第100回 「面談の仕方が分からない」と悩む課長と、その理由の話

一般的に行われるようになった上司と部下との面談制度ですが、その方法に悩む課長が置かれた状況からはそう思っても仕方がないことで、あまり意識していない日常的な普通のことでも、そのノウハウは実は貴重なものです。

「面談の仕方が分からない」と悩む課長と、その理由の話

今は多くの会社で人事評価や組織マネジメントの仕組みの中に、上司と部下との面談や話し合いの場が盛り込まれるようになりました。最近よく耳にする「1on1ミーティング」は、上司ではなく部下を主役に人材育成を目的とした短いサイクルで定常的に実施する1対1の面談であるため、上司と部下とで面談する頻度は間違いなく増えそうです。
上司と部下との対話が増えるのは良いことですが、その一方で上司は複数の部下を持っていることも多く、上司の側で面談に要する時間的、精神的負担は増してしまいます。負担が少なく効果的な面談の仕方を考えていかなければなりませんが、いずれにしても面談をする機会というのは、今後も増えていく傾向にあることは確かでしょう。

重要視されるようになってきた、上司と部下との評価面談

私が社会人になりたての頃は、会社に評価面談の制度はあったものの、そのやり方は今思えばずいぶんとルーズなものでした。上司と飲みに行って話したことを面談代わりにしたり、「どうせ毎日話しているから」などといって面談自体をさぼったりすることもありましたが、その当時の自分としては特に困ることもなく、そんなものだと別に問題とは思っていませんでした。
しかし最近は、特に上司の側がこんなことをしようものなら、部下からは不真面目、不謹慎、上司失格と批判されるでしょうし、会社からもきつくとがめられることになるでしょう。面談は自分の給料やその他処遇、これからのキャリアに関わる話をする場ですから、最近は上司と部下との双方が、オフィシャルなコミュニケーションとして、面談の場を重要視するようになってきたと感じます。

面談で何を話したらよいのか分からない

そんな中、ある会社の課長から聞いた悩みですが、それは「面談で何を聞き、どのように話せばよいのかが分からない」という面談の仕方についての話でした。
「課長クラスがそれでは困る」など、この課長の能力不足を指摘する見方もあるかもしれません。ただ、こんな悩みが出てきても仕方がない事情がこの会社にはありました。

この課長の属している会社は、半世紀を超える歴史のある会社ですが、評価面談の仕組みを導入したのは、つい2~3年前のことです。
それまでは上司が部下を一方的に評価し、結果をフィードバックすることもなく、また部下からもそれに対する不満の声はなかったそうです。しかし、世の中では評価面談が一般的に行われていることから、それが上司と部下が共に成長していくうえで必要な仕組みと考えて、遅まきながら評価面談を導入することにしました。

しかし、実際に評価面談を始めてみると、想像していた以上に混乱がありました。その最も大きな理由は、「上司・部下面談の経験者が1人もいない」ということです。今までやっていなかったことを始めたとなれば当たり前のことです。
「上司から面談された経験がある人」も「部下を面談した経験のある人」も、社員の中には誰もいません。全ての社員が面談というものの様子を知らないわけですが、経験がないその人たちが上司では、面談で何をすればよいか分からない、うまくできない、自信を持てないとなるのは仕方がないことです。

面談のマンネリ化による課題

面談制度を始めるにあたっては、特に管理職向けの研修など、いろいろ準備したものの、経験者がおらず実際のお手本が一切ないということの影響は思いのほか大きく、「どう面談すればよいのか分からない」という声はあちこちからずいぶんたくさん挙がりました。この解決策は、結局面談の場数を踏んで経験を積んでいくことしかありません。これは上司も部下も同じことです。
その後は研修や個別の相談を継続して行いながら、社員たちが面談の回数をこなしてみんなが慣れていくことで、面談のクオリティは徐々に落ち着いていきました。

この状況を裏返して見れば、社員同士の面談を当たり前のようにやってきた会社は、実は相当な経験とノウハウを持っているといえます。最近増えている1on1ミーティングのように、面談のやり方を変えたとしても、それほど苦労せずに順応することができるでしょう。
しかし、経験がない会社ではそうはいきません。相当な苦労をしながら取り組んでいくことになり、軌道に乗るまでにはかなりの時間がかかるでしょう。
既に定着しているものは、日常的にあまり意識されないことが多いですが、上司・部下面談のようなことを見ても、経験とノウハウの積み重ねは本当に貴重な財産であることをあらためて感じます。

反対に面談制度が一般的になっている会社では、継続してきたがゆえの形骸化やマンネリ感から、「面談なんて意味がなく時間の無駄」などという声を聞くことがあります。
しかし、面談の仕方に悩んだ課長のように、上司と部下が面談を真面目にとらえ、特に上司たちが悩んでいる姿を見ると、「無駄などと言うなら自分たちでもっと有意義な面談にすればよい」と思います。せっかく持っているノウハウが身近すぎて、その意義に気づかず効果を下げている可能性があります。

悪い意味での慣れによるマンネリで、せっかくの面談の場を無意味なものにしてしまっているのであれば、それはもったいないことです。面談制度を通じて積み重ねてきたことは、情報収集としてもコミュニケーションのノウハウとしても、実はとても貴重なものです。せっかく設けられたコミュニケーションの場を、ぜひ有意義なものにしてほしいと思います。

次回は1月25日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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