第80回 「緻密過ぎる計画」と「無計画」の話

想定外の感染症流行によって、計画の見直しを迫られる企業が多くなっていますが、何をどのくらいまで想定して計画するのかというバランスは難しいことで、このことについていくつかの会社で見聞きしてきたお話です。

「緻密過ぎる計画」と「無計画」の話

新型コロナウイルス感染症が、人々の生活に大きな影響を及ぼしています。「他人との接触を減らさなければならない」ということは、個人の仕事、交流、娯楽や、企業の事業活動、経済活動など、人間の活動のほぼ全てが何らかの制約を受けます。

感染症の蔓延(まんえん)による危機は、かねてから警告されてきたことですが、このタイミングで起こることは、誰も予想していなかったことです。さらにいつ終息するのかという見通しも、少なくとも長引くことだけは想像できるものの、先のことはいまだに分からない状況です。

今は何とか感染者を少なく保ちながら乗り切っていくしかなく、病気の実態が分かって感染予防の方法がはっきりしたり、予防ワクチンや治療薬の開発が進んだりするまでは、本格的に元通りの活動を始めることは難しそうです。少しでも早く対策が進めばと願うばかりです。

今回のことは、ほとんどの人にとって「予定外」「計画外」のことです。多くの企業では、これから現状に基づいて計画を作り直すのでしょうが、数十年に一度というような非常事態では、そもそも計画自体がほとんど意味をなさなくなります。「想定できないこと」の対策は準備できても計画はできません。

緻密過ぎる計画の例

私が行う人事コンサルティングでは、事業計画や人員計画などを手掛けることがあります。

これは、以前お手伝いをした会社ですが、事業計画に非常なこだわりを持っていました。各種の事業計画を綿密に時間をかけて策定します。

3~5年間の中期計画、全社の年度計画、部門計画などが、順次作られて上から降りていきます。全体が完結するまでには3~4カ月、場合によっては半年近くかかった年度もあったと思います。1年間の計画なのに、そのうちの半分くらいは、もう翌年の計画に手を付けています。あくまで私が見聞きする範囲ですが、こういうスケジュールで回っている会社は、実は意外に多いのかもしれません。

環境変化への対応

この会社の弱点は、既に想像がつくと思いますが、環境変化への対応が苦手ということです。計画作りに時間をかけているので、これを見直そうとすると同じように時間がかかります。手続きが煩雑だったり、社内調整が難しかったりということですが、そうなるとできれば計画変更せずに済まそうとする心理が働きます。環境変化を過小評価して「今のままで大丈夫」など、楽観的な想定に傾きがちになります。

「緻密過ぎる計画」は、その後の活動の硬直化と表裏一体です。

「計画策定」が目的に

もう一つ、この会社で気になったのは、計画を達成しようという推進力が弱かったことです。社員が計画書を作り上げるまでで力尽きているように見え、それが大きな理由ではないかと感じました。計画策定に力を注ぎすぎて、計画の出来上がったところがゴールになってしまっているのです。

また、計画達成に向けて動き出しても、しばらくするとまた次の計画作りが始まります。計画策定自体が目的化してしまっている本末転倒な状況に見えました。

思いつきという「無計画」

だからといって、計画が不要なわけではありません。

そもそも、計画が全くない企業に、私はまだ出会ったことがありません。どんなに中身が乏しくても、少なくとも売上・利益計画、活動計画くらいは必ずあります。

ただし、「無計画」と同様の事態を見かけたことは何度もあります。

典型的なのは、経営者や管理者の鶴の一声で、計画にない大きな支出や事業活動の変更などが決まってしまうことです。きちんとした状況判断がされたうえでの決定であればよいですが、単なる聞きかじり、思いつきのようなことも多く見られます。思いつきというのは、まさに「無計画」と同じで、これは決して好ましいことではありません。

どこまで「計画」するか

私自身のことでいえば、計画はそれほど緻密に立てるタイプではありません。わりと短期的な視野の簡単な計画だけで済ませていることがほとんどです。細かい計画は硬直化した決めつけのように思ってしまい、どうせ想定どおりになるわけがないと考えているので、つい無駄なことと思ってしまうのです。

ただ、ある人にこの話をすると「それは想定外の事態の計画が足りない」と言われてしまいました。どこまで「計画」をするのかは、本当に考え方がいろいろです。

「計画」というのは一種のストーリーですが、「緻密過ぎる計画」は、硬直化して臨機応変な対応がしづらくなりがちで、逆に「無計画」は、目指す先が見えずに、事前の想定がしづらく方向性も分かりづらくなります。

適切なバランスが必要なことはいうまでもありませんが、企業や組織の現状でいえば、私は「計画」にとらわれ過ぎている場面の方が多いように感じています。

特に今回のような緊急事態では、「計画にこだわり過ぎない柔軟さ」が必要ではないでしょうか。

次回は5月26日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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