第92回 「教え方を教える」ということの必要性の話

多くの課題が挙げられる企業の人材育成の中で、指導される側以上に「教える側」の姿勢や資質、能力の問題がよく指摘され、教え方を伝える取り組みが重要だと言われるようになっています。

「教え方を教える」ということの必要性の話

人材育成は、どこの企業でも課題に挙げられることが多いテーマの一つです。この中でよく言われることとして、「教える側」に関する問題があります。教わる側や指導される側の問題以上に「教える側」の姿勢や資質、能力の問題がよく指摘されます。

指導方法を改善したくても時間がないという理由でほとんど何もせずに放置していたり、型にはめた画一的な指導のせいで伸び悩む者や辞めてしまう者が出てしまったり、まれに強制や恫喝を含んだパワハラ的な指導がされていることもあります。

部活動での指導方法に変化

これは少し前の話になりますが、ある新聞のスポーツ欄に「暴力に頼らない指導 道半ば」という記事がありました。
それによると、東京都が中高生の部活動における体罰に関する調査したところ、把握された件数は年々減少しているそうです。教員間で「暴力はダメ」という認識共有が進んでいるためですが、その反面で「叩かなくなった代わりに言動のきつい教員が目につく」という話があるそうです。

これまで普通だった強圧的な指導に従わせる方法が否定されたことで、そこから「どうすればよいのか……」と指導方法が分からなくなっている教員が大勢いるとのことでした。

そんな中で、幾つかの大学ではこれから教員を目指す学生に対して「運動部での指導」に特化した講義を始めるところがあるそうです。学生のうちから指導者に求められる資質や理念への理解を深めることで、暴力に頼らないスポーツ指導につなげようという動きがあるとのことです。

変わらない企業での指導方法

この「学校の運動部指導」を「企業の人材育成」に置き換えてみると、さすがに会社では、暴力的な指導までを耳にすることはめったにありませんが、具体的な指導方法としては意外に似ている点があると感じます。
それは「内容の良し悪しにかかわらず、自分が受けてきた指導方法を踏襲する」というところです。

教える立場の人が「自分たちの頃は……」と言って、自分が受けた指導方法そのままに未経験者をいきなり現場に放り出したり、教えないことが当然だと言って突き放したり、逆に手取り足取り細かく教えすぎて本人の考える力を奪っていたりします。

指導している本人は「それが自分にとって良かったこと」と信じているので、自分の指導方法には疑いを持っていません。別の指導方法を、と言われても、何をしてよいのかがイメージできずに耳を貸そうとしなかったりします。
一部には自分がされてきた指導方法に不満があり、それを反面教師にしようとする人はいますが、そういう人であっても、実際の指導方法は自分が不満に思っていたものとそれほど違いがなかったりします。

これはどちらも指導方法が自己流で、自分が経験した範囲の引き出ししか持っておらず、その数や選択肢がとても少ないということが大きな原因です。

この状況を考えると、大学の教員養成の場で始まっている動きと同じように、企業においても「教え方を教えること」の必要性が高まっていることが分かります。

社内に存在する良い指導方法のエッセンスを活用する

こういう話をすると、例えば「部下指導力強化研修」とか「OJT研修」などといったものを受けさせればよいのかという話になりがちですが、必ずしもそういうことではありません。私が思うのはもう少し日常の実務的なことです。

例えば、どこの会社にも「教え方がうまい」「指導力がある」といわれる人が必ずいて、その存在は社内で広く共有されていることが多かったり、特に人事部門はそういう人の指導をあてにしていたりします。育成に向いた仕事の部署やチームがあり、そこへの配属を優先しているような会社は数多くあります。

社内に存在している良い指導方法のエッセンスには、業務内容にかかわらず共通的に活かせる要素が必ず何かあり、これを共有することで教える側の能力は高めることができます。

複数の「指導力がある人」と仕事をする機会を意図的に作り、その人が教えを受けた経験値を増やす方法があります。自分が受けた指導方法のバリエーションが豊富であれば、その人の引き出しも必然的に増えます。

「○○さんの指導方法は、どうすれば一番効果が上がるのか」ということを、指導に関わる複数の人で話し合って共有するという方法もあります。その人の能力や性格を知らなければ適切な指導はできませんし、複数の人で話し合えば指導方法の選択肢を増やすことができるでしょう。個人の経験に依存した画一的な指導は避けることができます。
そのうえで研修などによって学術的な知識や手法などを学べば、教え方の引き出しの数はもっとプラスすることができるでしょう。

他人に対する教え方は、どうしても自分が受けてきた指導方法に偏りがちです。またそれに固執してしまう人も多いです。
効果的な人材育成のため、「教え方を教えること」にもっと積極的に取り組む必要があるように思います。

次回は5月25日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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