第14回 コスト意識のピントがずれていると感じた会社のお話

会社の業務上で、コスト削減や経費節減を考えるのはごく当たり前のことです。
私は人事コンサルタントなので、コスト削減や経費節減といえば、主に管理部門のビジネスプロセスがテーマになります。業務プロセスまで一気に再構築するBPR(Business Process Re-engineering)のような場合もありますし、目に見えるムダを少しずつ見直していく業務改善のような場合もあります。

経費節減でよく見かける取り組みには、昼休みに電気を消灯する、冷暖房温度を弱めに調整する、コピー用紙を裏紙として再利用することなどがありますが、これらの行為による実際のコスト削減効果は、実はそれほどではないという話を聞きます。どちらかといえば、社員にコスト意識を植え付けるパフォーマンスの要素が強いのだそうです。

私がいろいろな会社と関わる中でも、コスト削減や経費節減と称した社内でのさまざまな取り組みを見かけますが、中には「これは果たして意味があるのか」「本当にコスト削減につながっているのだろうか」と思うようなものがときどきあります。

その中でも、20名ほどのある会社で見聞きしたことが、私の中では特に印象に残っています。

その会社では、郵便物を発送するときに、切手を余分に貼って出すことがよくあるそうです。計量のための秤を買うのがもったいないことと、郵便物の重さをいちいち量るのが面倒だからということだそうですが、余分に切手を貼る金額の積み重ねで、秤などはすぐに買えると思いますし、サイズが異なる郵便物を大量発送でもしない限り、重さを量る手間などはたいしたことがないように思います。

コピー用紙の使用に関してはとてもうるさく、裏紙の使用はもちろん、ミスコピーなどはある枚数を超えるとペナルティが課されます。しかし、コピー用紙の購入は近くの文具屋から、業務で利用するにはどう考えても高い金額で買ってきます。たくさん買っても置き場所がないのと、遠くまで買いに行くのが面倒なのだそうですが、わざわざ出かけなくても通販で安く買えますし、置き場所を工夫してそこに置ける分だけ買えばよいと思ってしまいます。

社内の消耗品は、総務部門がディスカウントストアでまとめ買いするそうですが、いつも買いに行くのは課長の役目です。ムダな物を購入しなくなるからということですが、給料の高い人がわざわざ時間を使って買い物に行かなければならないほどの意義は見えてきません。

いまだに手書きの申請書類が使われていたりしますが、今までこれでやってきたし、パソコンが苦手な人もいるので、あえて変えるのは面倒なのだそうです。ここまでくると、この会社の人たちは、実はコスト意識を持ち合わせていないのではないかと疑ってしまいます。

一般的な感覚からすれば、「本当にこんなことをやっているのか?」と思われるかもしれませんが、この会社の方々からすれば、他に比較対象もないですし、良かれと思ってやっていることなので、疑問を持っている様子はありません。

コスト削減や経費節減という取り組みにおいて、特に間接部門での業務プロセスや事務作業に関しては、実際に発生しているコストや費用対効果をきちんと把握した上で、総合判断しているケースは意外に少ないように感じます。
特に、人間が時間と労力を使う「人件費」の部分があまり考慮されません。担当者などが自分の周りの状況だけを見て、その局所的な判断で業務改善を考えている場合がほとんどで、管理者はそれを追認しているだけということが多いようです。
結果として、余分な人手がかかるようになっていたり、管理のための管理のようなことが起こってきたりします。

現場で行われている作業のたぐいは、ついつい担当者に任せきりになりがちですが、BPRや業務改善に取り組むためには、経営者や管理者でもある程度の状況を知っておく必要があるということでしょう。

企業で取り組むコスト削減や経費節減の取り組みは、家庭でやる節約とは発想が違います。
長い時間軸でコストを下げるために大きな設備投資をすることもあるし、環境負荷の問題を別にすれば、あえて使い捨てをする方が効率的なこともあります。
ある費用だけに注目してそれを管理しようとするより、その管理をしない方が人手がかからず、経費を減らせることもあります。

コスト削減や経費節減については、せっかくの取り組みが本末転倒にならないように、自社の取り組みを今一度見直して頂く必要があるのではないかと思います。

次回は月11月25日(火)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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