第88回 「アウェーな経験」が人を育てるという話

企業の中で仕事をしていると、居場所や交流する人が限られて「アウェーな経験」の機会が少なくなりがちです。しかし、このアウェー経験が人の成長につながるとして意図的に取り組む企業があります。

「アウェーな経験」が人を育てるという話

スポーツの国際大会などで、「アウェーの洗礼」といわれるものがあります。
例えば、相手国で開催されるサッカーの国際試合では、「指定された練習場なのにロッカーもシャワーも使えない」「酷暑の国なのにホテルの部屋にエアコンがない」「エレベーターが壊れていて20階以上の部屋まで階段を上り下りさせる」「部屋の電話が鳴り続ける」「外で夜中じゅう相手ファンが騒いで寝られない」などという話を聞いたことがあります。

この全てが仕組まれたことかどうかは分かりませんが、こんな不利な環境を押し付けられてもそれに耐えた経験や、予期せぬことが日々起きるような不自由な経験が、選手としてその後の成長につながっていくともいわれます。

「アウェーな経験」が少ない現状

ただ、こういった経験は企業の中で働いていますと、遭遇する機会はかなり少ないのではないかと思います。
もちろん立場や役割、職種による違いはあり、飛び込みばかりの営業スタイルや、いきなり一人で海外赴任や出向となるといったこともあるでしょうが、それでも企業に属していれば、身近に味方や頼れる誰かが必ずどこかにいる感じがします。「アウェーな経験」が少ない人の方が大半ではないでしょうか。

私自身の経験でいえば、独立前の会社員時代はほとんどがホームといえるような仕事環境でした。取引先や営業の人たちは自社に出向いてくれることの方が多かったですし、仕事をしている中では常に周りに上司や部下、同僚がいました。

どこかへ出掛けたとしてもほかの社員と一緒か、一人であっても面識がある顧客先や招待されたイベントなど、それほどアウェーな感じを持たずに済む場所がほとんどでした。部門長になってからは多少アウェーな場面が増えましたが、それでも数は少ないものでした。

しかし、今の私の仕事環境では、自分が代表者ということもあり、「一人で客先に行って仕事をする」「知り合いが誰もいない会合や研修に一人で出向く」「初対面の方とお会いする」という場面が圧倒的に多くなりました。言ってみればほとんどが「アウェーな経験」です。会社にいた頃と今の環境では、全く正反対といってもよい変化でした。

私はもともとアウェーな感じはそれほど嫌いではなく、逆に未知との出会いが楽しみだったりする方ですが、それでも会社に在籍していた当時は、知らない人に会って人脈を広げようとは思いませんでしたし、そもそも「アウェーな経験」の必要性をほとんど感じていませんでした。上司、部下、同僚、その他関係先の既知の人たちとうまく交流することの方が、仕事上のメリットも大きかったからです。実際に企業で働く人の多くは、これと同じような感覚ではないでしょうか。

「アウェーな経験」を意図的に積ませる

これはある経営者から聴いたお話ですが、大企業のような安定した組織にいる人ほど内向的な価値観が身に付いてしまっていて、いざ転職や出向などで社外に出ても、なかなかうまくいかないことが多いとのことでした。
大企業であればほとんどのことが自社グループ内で完結できますし、社外との交流も自分たちの方が強い立場であることの方が多いでしょう。転職を考えずに定年まで働こうという人が大半ですから、ずっと付き合う社内での人間関係が最も重要になります。「アウェーな経験」の必要性は低く、そういう場面に出会うこと自体が少なくなるのは当然のことでしょう。

しかし、最近幾つかの企業から聞いた話として、ある企業ではあくまで希望者に対してですが、グループ外企業へ期限を区切った出向をして、全く異なる仕事や企業文化を経験させる制度を設けていました。希望者はもともとそういう問題意識を持っているということもありますが、それを経験した人の多くが視野が広がり、大きく成長して戻ってくるそうです。

また別のある企業では、マネージャー候補の社員に一年近い期間の社外研修を義務付けていました。二代目経営者や他社の幹部社員が集まるような経営講座で、毎月一週間程度の終日講義と、そのほかに補習や課題、論文作成などがあるそうです。そこにはほかの社員と一緒ではなく、必ず一人だけで参加させるとのことです。
参加した社員はそこで学ぶ知識だけでなく、他社の幹部社員や経営者と交流することで、良くも悪くも自分のレベルを知ります。危機感を持つことや、反対に自信を持つこともあり、やはりその後の行動の仕方が大きく変わるそうです。
どちらの例も「アウェーな経験」を意図的に積ませることで、社員の成長を促しています。

企業に属していると「アウェーな経験」をする機会自体があまり多くないかもしれません。
ただ、先行き不透明なこれからの時代には、自身の成長のためにも「アウェーな経験」が大事なことは、スポーツの世界だけに限らないことです。それをあえて経験するには、未知の場に参加し、未知の人たちと出会うなど、自分自身でも意識を持った取り組みをすることが必要です。

「アウェーな経験」は、人の成長に役立つことがたくさんあります。

次回は1月26日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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