第129回 「自分の常識」は「他人の非常識」かもしれないという話

世代の違いに関する話をよく耳にする中で、「常識」という言葉が使われることがありますが、実は常識は千差万別、十人十色でそれぞれ思っていることが違うということに注意しなければなりません。

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「自分の常識」は「他人の非常識」かもしれないという話

「世代の違い」という話題は、いろいろなところで見聞きするものです。その中でよく使われている言葉に「常識」というものがあります。
それぞれの人が自分は正しい前提で「常識」を言い、それと違っていることを「そんなの信じられない」「非常識」などと糾弾します。ただ、この「常識」という言葉は実は人それぞれで、注意が必要というお話です。

飲食店で聞こえてきた会話

これは私が飲食店で食事をしていた時のことです。隣の席にいた初老の男性2人の会話が、なにげなく耳に入ってきたのですが、こんなことを話していました。

「最近の若い者は、ろくに新聞も読んでいない」
「だから世の中の動きを知らなすぎる」
「手紙の書き方も分かっていない」
「だから言葉を知らない」
などなど。

何かそう思うきっかけがあったのか、それとも日ごろからの思いの積み重ねなのかは分かりませんが、お互いにそうだそうだと言いながら盛り上がっています。「常識を知らない者が増えた」「こんなことも教えなければならないとは嘆かわしい」などと言っていました。

「常識」という言葉から感じた偏見

この話の全てを否定はしませんが、私はずいぶん一方的な話に聞こえてしまいました。特に「常識」という言葉が出てくる時はそういう傾向があるように思います。

例えば、「新聞を読め」という話は、私も昔は年上の人からそんなことを言われていましたが、今それと同じことが必要かといえば、あまりそうとは思えません。
現在は、インターネットやスマートフォンをはじめとしたデバイスが普及していて、いつでもどこでも必要な情報が取れます。情報自体の流通も早いですから、常にニュース速報が発信され続けているような状態です。
新聞を購読していなくても、主要な記事はほとんどネットで読めますし、何紙もの記事を並行して読むことができます。

こういう状況であれば、「新聞を読まないから世の中のことを知らない」などというのは大きな偏見で、特に情報量という点では、今の若い世代の方がよほど多くのものを持っています。また、「手紙の書き方を知らない」という話は、私自身も含めて確かにそうですが、それは手紙を書く機会が少なく、書く必要もあまりなかったからです。

ある会社で聞いた話ですが、若手社員に手紙の投函(とうかん)を頼んだところ、切手を貼らずに出してしまったことがあったそうです。それまで郵便を出すという経験は年に一度の年賀状くらいで、切手を貼るという経験自体がなかったそうです。これを非常識と言ってしまえばそれまでですが、手紙がそれほど身近ではない人がいるという一つの証明です。

私は最近、お礼状を書かなければならない機会が立て続けにあり、ネットで文例などを調べながら書きました。知らなくても調べる手段がありますので無事に書くことができましたし、手紙を書かないから言葉を知らない訳でもありません。

これは個人的な話ですが、何でもかんでも手紙で送ってくる年配の知人がいて、その人から一方的な自分の意見ばかりが書かれた手紙をもらって、不愉快な思いをしたことがあります。コミュニケーションの手段が数多くある現在の「常識」で考えれば、やり取りの内容によって、手紙以外にも電話、メール、チャット、その他もろもろをTPOによって使い分けるべきです。

必要なのは、情報感度を高めること

前述の男性2人の話していた「常識」は、自分たちがこれまで経験してきたことから見た一面的なものです。情報リソースが少なかった時代は、新聞を読まなければ始まらなかったかもしれません。しかし、情報リソースをたくさん持っている今の若い世代からすれば、「新聞ばかり読んでいるなんて非常識」などと言われてしまうかもしれません。

これは自分への戒めも含めてですが、過去の経験ばかりに固執せず、できるだけ新しい情報に接しながら、今の「常識」がどのあたりにあるのかについて、常にアンテナを張っておく必要があると思います。
「自分の常識」が「他人の非常識」になっている可能性があります。

次回は6月25日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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