第79回 うまくいかないのは「能力不足」か、それとも「度量不足」かという話

社員誰かの「能力不足」を批判する声は、程度は違っても多くの企業で聞かれますが、その人に仕事を与えて指導する会社側の環境作りの問題など、受け入れに対する「度量不足」があることに注意しなければなりません。

うまくいかないのは「能力不足」か、それとも「度量不足」かという話

会社によって定義はいろいろですが、ほぼ全ての会社が「優秀な人材」を求めています。採用活動で募集人数を聞いたとき、「良い人がいれば」といわれることがありますが、それは「優秀な人材であれば、募集人数に関係なく採用する」という意味です。人材の質は会社の業績を大きく左右します。

ただ、会社にとってそんなに都合がいい人材は、めったにいるものではありません。せっかく採用しても、思ったほど仕事ができなかったり、期待レベルに達していなかったりということも多いのではないでしょうか。もともとの期待が大きいほど、「期待外れ」は起こりやすくなります。そこまでではなくても、「アイツは能力が低い」「仕事ができない」など、誰かの「能力不足」を批判する声というのは、程度の違いはあれ、ほぼ全ての企業で日常的に聞かれます。露骨に「いなくてよい」「辞めてほしい」など、パワハラまがいの言動を聞くこともあります。

この「能力不足」の指摘が、全て間違っているわけではないでしょうが、その一方で、私は会社の「度量不足」ということも考えなければならないと思っています。

会社の「度量」とは

「度量」とは、辞書を調べると「他人の言行をよく受け入れる、広くおおらかな心」とあり、同じような意味の言葉では、「器の大きさ」「寛大さ」「寛容性」「包容力」「心の広さ」「慈悲深さ」「懐の深さ」などが出てきます。つまり、「能力不足」の人がいたとして、その人に仕事を与える側、指導する側、雇っている側の姿勢や態度、環境作りにも問題があるのではないかということです。

「度量」が備わっている会社の例

最近目にしたTwitterのつぶやきに、こんな内容のものがありました。

ある人が学生の頃にしていた飲食店でのバイトの話でしたが、本人は不注意傾向でミスがあまりに多かったため、店長はクビにするつもりだったそうです。
しかしそんな時に、当時の料理長がいろいろな配慮をしてくれたそうです。揚げ物材料のチェックリストを作ったり、揚げ時間のキッチンタイマーを用意したり、順番に作業するだけのオペレーションの工夫など、ミスをせずに済むような環境作りをしてくれたといいます。「彼は真面目だから工夫すれば使える」と言ってくれていたそうです。この人は今、大学の准教授として障害者支援や合理的配慮の研究に携わっていて、この時の経験が今でも基本になっているといいます。

またある会社では、技能を身につけるのがとにかく遅く、他の人の3倍の時間をかけて、ようやく一人前の仕事を任せられるようになった新入社員がいたそうです。
その当時は「このままやっていくのは難しいだろう」と思われていたそうですが、今は単調な作業でもコンスタントに根気よくやり続けられる性格を生かし、会社になくてはならない人材になっています。
覚えるのが遅い代わりに、反復して覚えたことは忘れないという特性も、指導していた上司は後になってから気付いたと言っていました。

どちらの例も、人材を受け入れた会社側に、十分な「度量」が備わっていたのだと思います。

会社の「度量」を見直す

確かに今のビジネスの世界では、何事もスピードが速いですし、結果もシビアに問われます。じっくり育てる時間がかけられないことも、仕方がない面はあります。ただ、大して教えもせず、フォローもフィードバックもせず、自力でできないからすぐに「能力不足」だといい、「使えないから辞めさせろ」などと平気で言うのは、あまりにも見切りが早くて無責任です。

また、すぐに相手の「能力不足」をいう人は、おおむね「自分はできる」という自負を持っています。しかし、これを第三者から客観的に見ると、ある部分ではそうであっても、ほかにできていないことがたくさんある場合がほとんどです。たまたま顕在化した部分を比べて、そこに優越感を持って他者攻撃をしているだけで、自分のことを客観視できていません。そういう人に「度量」があるはずはないでしょう。

人によって「能力不足」は確かにありますし、本人が自覚して努力、克服することは絶対に必要なことですが、それと同じように、会社にもその人を採用した責任があります。能力の見込み違いは自分たちのせいであり、成長速度が遅いのは、周りの指導に問題があるかもしれません。成果を出しづらい仕事を与えているかもしれません。これを棚に上げて排除しようとするのは、やはり会社の「度量不足」といわざるを得ません。

会社の「度量不足」は、社員の「能力不足」の陰に隠れてしまいがちですが、これを自覚できないと、人材の見切りが早い企業風土がどんどん定着していきます。そして、組織内での他者攻撃は、確実に業績の足を引っ張ります。

「能力不足」と「度量不足」の関係で、自社に気になる点があるならば、一度じっくり見直してみる必要があります。

次回は4月28日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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