第95回 採用担当者を軽視した会社の話

採用活動を進めるうえで、採用担当者は会社の顔と見られることもある重要な存在ですが、必ずしも適性があるとはいえない担当者もおり、それを軽視して放置したままにする影響は、思いのほか大きいものです。

採用担当者を軽視した会社の話

経済環境のさまざまな変化があるにもかかわらず、ここ最近は採用難で困っている企業が数多く見受けられます。
「うちの会社はうまくいっているから問題ない」などという話はここしばらく耳にしていませんから、人材を求める企業のほとんどが、何かしらの問題を抱えているのではないでしょうか。

採用担当者に必要な素養とは

あらためて述べることでもありませんが、採用活動を進めるうえで、それを取り仕切る採用担当者の大切さは、ずいぶん前から常にいわれています。
例えば、新卒で入社した社員の生涯賃金は、平均すると2億円前後などといわれます。つまり、新卒を一人採用するということは、2億円の40年ローンでの買い物とみることができ、さらに入社後の教育費用やその他経費を考えれば、それ以上に高額なものとなります。もちろん会社にそれ以上の貢献をしてくれるので、買い物というよりは投資という位置づけでしょう。今は転職が普通におこなわれ、高額な長期投資という感覚は薄れていますが、いずれにしても採用担当者にはかなりの目利きが要求されることになります。

また、会社が求める人材と相思相愛になるには、応募者との接点が一番多い採用担当者のパーソナリティーは、とても重要です。人当たりの良さや話題の豊富さ、相手目線のコミュニケーション能力、思い込みに左右されないフラットな思考といったことは、採用担当者に必要な素養としてあげられるでしょう。

そうはいっても、それほど素養と能力が高くて経験豊富な採用担当者は、どこの企業でも簡単に見いだせる人材ではありません。若者同士で話が合うよう新人に近い者に任せることや、現場で芽が出なかった社員を違う形で活かすために担当させるようなことは、多くの会社であることでしょう。
そういう中で、採用担当者に不足した部分をカバーするためには、面接の段階が進むごとに経験豊富な上席者に面接官をすることや、最終面接は全て社長がおこなうなどといった形で、会社は人材の見極めがしっかりできるようなフォローを考えます。どの会社でも実施しているごく一般的な取り組みです。

ただ、ある会社の採用活動の様子を見ていて、そういう形で採用担当者の能力不足をカバーするには限界があり、やはり採用担当者はバランス感覚を持ったキーマンでなければ務まらないと思ったことがありました。

会社が欲しい人材を遠ざける可能性も

その会社の採用活動があまりうまくいっておらず、活動方法に関するアドバイスが欲しいとの要望をもらいました。
採用担当者は40歳くらいの男性で、ほかに受付などを手伝うアシスタントの女性がいるものの、説明会や初回の訪問時から一次面接まで、採用活動の前半部分は全てこの男性が担当していました。

第一印象としては、少し思考が独特な人で、良くいえば視点が面白い、悪くいえばちょっと変わった人でした。会社もそのあたりは分かっていて、採用活動後半の内定に至るまでの数回の面接は、別の部門長や役員がおこなうことになっていました。自社に合わない人材を採用してしまうような問題は、それで防ぐことができていました。

ただ、実際にその採用担当者が活動している様子を見ていると、やはりそれなりのマイナス要素がそこかしこに見受けられます。
例えば、新卒向けの説明会では、ほとんど会社説明をしないままでいきなり質疑応答に入り、そのまま個別のやり取りを半分雑談のように続けています。本人が言うには「説明するより質問に答えてあげた方が理解しやすいから」とのことです。全くおかしな考えではありませんが、説明会の参加者を見ていると、明らかに気持ちが引いていっている様子です。上司などほかの誰かが気付いて指導やアドバイスをすればよいですが、そこまで手が回っていないのか、それとも説明会を軽視しているのか、そもそもその場に誰も立ち会っておらず、全て採用担当者にお任せです。
これでは本来欲しい人材を、応募前の早々に「辞退」の形で失っている恐れがあります。

同じようなことは一次面接の中でもあり、例えばどう考えても仕事に関係なさそうな質問を延々としていたり、どうでもよさそうなことをピンポイントで「面白い」「個性がある」などと評価していたりします。
こちらも全然ダメではありませんが、応募者には「何でそんなことを聞くのだろう」という疑問や不満の様子が見られます。説明会と同じく会社が欲しい人材を遠ざけている可能性があります。

これは極端な例かもしれませんが、本当に「採用担当者に向いている」と自信を持って言える人材をその役割にすえている会社は、実はそれほど多くありません。「適性がない人材を採用担当にした会社が悪い」と言ってしまえばそれまでですが、そもそもそういう人材は、なかなかいるものではありません。

相応の能力を持った人材の任命を

ある会社で、それまで営業のエースだった人材を採用担当に任命して成果をあげたところがあります。営業部門は異動に大反対でしたが、営業職らしい人当たりの良さとコミュニケーション能力、さらに多くの社員と交流があって会社全体のことをよく知っていることを見込んでの抜擢でした。成果は思っていた以上に上々で、会社は「あらためて採用担当者の役割の重要さを認識した」と話していました。

やはり採用担当者は、会社の顔と見られることもある重要な存在であり、これを軽視すると採用だけでなく会社全体の評判にもマイナスに働くことがあります。人材採用という高価な投資を目利きする役割と考えれば、誰にでも安易に任せられる仕事ではありません。
採用活動を成功させるためには、「採用担当者」の役割を軽視せず、相応の能力を持った人材の関わりが必須要件といってもよいのではないでしょうか。

次回は8月24日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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