第103回 自分の力で「変えられること」と「どうしようもないこと」との区別という話

誰にでも仕事上の愚痴の一つや二つはあるものですが、自分で「変えられること」と「どうしようもないこと」とを区別して考えることが大切であり、自分の力でどうしようもないことをいくら考えても意味がありません。

自分の力で「変えられること」と「どうしようもないこと」との区別という話

仕事の愚痴は大きく分けて二つ

仕事をしていれば、うまくいったことに対する喜びがある一方、思いどおりにならないこともたくさんあります。どちらかといえば、そんなことの方が多いのかもしれません。仕事上や勤務先の会社に対する愚痴の一つや二つは、誰でも何か必ずあるはずです。
そんな愚痴は、内容によって大きく二つのタイプに分けられます。自分の力で「変えられること」「どうにかできること」と、自分の力では「変えられないこと」「どうしようもないこと」との二つです。

会社や組織に属していればありがちな愚痴

これは数年前のことですが、会食の席である人が、勤務している会社の愚痴を語り始めました。
その話によれば、自身の部署異動があり、その後の新たな担当業務は自分に向いておらず、やりたい仕事ではないといいます。本人が言うには、「あるプロジェクトが失敗したせいで異動させられたと思うが、失敗の原因はそもそも会社が体制を整えられなかったためで、自分にはどうすることもできなかった」とのことです。

さらに、この人は異動した先の上司と、どうも肌が合わないそうです。自分からの依頼だけがペンディングになっていたり、打ち合わせなどでも自分の意見がなかなか理解してもらえなかったりと、何をするにも時間がかかってしまうといいます。以前の上司はもっといろいろなことを任せてくれていて、仕事がスムーズだったそうです。
「今はとにかく仕事へのやる気が全く出ない」と言っていました。

企業や組織で仕事をしている人であれば、わりとありがちな話のように思いますが、気になるのは出てきた話の大半が、自分がいくら考えても「どうにもならないこと」「仕方がないこと」ということです。

そもそも会社に雇われている限り、自分がどんなに努力していたとしても、成果を上げていたとしても、どういう仕事を与えられるかは会社次第ですので、不本意な異動という可能性は常にあります。
後から掛け合っても、撤回されることはそれほど期待できず、本当に嫌なら転職くらいしかできることはありません。独立して自分の裁量で仕事をする方法もありますが、ハードルはそれなりに高いものがあります。不本意な異動の確率を減らすには、自分自身が出世して決裁権を持つ立場になるしかありません。

また、プロジェクトの失敗の話も、理由はどうあれ全て過去のことです。結果が出てしまっていることは、いまさらどうすることもできません。上司との相性についても、上司が部下を選べることはたまにありますが、部下が上司を選べることは、よほど特殊な事情がない限り会社の中ではおそらくほとんどありません。同じく「どうしようもないこと」です。

こうやって考えると、企業で働く中で「自分では変えられないこと」の比率は結構多いと感じます。
私たちのような独立事業者でも、思いどおりにならないことはいろいろありますが、仕事は契約を結んで行うのが基本ですので、その条件を踏み超えて他人から一方的に振り回されることはありません。契約に基づいて拒否すればよいことですし、もし仮に振り回されたとしても「これくらいなら受け入れよう」と自分の裁量で決めています。

「自分で変えられること」の比率を上げていく

今回、話題にした愚痴の人が今の仕事環境を少しでも良くしようとするなら、まずは「自分でどうにかできること」の中で、行動の仕方を考えるしかありません。
上司との関係性ではまだお互いの信頼関係がなく、新しい上司にとっても信頼できる部下になっていないということです。「密にコミュニケーションをとる」「期待に応える」といったことで、徐々に任される範囲を広げていくしかありません。
過去のプロジェクト失敗によるレッテル貼りが本当にあるのならば、「失敗理由を上申して理解してもらう」などということは考えられます。そもそも、そんな失敗は考慮していない可能性もあるため、こればかりは直接聞いてみるしかありません。

仕事の向き不向きは何ともいえませんが、「何が向いているか」は他人からの目の方が合っているという場合もあります。初めは嫌々だったのに、やってみると意外に向いていたという話はよくありますし、会社としてもその部署に異動させた意図はあるはずです。本人が「向いていない」と思えば思うほど、本当はできるはずのこともできなくなっていきます。
「自分で変えられること」の比率を上げていく行動を続けることで、気持ちのバランスを整えていくことができます。考えても仕方がない無用な愚痴は減らすことができるでしょう。

自分で「変えられること」をよく考え、「考えても仕方がないこと」を切り捨てていくことは、自分自身のメンタル維持の面からも大切なことです。

「変えられること」と「どうしようもないこと」とが区別できれば、心身ともにもっと良い状態で仕事ができるようになるのではないでしょうか。

次回は4月26日(火)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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