第91回 「全額会社負担」でサービスしても効果的ではない話

最近は特に若手社員が会社行事の旅行や宴会を避けたがる風潮があり、それを防ぐために「全額会社負担」といった方法を採る会社がありますが、それは効果的ではなくもっと違った形で工夫することが必要です。

「全額会社負担」でサービスしても効果的ではない話

ここ最近は、コロナ禍で人が集まる行事やイベントの実施が難しくなっています。これは会社が行う行事でも同じで、大人数で集合することや長距離の移動を伴うような行事を実施している会社は、現状ではほとんどありません。
ただ、これはコロナ禍が収束に向かったとしても、状況はあまり変わらないかもしれません。忘年会や新年会をはじめとした社内の宴会や、社員旅行のように社員のプライベートに関わるような会社行事は、特に若手社員の間では不人気の度合いが高くなっています。

ただ、若い社員が圧倒的に多いような会社でも、こういった行事を積極的に実施して、しかも高い参加率を誇っているところもありますから、要は内容とやり方次第ということもあるのでしょう。

久しぶりの社員旅行で聞いた思わぬ感想

少し前の話になりますが、関係先の会社が久しぶり社員旅行を実施することになりました。海外ではないものの、飛行機で移動して有名ホテルに泊まるような、なかなか豪華な旅行です。
この会社では、かつては社員から会費を集めて費用の一部を会社が補助する形で、さまざまなイベントを実施していましたが、会社の業績不振などがあって会社行事は全て中断されていました。
その後は徐々に業績も持ち直し、社員からも行事の再開を要望する声が出始めていたことから、その復活第一弾として企画されたのがこの社員旅行でした。しかも今回の費用は全額会社負担です。

社員旅行は無事に終わり、久しぶりの実施だったということもあってそれなりに盛り上がりました。参加者はみんな楽しんだ様子だったそうですが、その中でちょっと気になる言葉を耳にしたといいます。
それは一部の社員が「昔の旅行の方が豪華だった」「会社はケチっているのではないか」と言っていたことでした。

社長をはじめ、会社側としては「これまで社員には苦しい中を頑張ってもらってきたので、少しでもそれに報いたい」「できるだけみんなに楽しんでもらいたい」「それをこれからの活力にしてほしい」などという思いがあり、今までやむなく中止していた社員旅行を復活させることで、社員のみんなに少しでも喜んでもらいたいと純粋に考えていました。この思いに対しては、ほとんどの社員はその気持ちに素直に感謝していましたが、一部にそうではない人たちもいたということです。

「慣れ」で薄れるありがたみ

こういう話は私の経験上でもいろいろな会社であることですが、この会社では昔はそんなことを言う社員はいなかったそうです。会社としては費用負担も含めて相当に頑張って実施した、かなりの大盤振る舞いのつもりの旅行だったにもかかわらず、それでも社員から「昔のほうが良かった」などと言われたことは、関係者としては結構ショックだったようです。社員は会社が思っているほど、ありがたさや感謝の気持ちは持てなかったということでしょう。
こういう話は海外の企業でもあることで、例えば、シリコンバレーの有名IT企業では、社員食堂でランチを無料提供しているところが幾つもありますが、提供を始めてから何年かが経ってくると、これを「おいしくない」「飽きた」と批判するような社員が出てくるといいます。

これらのことには共通点が二つあります。

まず一つ目は、はじめの頃はありがたみを感じていたことでも、それが継続されて当たり前になってくると既得権益になってしまうということ。さらにもう一つは、自分がお金を出さずに済む状態が続いていきますと、この既得権益の感覚が強まっていくということです。

ある会社では、全額会社負担の豪華な宴会をしましたが、社員は当たり前のように飲み食いをして、大して喜んだ様子もなかったと社長が嘆いていたことがありました。「社員が稼いだお金だから、これくらいは当然」という社員もいたそうです。
その後この会社では、金銭的には社員負担と会社負担のバランスを取りながら、行事の企画は社員に任せる形にしたところ、既得権を主張するような者はほぼいなくなったといいます。

一律化しない工夫と演出とが必要

これはあくまで私の経験上ですが、「全額会社負担」だからといって、その分余計に社員から感謝されることはありません。また、それを定常的に行うほどに既得権になってしまい、当初の効果はどんどん薄れていきます。
これを防ぐには、ある程度の費用を出させる代わりに行事の企画や運営の権限を社員に任せることや、会社補助をいつも同じや一律の形にしないことで既得権化を防ぐなど、その方法はいろいろ考えられます。

決まりきったサービスよりも思いがけないサプライズの方が、喜びや感謝の度合いが増えるということがあります。社員のことを考えて実施していても、同じことの繰り返しや安易な継続は、形骸化や既得権化を産んでしまいます。
せっかく費用を使って実施する会社行事です。効果的にするためにはただお金を出すだけでなく、それなりの工夫と演出が必要です。

次回は4月27日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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