第122回 「協調」が行き過ぎた「依存」という話

自身の特性や長所として協調性をアピールする人や、それを好ましいと考える企業も多く見受けられますが、その意識が行き過ぎて、相手への依存に陥っていないかということには注意が必要です。

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「協調」が行き過ぎた「依存」という話

仕事をする中では、よほど特殊な技能が必要で、それをできる人がほとんどいないようなものでない限り、誰にも頼らず1人だけで仕事をする機会はほとんどないと思います。誰か他の人と一緒に、チームや組織といった集団で仕事を行うことが多いでしょう。

一般的な仕事であれば、全てのことを何から何まで1人だけでできることは少なく、いろいろな人からの支援や助言を得ながら、他の人たちと協力、協調しながら進めると思います。チームで行動することによって一層大きな成果が得られますし、チームで何かを達成できた時は、1人の時とは違った喜びがあります。
仕事上のさまざまな場面で、他者との「協調」は大切なこと、重要なことだとよくいわれます。

ただ、私のように組織に属さずに仕事をしている立場では、基本的にはどんなことでも自分の責任で決めなければなりません。そうなると、自己決定ができない状況は好ましくないことがよくあります。他人の意見にとらわれずに物事を決めなければならないということでいえば、少し協調性に欠けているところがあるかもしれず、注意が必要かもしれません。

自分の長所に「協調性」を挙げる人は結構多い

私自身、企業内で行われるような評価面談や、その他の社員面談、採用面接などに関わることがあり、いろいろな企業で多くの人たちからお話を聞きます。その際には個人の性格的な部分が話題になることがありますが、自分の特性や長所として「協調性」を挙げる人は結構多いと感じます。

特に採用面接のような場であれば、その組織になじめる人・周囲とうまくやっていける人の方が応募先会社にとって好ましいと考えて、「協調性」を持っていることをアピールしようとする気持ちは分かります。

ただ、よく感じるのは、この「協調」への意識が強すぎて、それが逆に「依存」になってしまっていると思われる人がいることです。
例えば、上司や会社からの指示命令に対して、疑問や異なる意見があったとしても、それを表に出さずに従うだけであったり、不当と思われる扱いに対して反論をしなかったり、何かちょっとした身近な議論をする中でも、自分の意見を言おうとせず、結論を出したがらないという人がいます。

ここには、「言いたいけど言いづらい」「言うと不利益につながるかもしれないから我慢する」という“非主張行動”の側面もありますが、中には「誰かが決めてくれる」「自分以外の人に決めてほしい」「自分の責任では決めたくない」などという、他者への依存を感じます。

それは協調ではなく「依存」

今のように先行きが見通しづらい環境の中で、取りあえず誰かにすがりたいという気持ちがあるのかもしれません。しかし、いろいろな人の話を聞きながら、決して新人レベルではないその人が置かれている立場を考えると、「それは協調ではなくて依存ではないか」と突っ込みたくなることがよくあります。

最近の組織運営の方法として、階層構造を緩めて誰でも意思決定に参加できるようにしたり、心理的安全性と言って本音を言い合えるような職場環境を目指したり、社員の自律的な行動や判断を促したりといった取り組みがされています。

その反面、先行き不安で型にはめたがるせいなのか、上意下達や指示命令、強制が強まっているような会社が若干増えてきているように感じます。それは自分で考えることをやめてしまい、そこから「依存」に陥りやすい環境と見ることもできます。

依存は自分への不利益となって返ってくる

働く人の意識として、他者を尊重しながら「協調」することはもちろん大事ですが、その中には行き過ぎがあって、他者への「依存」が増している状況があります。ここで上司任せや会社任せ、他人任せなど、他の誰かに「依存」しているツケは、結局は自分への不利益となって返ってきます。

自分が長所で良いことととらえている「協調」が、実は他者への丸投げ、お任せ、思考停止の「依存」に陥っていることがあります。そういう状況になっていないか、いま一度考える必要があると思います。

次回は11月28日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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