第118回 「組織のムードを壊す人」がよく口にする決まり文句の話

組織の中でムードメーカーと呼ばれる人の存在は好ましいものです。一方でムードを壊す人もいて、その悪影響の表れ方は多様ですが、私が見てきた中でそういう人たちの多くが口にする決まり文句のような言葉がありました。

「組織のムードを壊す人」がよく口にする決まり文句の話

組織作り、チーム作りの中で、「ムードメーカー」と呼ばれる人の存在は大切です。
例えば、チームスポーツで好チームと評価されるところには、多くの場合で「ムードメーカー」の役割を担う人がいます。練習中からチームメイトに声をかけ、試合中のベンチからも大きな声を出して雰囲気を盛り上げるなど、プレー以外でもチームに貢献しようとします。そんな姿勢に周りも影響されて、チーム全体のパフォーマンスが上がっていきます。

また、ムードメーカーは、言葉からイメージされることが多い「明るく元気な人」でなくとも、例えばホテルのバーなどでは、落ち着いた空間であることが重要ですから、そのお店にあった雰囲気を醸し出すことが必要になります。そこで働く人たちも、場に合わせた雰囲気を作り出すムードメーカーということができるでしょう。

もちろん多くの会社でも同じくムードメーカーの存在は重要ですが、ここ最近は、明らかにムードメーカーと見える人に出会う機会は少なくなった気がします。価値観の多様化とか、合意形成を重視する風潮とか、環境変化に合わせて「良いムード」の定義も変わり、そこから人の行動も変わってきていることがあるように思います。

組織のムードを悪い方向に変えてしまう人

このムードメーカーに対して、組織のムードを逆に悪い方向に変えてしまうという人も、残念ながら存在します。ムードメーカーの反対語は「トラブルメーカー」だそうですが、そこまでではなくても、雰囲気を悪くするということではムードブレイカーなどといえるのかもしれません。

「組織のムードを壊す人」の影響の仕方は多様で、仕事をしないマネージャー、文句ばかり言って行動しない後ろ向きな人、心配ばかりの悲観論者、ネガティブ発言ばかりの人、その他いろいろな人たちがいて、雰囲気の壊し方も本当にいろいろです。

リーダーとして、こういう人に手を焼いた経験のある人はいると思いますが、ムードの壊し方がいろいろで対応が難しく、かといってチームから排除するわけにもいきません。中にはリーダー自身がムードを壊す存在になってしまっている場合もあり、そうなるとその組織の立て直しはなかなか難しくなります。

「組織のムードを壊す人」が言う決まり文句

私も今までいろいろなタイプの「組織のムードを壊す人」に出会いましたが、いろいろなタイプがいるとはいうものの、そういう人たちが必ず口にしていた決まり文句のような言葉があります。

それは、

  • 「この書類は“そもそも”必要があるのか?」
  • 「この研修は“そもそも”何のためにやるのか?」
  • 「“そもそも”なぜあの人がリーダーなのか?」
  • 「こんな仕事は“そもそも”やるべきではなかったのではないか?」

など、とにかく「そもそも論」を出してくるのです。

物事がうまくいかない時、原点に立ち戻る意味で「そもそも論」が必要になることもありますが、ムードを壊す人たちが言うそもそも論は、つい正論のように聞こえるものの、議論の矛先をすり替えただけで解決策がありません。問題解決につながらないだけでなく、“そもそも”の言葉でそれまで積み上げた議論をリセットし、建設的な解決策は示さず、提案者を批判したり攻撃したりしますから、その場の雰囲気は確実に悪くなります。

ついつい出てくる無意識の愚痴ということもあるのでしょう。しかし、この発言が前向きなムードに水を差すことは間違いありません。まさにムードを壊す決めゼリフのようなものですが、この「そもそも論」を持ち出す人は、意外に多くの場面で見かけます。

一見すれば的確な問題指摘のように見え、その人の問題発見力が優れているかのように錯覚されがちですが、「そもそも論」の多くは、過去の議論の建設的な部分までリセットし、ただ議論を混乱させて長引かせているだけのものです。そして、社内で相応の立場にいる人や評価が高いリーダーなど、優れた能力があると見られている人が、実はこの「そもそも論」の使い手だったりします。

“そもそも”で始まる話は「組織のムードを壊す人」の決まり文句であり、それが組織のムードに水を差す引き金になることがあります。「そもそも」という言葉が持ち出された時には、十分な注意が必要です。

次回は7月25日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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