第99回 人材育成で考えなければならない「環境先行型」と「事前準備型」の話

新しいことに取り組むときには「環境先行型」と「事前準備型」のタイプがあり、その良し悪しは一概にはいえませんが、企業の人材育成の場面では、それぞれのタイプに応じた接し方、育成方法が必要と感じます。

人材育成で考えなければならない「環境先行型」と「事前準備型」の話

もし皆さんが言葉を知らない海外の国で生活することになったとき、事前に言葉を学んでいくか、それとも現地で状況に応じて対応していくか、大きくはこのどちらかになると思いますが、今回はそんな切り口からのお話です。

二つの特性

サッカー元日本代表のある選手は、以前「自分は『環境先行型』で、自分のレベルより高い場所でプレーすることで、いろいろなものを吸収することができる」と話していました。「良い環境に身を置けば、それに応じて自分もレベルアップできる」という意味だと思います。

私自身もどちらかといえば「環境先行型」のタイプで、細かい計画はあまりしないところがあります。
前述の外国語のことでいえば「とりあえずその国に行ってしまえばどうにかなる」「やらざるを得ない環境に置かれれば必要なことは身につく」などと考えがちで、反面、「切羽詰まればどうにかなる」「その場にならないと分からない」など、少し行き当たりばったりというところもあります。

こんな私と逆のタイプで、何事も事前にしっかりと準備をしようとする「事前準備型」といえる人がいます。
「海外に行くなら事前に語学学校でしっかり勉強する」「必要なことは事前にリストアップして計画的に準備する」というような人たちです。

「環境先行型」と「事前準備型」の良し悪しを、一概にいうことはできません。出会った状況に応じて臨機応変での対応が幸いしたことも、逆に計画性が功を奏することもあります。
ただ、それぞれお互いが違うタイプの相手を見たとき、ちょっと反目しあうようなところがあります。
例えば、私が「事前準備型」の人たちの様子を見ますと、「そんな計画どおりにはいかない」「前もって準備してもそのとおりにはならない」などと思ってしまいますし、反対に「事前準備型」の人たちが私のような「環境先行型」の人間を見れば、「計画性がない」「準備が足りない」などと思うのでしょう。
それぞれの基本的な価値観の違いでもありますので、これを修正することは結構難しそうです。

教わる側のタイプを見極める

「環境先行型」と「事前準備型」との間で、最も望ましいのはこの両方を場面に応じて使い分けられることです。
ただ、一人の人間が両方の特性を併せ持つことは難しく、実際にはチームやグループとして、両方の特性を持った人を組み合わせることになるのでしょう。

このタイプによる違いは、企業の人材育成の場面でも考えていかなければならないことです。
「環境先行型」の人に対しては、事前に事細かにレクチャーするよりも、実際にどんどん体験をさせた方が本人も納得しやすいでしょうし、習得するのもたぶん早いでしょう。あまり事前の準備を強いますと、面倒くさくて投げやりになったり、飽きてしまったりするかもしれません。

これが「事前準備型」の人の場合は、前もってある程度の準備期間をとり、必要な知識や技術をしっかり教え、多少の練習を積ませる必要があります。「見て覚えろ」「とりあえずやってみろ」では、本人たちは全く納得できませんし、ついて来ることもなかなか難しいでしょう。デビューするまでにはそれなりの準備と時間が必要です。

人材育成に関しては、新入社員や若手社員が早期に辞めてしまう原因の一つに、この「環境先行型」と「事前準備型」のタイプを見誤った指導があると感じます。

主観的な成功体験はあてにならないこともある

あくまで私が見てきた主観ですが、上司など教える側には「環境先行型」が増えていて、逆に新入社員や若手社員などの教えられる側には、「事前準備型」が増えているように思います。
自分が忙しくて育成に手をかけられない上司の事情が、相手にお任せの「環境先行型」への偏りを生み、失敗したくない、手戻りを避けたい意識が強い新人や若手社員が、「事前準備型」を望んでいるというそれぞれの意識が影響しているようです。
ただ、人材育成の場面では、教えられる側の意識に寄り添うことが大事であり、その人のタイプに配慮する必要があります。

ある人が自分の成功体験を語ったとして、その内容がある人にとっては自信につながるものであったり、反対に自分に合わない納得できないものであったりします。その感じ方はあくまでその人の主観であり、本人が納得できないことであれば、その後の行動が前向きになることはありません。

「環境先行型」や「事前準備型」というのは、ごく一面的なタイプ分けでしかありませんが、どんなことも、その人のタイプに合わせた接し方、育成方法があらためて重要なことだと感じます。

次回は12月22日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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