第78回 社外の見る目が変わると社内も変わるという話

昨今は企業のブランディングが重視されるようになっていますが、そんな活動による社外からの目は、良くも悪くも企業風土に影響を及ぼします。今回は、社外に向けた「ブランディング」が社内に起こした変化に関する話です。

社外の見る目が変わると社内も変わるという話

近年は企業がビジネスを展開する中で、「ブランディング」が重要視されるようになりました。
「ブランディング」とは、商品の名称やデザイン、シンボルマーク、キャッチフレーズなどを組み合わせて作られた「ブランド」を、市場や消費者に認知させる活動をいいます。企業そのものも、一つの「ブランド」に当たるでしょう。

「ブランディング」自体は企業マーケティングで必須というわけではなく、実際に広告宣伝をはじめとした特別な活動は、一切行っていないという企業は数多くあります。
この辺りは「ブランド」のそもそもの知名度や活動予算にも左右されることですが、今はネットを活用したさまざまな手法・媒体があるので、事業規模が一定以上の企業で全く「ブランディング」に取り組んでいない会社はほとんどないでしょう。

事業発展と「ブランディング」

これはある著名企業の社長から聞いたお話ですが、その方は自社の事業発展を考える中で、優秀な人材獲得と顧客への説得力向上が必須要件だとして、そのためには会社の知名度を上げることが最も重要だと考えていたそうです。そこから自社の「ブランディング」には注力したといいます。
社外向けにはやや極端な表現を使うなどして、注目を浴びるような仕掛けを数々行いました。その活動の成果はそれなりに出て、結果として会社の知名度は向上しそれに伴い業績も伸びていったそうです。

しかし、そうやって会社が世間から認められていく中で、社員たちがそれを自分たちの身の丈以上に過大評価するようになってしまい、何か勘違いしているような状況が起こり始めたといいます。
「私たちの会社ってすごいよね」「俺たちイケてるよね」というような、要は「天狗(てんぐ)になった」という感じだったようです。社長自身はそんなおごりを常日ごろから戒めており、社員に対してもそのような働きかけをしていたそうですが、一度社内に漂ってしまった空気は、なかなか変えることができませんでした。

「ブランディング」と社内の実態

そしてこの頃、社内では顧客からのクレームが頻発するようになっていたそうです。身の丈を越えた宣伝に実態が伴っておらず、顧客の期待値に達しないことが多かったのが原因でした。
そこでこの社長は、それまで行っていた会社の「ブランディング」の活動を一切停止します。「ブランディング」と実態の不一致が、社外からの信頼を損なうためです。
それに対して不満を言う社員も、それを理由に退職する社員もいましたが、社長は社員たちに「自社のブランドに対して、本当に実力が伴っているのか」「顧客の期待に応えられているのか」「謙虚さが足りないのではないか」と問い続けたといいます。

実際に現場ではクレームを受けている社員は大勢いるわけで、やはり「これではいけない」と気付いて姿勢を正す社員が徐々に出てきます。こちらの姿勢が変われば顧客の反応は変わり、クレーム処理でも反対に評価につながることもあります。社外からの評価が上がることで、社員たちの行動はてきめんに変わっていったそうです。

「ブランディング」が及ぼす社内への影響を考える

「ブランディング」というと、社外からどう見られるか、どうアピールしていくかということが主体になります。
私もこのお話を聞くまでは、「ブランド力が高まれば好ましい」程度の認識しかありませんでしたが、社外からの目が変わると、良くも悪くも社内の雰囲気が変わるようです。

社外向けの「ブランディング」がうまくいっても、社内には異なった影響が出ることがあります。
その影響が「帰属意識が高まる」「愛社精神が増す」「仕事のやりがいを感じる」といったことであればよいのですが、「調子に乗り過ぎる」「天狗になる」「上から目線になる」「偉くなったと勘違いする」など、実はデメリットもあるのです。

これらからも「ブランディング」は、広報や宣伝などの対外的な要素と共に、企業風土づくりの一部にも関わっているといえます。社外向けのメッセージにあわせて、社内にもその意図や現場への要求などの説明が必要です。場合によっては引き締めや戒めも行わなければならないかもしれません。

「ブランディング」は、外向きの発信だけだと思いがちですが、実は社内の組織づくりや企業風土にもつながっています。社外からの目で社内が鍛えられることも、反対に慢心して勘違いをすることもあります。
社内外のメリットを両立させる「ブランディング」は難しいですが、少なくとも両面に気を配ることが大切です。

次回は3月24日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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