第105回 「言葉遣い」のとらえ方の違いに関する話

「言葉遣い」は時代とともに変わっていくものですが、敬語のような敬意表現は相手と良い関係性を築くためには変わらず必要なものであり、それを身につけるには、より幅広い人たちと接することも必要です。

「言葉遣い」のとらえ方の違いに関する話

今回は人付き合いの中での「言葉遣い」に関するお話です。

これはコロナ禍以前からの傾向ですが、会社での飲み会を嫌う人が増えているといいます。「強制される雰囲気が嫌」「仕事以外で上司と付き合う意義を感じない」など、理由はいろいろのようですが、誰かと一緒にお酒を飲んだり食事をしたりというのは確かにプライベートでの行動ですので、仕事とプライベートをはっきりと線引きしておきたい意識が強まっていることはあるのでしょう。
社外との接待や社内でも気の合う者同士の飲み会はともかく、公式行事としての社内飲み会は、たぶん減っていくのだろうと思います。

言葉遣いはお互いの関係次第

私自身のことでいえば、仕事関係の人と飲み会や食事会に行く機会は、比較的多い方だと思います。特に社会人になりたてのころは、上司や先輩など、社内の人たちと場を共にすることがかなり頻繁にあり、自分もわりと喜んで参加していました。基本的には年齢が上の人たちとのお付き合いでしたので、そこで社会人的な「言葉遣い」などを学んでいたところはあったように思います。

そんなころにあった、当時の社長を含めた数人での飲み会でのことです。
二次会で向かったのは社長が常連の店でしたが、そこには同じく常連らしい初老の男性がいました。それなりに酔っている様子で、初対面のその人から「お前は社長に対する言葉遣いがなっていない」といきなり説教が始まりました。私としては、いつもと同じ程度の敬語での会話という意識です。その時はちょっと頭にきて、「社長と自分との間で成り立っていることを、初対面の知らない人からとやかく言われる筋合いはない」などと強めに反撃してしまいました。

今思えば言い過ぎだったという反省はあるものの、当時怒りを感じた理由は、その人の話には「社長という肩書の人は無条件に敬うのが当たり前」というニュアンスがあり、権威にこびることを強制された気がしたからでした。
そもそも言葉遣いをどうするかは、そんな肩書や権威の問題ではなく、お互いの関係性の中で不快感がなく成り立っていればよいことです。その関係性を知らない第三者から、一方的な価値観で言われる筋合いはないと思いました。
特に男性が年齢を重ねていくと、言葉遣いが不遜(ふそん)になったり、なれなれしくなったりしがちですので注意が必要ですが、「言葉遣いはお互いの関係次第」という自分の考え方は、今でもほとんど変わっていません。

相手との心理的な距離が言葉遣いに現れる

最近は新人研修の季節ということもあり、いろいろな場で「敬語」に関する話題に出会います。「新人の言葉遣いが……」と愚痴をこぼす担当者もいます。
言葉遣いや敬語に関しては、基本とされることがいろいろありますが、私は「相手との心理的な距離次第で言葉遣いは変わる」と思っています。面識が少ない人、初対面の人、親しくない人、素性をよく知らない人に対しては、やはり初めは敬語が無難で、あとは相手との心の距離の縮まり具合で言葉遣いは変わっていきます。

最近の若者は、「敬語はかえって壁を作っている感じがする」「親密でない気がする」といって、例えば相手と面識がなかったり年下であったりしても、自分には敬語を使わないように求めることがあるそうです。これも相手との心理的な距離のとらえ方から、あえてそういう言葉遣いを選んでいるということです。

私の場合、年齢不詳の相手との付き合いも多く、その時は友達言葉で会話していて、あとで年齢を知ったら大先輩だったというようなことがたまにあります。こちらに気を遣わせないように、あえてフラットな関係で接してもらった時は、気を遣わせた申し訳なさと親近感が両方ですし、逆に威圧するニュアンスの友達言葉の人もいて、そういう時はやはり気分はよくありません。
その違いは言葉遣いから敬意を感じるか、それとも不遜さを感じるかという点ですが、言葉遣いというのは時代とともに変わっていくものであり、私の感じ方には古すぎるところがあるかもしれません。

幅広い年齢の人たちとのコミュニケーションで学ぶ

日本語は非常に語彙(ごい)数が多くて表現が豊かな言語の一つだとされます。敬語のように相手に敬意を示す表現も、他の言語よりも豊富だといわれます。「言葉遣い」はこれからもどんどん変わっていくでしょうが、相手と良い関係を築くための適切な表現は、時代が変わっても必要でしょう。
相手を不快にしない「言葉遣い」を心がけたいと思いますし、そのためには気の合う仲間だけでなく、より幅広い人たちと接する機会も必要ではないかと思っています。

次回は6月28日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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