される社会。
デジタルデータは何も手を打たないと、誰でも跡形もなく書き換えることができてしまう。
「何が本当の情報か?」をきちんと把握しないといけませんね。

英国のメイ首相が党首を務める保守党の公約(Manifesto)でThe safest place to be onlineとして「デジタル革命を活用するにあたり、きちんとファクトチェックを講じる必要があり、オフラインでルール化、すなわち法制化する」と言っています。

The safest place to be online
In harnessing the digital revolution, we must take steps to protect the vulnerable and give people confidence to use the internet without fear of abuse, criminality or exposure to horrific content. Our starting point is that online rules should reflect those that govern our lives offline.(MANIFESTO 2017からの抜粋)

情報の信ぴょう性が確認できない場合、不正ができてしまう温床になり、不正ができてしまうという事実から、正しい内容でも、否認・否定されてしまうリスクもあります。
否認・否定された場合には、正しいことの立証に費やす労力と、我慢して諦めることによる被害予想のバランスで判断することとなります。
情報の「完全性、責任追跡性、真正性」が担保されていれば、その情報は信頼性が確認でき、本来の情報の内容について議論が可能であり、無駄な労力を費やす必要はなくなります。

今始まったAIやビッグデータ社会では、あらゆる情報がデジタル化され、人間のみならず機械も膨大なデジタル情報に基づいて活動・行動することとなり、機械がデジタル情報の判断をすることになります。デジタル情報の信ぴょう性が保証されていない場合の社会的リスクを考えると、夜も寝られなくなりませんか?

2013年に閣議決定され、毎年見直しをされてきた世界最先端IT国家創造宣言が
2017年5月30日にあらためて「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」
として、「データ」がヒトを豊かにする社会の実現を目指して閣議決定されました。
なお書きではありますが、「データ利活用の促進に当たっては、個人情報やプライバシーの保護、 サイバーセキュリティ対策、知的財産権の在り方、データの品質や信頼性・安全性の確保、AI、ロボット時代の倫理の在り方など、同時並行的に対策を講じ ておくことは言うまでもない。」という記載があり、デジタルトラスト基盤の検討を進めるべく、動き出したと解釈しました。
インターネット社会は国境を超えて情報の流通が成されます、技術的にも法律的にも、グローバルに通用する制度・仕組みづくりが求められますね。

次回は8月1日(火)更新予定です。

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この記事の著者

セイコーソリューションズ株式会社 戦略事業開発部 部長

柴田 孝一

1982年 電気通信大学通信工学科を卒業し、株式会社第二精工舎(現セイコーインスツル株式会社)に入社。
2000年にタイムビジネス事業(クロノトラスト)を立ち上げ、2013年にはセイコーソリューションズ株式会社の設立と共に移籍。SEIKOグループのサイバータイムビジネス責任者として現在に至る。
専門分野は、タイムビジネス(TrustedTime) 論理回路設計・PKI・情報セキュリティ。
タイムビジネス協議会 (2006年発足時より委員、2011年より企画運営部会長)
『概説e-文書法 / タイムビジネス推進協議会編著』(NTT出版)共著
タイムビジネス信頼・安心認定制度 認定基準作成委員
セイコーソリューションズ株式会社

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