第102回 自己評価の「高すぎる人」と「過小評価の人」の話

企業の評価制度に自己評価を取り入れているところがありますが、「自己評価の高い人」と「過小評価の人」とがいて、評価する上司の立場になると、どちらも同じくらい対応の仕方に難しさがあります。

自己評価の「高すぎる人」と「過小評価の人」の話

企業における人事評価というのは、仕組みの有無や内容を問わず、何らかの形で実施されていることがほとんどです。社長が鉛筆をなめながら、その時の気分で評価していたとしても、人事評価であることに変わりはありません。ただ、それでは社員の不公平感や納得性の欠如につながるので、評価制度という形で仕組みにしている企業がほとんどです。

人事評価制度の中身は、それこそ会社によって千差万別ですが、その中に「自己評価」の仕組みを取り入れている会社が数多くあります。
決められた評価項目に対して評価基準を基に本人が「自己評価」をし、上司は「一次評価」として同じ項目・基準でその部下を評価、面談などを通じてお互いの評価結果を突き合わせて話し合い、納得性を高めようという取り組みです。

「高すぎる自己評価」をする人の傾向

こういう形の制度に評価者の立場でかかわった経験がある人は分かると思いますが、この「自己評価」がいつも高すぎる人がいます。
その理由として、単なる自信家・ポジティブ・失敗を気にしないなど、主に性格的な部分もありますが、「自己評価」をアピールととらえていて、実績を意識的に強く主張している場合があります。評価基準があいまいなために、「自分は頑張ったから」という感覚的な高評価が出てきている場合もあります。
だからといって、詳細な評価基準を設ければ解決するかというと、そう簡単な話ではありません。基準は定量化や計数化が必要となりますので、ともすれば結果主義に陥ってしまいますし、「自己評価」は自分のことなので、どうしても主観的になりがちです。

高すぎる「自己評価」は面接などを通じて修正せざるを得ず、これをその人のモチベーションを下げないように行うのは結構な苦労があります。
また、「自己評価」を本人の前では大きく修正しづらいことを見越して、あえて高評価をしてくる人もいて、こうなると上司と部下が駆け引きしている状況になり、決して好ましいことではありません。
ここでの一番の問題は、本人が「自分を客観視できていないこと」です。解決のためには制度そのものの見直し、研修やミーティングを通じた運用ノウハウの共有、その他さまざまな取り組みを、状況に合わせて地道に続けていくしかありません。

「過小な自己評価」をする人の傾向

こんな「高すぎる自己評価」の問題がある一方、これとは正反対の態度を取る人に出会うことがあります。実態に反した「過小な自己評価」です。
エースとまではいえない、どちらかといえば自己主張が苦手でおとなしい人に多いですが、仕事には真面目に取り組み、評価を得られるだけの長所も実績もあります。にもかかわらず評価項目の大半が最低評価に近いものになっていたりします。本人に理由を聞くと「自分は全てが不足していて、基準に達していない」などと言います。

ある会社であったことですが、長時間残業を減らすために時間管理を徹底したところ、この「過小な自己評価」をする社員が、自主的にタイムカードを押してその後も作業を続けているということがありました。
放置することは時間や健康の管理面で、会社も責任を問われることになりますから、本人を指導して止めさせました。が、すると今度は自主的に仕事を家に待ち帰るようになってしまいました。あらためて本人に注意すると「自分は能力がないから、会社に迷惑をかけないためにはこうするしかない」と言います。

仕事に対して真面目で責任感があり、上司や同僚にも謙虚で協力的なとても信頼できる人物ですが、これは「自己評価が高い人」の場合と同じく、「自分を客観視すること」ができていません。
さらにこういう人は、自己主張をしたり不平不満を発信したりしないので、考えていることや行動が見えづらく、メンタルダウンも起こしやすい傾向があります。問題があっても隠れているため、それがある日突然降りかかってきたり、発覚した時には手遅れだったりする懸念があります。

自らを客観視させる

「自己評価が高すぎる人」には、どうしても足りない部分の指摘が増えてしまい、それがダメ出しの繰り返しのようになって本人を納得させることに苦労しますが、「過小な自己評価の人」の対応も、同じくらいの難しさがあります。どんなに褒めても基準を決めても、低評価の傾向はなかなか変わらず、内面や行動が見えづらい点ではさらに扱いが難しいかもしれません。

それぞれ正反対の態度ですが、どちらも必要なのは「自分を客観視する」ということです。こればかりは長く地道に指導し続けるしかありません。

次回は3月22日(火)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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