第40回 「気づいてやる風土」と「言われてやる風土」は両方が必要という話

年末の忘年会シーズンということもあり、いろいろなお店で食事をしたりサービスを受けたりする機会が多くなっています。そんな中で、特に最近は接客サービスに関して不快な思いをすることが、ずいぶんと少なくなりました。どこのお店に行っても、接客やサービスのレベルがとても高くなっていると感じます。

先日あるお店であったことで、ランチタイムを少し過ぎ、店内は空いてきた時間帯でしたが、会計をした後にお店の方が出入口まで送ってくれ、「午後もお仕事頑張ってください!」と声をかけられました。
お店の全員がそういう対応をしていた訳ではないので、たぶんマニュアルなどではなく本人の気づきで声かけをしてくれたのだと思います。特別に気遣ってもらった気がして、よけいにうれしい気持ちになりました。

“指示待ち”というのは概して非難されがちで、「言われてやるよりは進んでやる」「本人が自ら気づいてやる」という方が良くとらえられることが多いと思いますが、この「気づいてやる風土」が強ければ「良い組織」といえるのかというと、そこには若干矛盾する部分があります。

もしも「良い組織」の定義が、“方針が明確で統制の取れた組織”、“指示命令がはっきりしている組織”だとすると、リーダーシップを発揮するリーダーがいて、そのリーダーの指示を速やかに実行できる組織は「良い組織」ということになります。
実際に私が見てきたある会社では、社長のリーダーシップがとても強く、きちんと立てられた中期計画とそれに基づく年度計画により、明確な方針のもとに日々の仕事が実行されています。直近の業績もなかなか素晴らしいものです。

このようにリーダーシップの強い経営者や、仕事ができるリーダーがいるという会社は、十分に「良い組織」といえますが、その一方、そういう会社では「言われてやる風土」が強かったりします。優秀なリーダーが何でも指示してやらせてしまうのです。
こんな「言われてやる風土」が強すぎると、“自分で気づいたり考えたりする経験が少なくて成長できない”、“リーダー資質を持つ人材がいちいち指示されることに嫌気がさして辞めてしまう”などの問題が起こってきます。要は“次のリーダー”が育ちづらい環境ということです。
「強いリーダーシップ」「仕事ができるリーダー」は、往々にして人の育成を妨げる場合があります。「名選手必ずしも名監督にあらず」という言葉に通じるところがあるかもしれません。

やはりリーダーは、その場の仕事を進めるとともに、人の育成も考える必要があります。これは指示して実行させるだけでなく、「本人に考えさせて、指示内容と同じ結論を出せるようにする」ということが必要になります。「気づいてやる風土」に導くということです。

「良い組織」というのは、それイコール「気づいてやる風土」ではなく、かといって「言われてやる風土」というだけでもありません。
「気づいてやる風土」と「言われてやる風土」は、そのどちらが良いということでなく、両立させることが必要なのだろうと思います。

「良い組織」といわれるには、指示命令や統制と、自律や自発という相反するものの、両方を求めなければなりません。そんな二兎を追わなければならないからこそ、組織マネジメントや人材育成は、どちらも難しい永遠のテーマなのだろうと思います。

次回は1月13日(金)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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