第15回 平成28年度税制改正「特に速やかに入力」の「特に速やか」とは?

特に速やか?

電子帳簿保存法規則改正が2年連続で実施されて、本年9月30日以降の申請については、新しい規則になっています。その中で、「特に速やか」という、珍しい文言が、タイムスタンプの規定に記載されました。
はて? 特に速やかとは? 1時間なのか、1日なのか、はたまた1週間なのか?

今回は、時の観念について書いてみます。

時間そのものは、物理的に常に等質かつ均速ですが、我々の生活にとっての時間とは、いつも何かをするための尺度です。なので、時間そのものは一定であるが、その観念はおかれている環境によって、微妙に異なりますね。
確定的に設定をせず、好い加減の「あいまいさ」が人間社会において程よいバランスを保っているのかもしれません。
とはいえ、ある程度の共通認識が無いと、あとあと面倒になることも…。
速やかにやってね? が、双方で独自の常識で大きくずれてしまうと大変ですよね。

国税関係書類における時の観念

電子帳簿保存法では、国税関係書類という重要な書類の電子データ化での非改ざん処理という観点で、直ちに・特に速やかに・速やかにと三段階の表現がされています。
どのように表現されているか具体的に見てみましょう。

  • 直ちに
    2005年e-文書法制定時に改正された時の通達解説に以下の記載があります。
    4-23(入力を行う者の意義)(注1)
    規則第3条第5項第2号ロでは、国税関係書類に係る記録事項をスキャナで読み取る際に、入力を行う者又はその者を直接監督する者の電子署名を行うこととされている。
    これは入力を行った者を特定する目的のほか、入力を行った後、直ちに電磁的記録に電子署名を行うことによって、当該電磁的記録の真実性を確保することを目的としているものである。
  • 速やかに
    取扱通達4-19(速やかに行うことの意義)(注1)
    規則第3条第5項第1号イ((入力方法))に規定する「速やかに」の適用に当たり、国税関係書類の作成又は受領後1週間以内に入力している場合には、速やかに行っているものとして取り扱う。
    また、同号ロに規定する「速やかに」の適用に当たり、その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、1週間以内に入力している場合には同様に取り扱う。(平17年課総4-5により追加)
  • 特に速やか
    取扱通達4-23(特に速やかに行うことの意義)(注2)
    4-23規則第3条第5項第2号ロ括弧書に規定する「特に速やかに」の適用に当たり、国税関係書類の作成又は受領後3日以内にタイムスタンプを付している場合には、特に速やかに付しているものとして取り扱う。(平成28年課総10-15により追加)

どうやら、国税関係書類の電子化的には
直ちに=即時
特に速やか=3日以内
速やか=1週間以内
と定義しています。

国税関係書類のスキャナ保存容認は、紙の状態での不正を防止することと、スキャン後の電子化状態での不正防止の2点で検討がされています。
2005年にe-文書法が制定された時点では、とにかく、さっさとスキャナにかけて、電子化された情報は即座に電子署名によって非改ざん処置をしてねという考え方です。

「直ちに」も、「速やかに」も、この時点で定義されています。

国税関係書類の処置は、当然のことながら民間企業における業務なので、紙の状態から電子化する業務は人が介在する一般的な業務として制度が作られています。
スキャナという事業所に設置されている装置で電子化するため、「速やかに」は、一般的な業務サイクルとして1週間という規定がされ、一方で電子化は、ICTによる処置になるため、即時に対応可能という考え方であったと思われます。
2015年の規則改正で、非改ざん処理はタイムスタンプでも可能であることから、入力者の特定は、その情報を保存することでこと足りるとなり、直ちに電子署名という規定はなくなりました。入力期間の規定に合わせてタイムスタンプで非改ざん処理をすることで電子化後の不正防止とすることになりました。

さらに、2016年の規則改正で、新たに出てきた「特に速やか」は、スマホ・デジカメによる受領者が受領した時点で即座に電子化できる環境が整ったことから、より電子化を推進すべく、スマホ・デジカメによる電子化を容認するにあたり、非改ざん処置として1週間ではリスクがあるということで、さらに短い期間として3日が規定されたと思われます。

なぜ3日か? については、
受領者の場合、例えば出張などで撮影(電子化)してもタイムスタンプを付すことができる環境に無い場合、土日を挟むことを考慮しているようです。
インターネット環境さえ整っていれば、即座にタイムスタンプを付与することはできるのですが、実に心憎い配慮ですね。
人が介在する業務とICTによる処置がアンバランスの状態で規定されているので、まだ「好い加減」のあいまいさが残っているようです。ところで法律である施行規則には、一切、数値による記載はされていません。目安として、取扱通達と解説やQ&Aに記載されているのはそういう背景だと思っています。

注1:平成17年2月28日付課総4-5ほか8課共同「『電子帳簿保存法取扱通達の制定について』の一部改正について」(法令解釈通達)等の趣旨説明について-法第4条((国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等))関係(国税庁Webサイト)

注2:電子帳簿保存法取扱通達の制定について-法第4条((国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等))関係(国税庁Webサイト)

全ての期間には起算日がある

あたりまえのことですが、期間には起算日があります。

特に速やか=3日以内って、実際にはいつまででしょう?
11月14日に受領したら、3日以内というのは、11月16日ではないかと思っていませんか?

実は、期間の起算は、以下のように民法で定義されています。
もしかしたら、認識と異なっているかもしれませんので、あらためて確認しておいてください。

(期間の計算)(注3)
第百三十九条 時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。
第百四十条 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

受領した日から3日以内ですから、第百四十条にあたり、期間初日、すなわち受領した日は、カウントされず、この場合は11月17日までなのです。
なんだか1日得した気分ですね。
これが、受領した時から72時間以内、といった記載であれば同じ3日でも11月16日になるのです。

そして、税法上、国税関係帳簿書類の7年間の保存義務って、単純に保存期間を7年間だと思っていませんか?
税制上の国税帳簿書類は会計年度という概念がありますので、会計年度7年間分の資料を保存してください。ということです。
そして、あたりまえですが、起算日の規定があります。
例えば、法人税法では、施行規則第59条に起算日の規定があります(注4)。
なぜか事業年度終了日からの起算ではなく、2カ月後が起算日になっています。
すなわち、7年間ではなく、最長で8年と2カ月分の資料を保存する義務があるのです。
要注意ですね。

ついでながら、民法では、期間の満了については、日で規定されています。
時間単位での期間という観念が少なくとも現在のわが国には無いためでしょうね。
将来、社会生活上、時間単位で期間を規定しなくてはいけなくなる日もくるのでしょうか?
個人的には、そんな忙しい社会はイメージできませんが…。

第百四十一条(期間の満了)前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。

この期間の起算や満了の定義は、外国ではどのように設定されているか、機会があったら調べてみたいと思います。

注3:民法-第六章 期間の計算(第百三十八条―第百四十三条(「電子政府の総合窓口」総務省行政管理局Webサイト)

注4:法人税法施行規則-第三章 青色申告(第五十二条―第六十条)(「電子政府の総合窓口」総務省行政管理局Webサイト)

時の観念についての判例

時の観念は、ある程度共通認識がないと面倒なことになるでしょう。
電子帳簿保存法では、時の観念について、施行規則上は、定量化せず、取扱通達やQ&Aでその目安を規定しています。では、そのほかの法律的に何らかの規定・判断は無いのでしょうか?
ありました、ありました! 時間的即時性について面白い判例が!

銃砲刀剣類等所持取締法違反被告事件-大阪高等裁判所 第四刑事部(昭和37年12月10日 高裁判例集第15巻8号649頁)(裁判所Webサイト)

日本刀を譲り受けて行政に登録が遅れたことに関する事件です。
事件そのものはここでは、記載しませんが、
銃砲刀剣類等所持取締法の第十七条に「登録を受けた銃砲又は刀剣類を譲り受け、若しくは相続し、又はこれらの貸付若しくは保管の委託をした者は、委員会規則で定める手続により、速やかにその旨を文化財保護委員会に届け出なければならない。」
とあり、その遅延が、「速やかに」、に該当するか否かでの裁判官判断です。
以下、判例からの抜粋を記載しておきます。

  • 「速やかに」は、「直ちに」「遅滞なく」という用語とともに時間的即時性を表わすものとして用いられるが、これらは区別して用いられており、その即時性は、最も強いものが「直ちに」であり、ついで「速やかに」、さらに「遅滞なく」の順に弱まっており、「遅滞なく」は正当な又は合理的な理由による遅滞は許容されるものと解されている。
    ⇒早い順に、直ちに>速やかに>遅滞なく、であるとされています。
  • 「速やかに」というのは、「何日以内に」という数量的な観念とちがって、価値判断を伴う用語であって、その判断には解釈を必要とするのであるが、このことは「直ちに」「遅滞なく」についても同様であり、さらに広く法律用語の大部分についても共通の性格であって、ひとり「速やかに」の用語にのみ限られたものではない。
  • 一定の行為を命ずる場合に「何日以内」というような確定期限をもってするか、あるいは「直ちに」「速やかに」というような定め方をするかは、その法令の立法趣旨、要求される行為の直接の目的、性質、方式などによって合目的的合理的に考えられるべきであって、作為又は不作為を命ずる場合に確定期限による定め方のみで全ての場合に対処することは、複雑多岐にわたる社会生活事象に照らせば、現実に不可能、不適当であることは明らかである。
    ⇒定量的な確定期限ではなく、社会生活事象に照らし合わした好い加減のあいまいさでの時の観念について目安を表現していると思います。

時の定量的な期間について思うこと

ところで、1日=24時間、1年=365日は地球の公転から生じているのでなんとなく理解できるのですが、1週間という概念は、いつごろから当たり前のように7日サイクルなのでしょうか?
365は7では除算できません。1週間が5日だったら分かりやすかっただろうに…。
本当かどうかは不明ですが、どうやら月の満ち欠けで1週間のサイクルができたようです。
新月から上弦、上弦から満月…と大きく形を変えるのが29.5÷4、だいたい7日です。
そして、古代バビロニアでは新月を基準に、7、14、21、28日を休日としていたようです。
旧約聖書では、神が6日の間に天地を創造して7日目に休んだとされています。
労働して休む、というサイクルは大昔からあったのですね。
最近では、ICTの発達のおかげ? で、ありがたくも時空間を超越して24時間365日無休で働ける?時代になっています。永年培ってきた人間の生活習慣として休むということを忘れて結果的に非効率になっているのではないかと思うのは私だけでしょうか?
ところで、1週間の始まりは、いったい何曜日なのでしょうか?
個人的には、しっかりリフレッシュして労働を始めるということで、月曜日を1週間の始まりとしたいと思います。

次回は2017年1月10日(火)更新予定です。

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この記事の著者

セイコーソリューションズ株式会社 戦略事業開発部 部長

柴田 孝一

1982年 電気通信大学通信工学科を卒業し、株式会社第二精工舎(現セイコーインスツル株式会社)に入社。
2000年にタイムビジネス事業(クロノトラスト)を立ち上げ、2013年にはセイコーソリューションズ株式会社の設立と共に移籍。SEIKOグループのサイバータイムビジネス責任者として現在に至る。
専門分野は、タイムビジネス(TrustedTime) 論理回路設計・PKI・情報セキュリティ。
タイムビジネス協議会 (2006年発足時より委員、2011年より企画運営部会長)
『概説e-文書法 / タイムビジネス推進協議会編著』(NTT出版)共著
タイムビジネス信頼・安心認定制度 認定基準作成委員
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