連載開始10周年を迎え、100記事を超える過去のコラムから筆者厳選の10記事と、書き下ろしのコラムをまとめて特別冊子をご用意しました。
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第156回 「センス」で片づけない方が良いという話
仕事の能力を「センス」と表現することがありますが、センスの中にはまねができて共有できる要素も含まれており、センスの一言で片づけてしまうと、思考停止に陥ってそれらを共有できなくなってしまいます。
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「センス」で片づけない方が良いという話
「センス」の一言では片づけられない
他人から「センスが良い」と言われれば、基本的には褒め言葉だと思います。
「センス」の基本的な意味として、元の英語「sense」では「感覚」「判断力」などを意味し、日本語ではもう少し広い意味で「感性」「見る目」「バランス感覚」や、その他「才能に近いもの」を含めた意味で使われます。物事の良し悪しや美しさを感じ取り、うまく選んだり形にしたりする力を指すことが多いでしょう。
センスと表現されるものには、いろいろなスポーツでの「競技センス」、音楽や美術などにおける「芸術センス」、服の組み合わせや色使いなどの「ファッションセンス」や「デザインセンス」、さらに一般的な仕事の中でいわれる「経営センス」「営業センス」「技術センス」といったものがあります。
この中で、例えば「競技センス」は、そもそもの身体の作りや体力が違ったり、「芸術センス」はその人固有の感性の違いであったりと、他人にはまねできない要素も多く含まれるため、才能や生まれつきの能力による部分が大きいと考えられる面もあります。一方で、特に仕事で発揮される能力については、必ずしもそうとは言い切れないものもあります。
仕事の「センス」は経験や学習で磨ける
「あの社長は経営センスがある」「あの営業はセンスがない」などということがありますが、ここでのセンスは「良し悪しの判断基準」であり、多くのインプットとそれに対する試行錯誤を通じて磨かれるものです。それは知識と経験の蓄積によって育つ能力といわれることがあります。
気をつけなければならないのは、特に仕事能力を「センス」と言い切ってしまうと、そこで思考停止に陥ってしまい、能力の本当の内容まで見ようとしなくなってしまうことです。
例えば、何が良ければ「センスが良い」と言われ、反対に「センスがない」と言われるのはどんなことなのか、センスという言葉だけでは具体的なことが分かりません。そもそも「センスが良い」と言われる本人さえも、なぜそう言われるのかを理解していないことがあります。また、「センスが悪い」という指摘だけを受けても、本人はなおさら何をどうすればよいのかが分かりません。
仕事の場合、その人でなければできない「センス」にかかわる要素は確かにありますが、成果の違いはそれだけではありません。「コンピテンシー(成果行動)」という言葉があり、これは業績の高い人に共通して見られる行動特性を分析して、その特徴を人材育成などに活用する考え方です。要は「センスが良い」と言われる人の行動パターンを参考にして行動すれば、得られる結果も近いものになる可能性があるということです。「センス」の中身を分析して明確化、言語化すれば、まねできる部分があるということになります。
ただ、「センスが良い」と言われる人たちは、概してそれを直感的にやっており、さらに行動パターンの組み合わせは多岐にわたっているため、これを他人に説明するのはなかなか難しいことです。
つまり、「センス」という一言で片づけてしまう理由には、「説明しづらい」ということが影響していることもあるのでしょう。「見て覚えろ」のような育成方法も言葉で説明しづらいことが理由の一つになっているのかもしれません。
「センスが良い」を可視化して育成につなげる
「センス」といわれる中には、誰にもまねできないその人独自の「センス」としかいいようがないものがある一方、行動の仕方を精査して明確化することで、他人でもまねできるような内容の「センス」もあります。実際に「センスが良い人」の行動分析をしてみると、「当たり前のことを確実にやっていたかどうか」「地道な継続をしていたかどうか」など、実はごく基本的なことだったケースも少なくありません。
「センスが良い」の一言で終わらせず、その中身を可視化して明確化、言語化していくことができれば、多くの人たちがまだまだ伸びしろを見つけることができるのではないでしょうか。
次回は9月24日(木)の更新予定です。
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