第117回 「競争の激しさ」に比例して現れる「攻撃性」という話

ビジネスの世界では競争が必須で、その激しさが攻撃性につながるという話がありますが、最近は競争を避けて共存や協調を重視する動きもあり、これらのバランスが重要になっていると感じます。

「競争の激しさ」に比例して現れる「攻撃性」という話

近年のビジネス環境において、変化の速さや競争の厳しさが増していると言われます。その中では、製品やサービスの開発競争、人材や顧客の獲得競争、価格競争など、さまざまな競争がつきまといます。
競争相手がいることで、そことの差別化を考えたりするなど、切磋琢磨(せっさたくま)していくことがお互いのメリットになる場合もありますし、あえて競争を避けるために、相手とのすみ分けを考えるニッチ戦略や、お互いが手を組む協調戦略などもあります。

そもそも資本主義の考え方自体が競争原理ですから、当然、厳しい競争にさらされるわけで、今の技術の進歩や経済発展、人々の生活向上なども競争があったからこそという面があります。

「競争」から見るチンパンジーとボノボとの違い

この「競争」ということについて、ある新聞にチンパンジーと、その近縁にあたるボノボとの性格の違いについて書かれている記事を見たことがあります。

見た目はそっくりな両者ですが、チンパンジーはオスを中心とした集団で強い「攻撃性」が見られるそうで、序列1位のボスが仲間のオスに殺されたり、他の集団を攻撃してメンバーを殺したりという戦争行為をするそうです。
その一方、ボノボには疑わしい例が一つだけあるものの、「攻撃性」はほとんど見られず、オスとメスとが対等な営みを築く平和主義者だといいます。

この違いには諸説あり、その中でも結局「生まれつき」という説が有力だそうですが、生殖に関わることが大きな理由ではないかという説があります。チンパンジーの場合はメスの発情期間が短いために、オスは交尾の機会を巡って激しい競争をするのに対し、ボノボの場合は発情期間が長く、交尾やあいさつ行動を通じてオスとメスとがお互いの緊張を和らげるため、争う理由が少ないのではないかとのことでした。

「成果主義」が生む攻撃性

このようなグループ内での競争の様子は、企業の中で起こっていることと共通する部分があります。

例えば、多くの会社で取り入れられている「成果主義」は、組織内のメンバー同士を競争させる仕組みです。その程度は会社によっていろいろでしょうが、中には激しい競争を求められて、社内の雰囲気がギスギスしているようなところもあるでしょう。明確な競争相手とは、やはり協力はしづらいものです。

また、競争をすれば必ず勝者と敗者とに分かれます。基本的に全員にとって好ましい形にはなりません。お互いが勝ったり負けたりする拮抗(きっこう)した関係であればまだしも、勝者がさらに力を付けて、いつまでも勝ち続けることは往々にしてあることです。企業であれば「人事評価の固定化」といったことが起こってきます。

競争に勝たなければ自身の生活がおびやかされるとなれば、何としても勝たなければならないと考え、そこにある種の攻撃性が生まれてくることもあり得るでしょう。

競争と協調とのより良いバランスを見つけだすことが重要

競争の激しさが増すとそこに関わる人々の攻撃性も増すということですが、最近は必ずしも競争を好まずにあえて避けている様子を見かけることがあります。

例えば、優秀な営業スタッフがチーム内で自分の営業成績が突出しないように調整したり、組織内での出世や昇格を拒んだりする人たちがいます。「管理職になりたくない」という人が増えているといいますが、今まで以上に多忙になったり、責任を負ったりしたくないという気持ちとともに、競争の中に身を置く息苦しさのようなものもあるのかもしれません。

また、20代、30代を中心に社会起業家といわれるような経営者がいます。事業活動の形は取るものの、その成功によって社会に貢献することを目的としており、自社の利益や報酬より社会を変えることに意義を見いだす活動をしています。周りより上を目指すという競争ではなく、共助や共存、協調という要素を重視しています。

切磋琢磨という意味では競争が必要ですが、これが行き過ぎると他者に対する「攻撃性」につながります。かつて行き詰まった旧来の成果主義も、結果主義に偏って競争をあおり過ぎたことに一因があるかもしれません。その一方、ただ共助、共存、協調といったことばかりを強調しすぎると、それが「甘え」「なれ合い」「依存体質」といったことにつながってしまう可能性があります。そちらも決して好ましい形ではありません。

特に組織内では、攻撃性につながらない程度の競争と、甘えや依存にならないような協調のバランスが必要です。そのバランスには多様性を尊重する意識が必要ですが、競争を好む人が攻撃性を背景に力を持ちやすい傾向があることにも注意が必要です。

チンパンジーには難しくても、人間であれば他者への攻撃性や依存性を排除して、競争と協調とのより良いバランスを見つけることができるはずです。

次回は6月27日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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