第85回 評価の「フィードバック」をしたがらない会社の話

昨今の評価制度は双方向性やオープン性が重視されていますが、最近お話を聞いた幾つかの会社では評価結果の「フィードバック」をしておらず、なぜしないのかという理由には共通しているところがありました。

評価の「フィードバック」をしたがらない会社の話

コロナ禍で急速に広まったテレワークをきっかけに、評価制度の見直しという話が増えています。上司の目が直接届く場所での仕事ではなくなり、評価するうえで重要とされてきた「部下観察」がしづらい環境になりました。そのため、今までよりも仕事の「成果」や「結果」に注目した評価制度に移行する必要があるなどといわれています。
その考え方自体は否定しませんし、今のような働き方の変化から見ても、そういう方向に向かわざるを得ないのは確かでしょう。

ただ、かつて目標管理を中心にして導入された成果主義の評価制度は、目先の安易な目標を立てて、それが達成されれば評価が上がる、人材育成のような中期の取り組みや、地味な定常業務がおろそかにされるといった数々のデメリットが露呈して、結果的に見直しを余儀なくされました。その後もいろいろと試行錯誤が続けられていますが、「“成果主義”にはあまり成功事例が見られない」といった指摘もあり、今後、評価制度を見直すにしても、さまざまな工夫と配慮が必要でしょう。

会社が「フィードバック」をしたがらない理由

昨今の環境変化にかかわらず、「評価制度」の策定や見直しといったテーマは、多くの会社が抱えている課題です。私もいろいろな相談をいただきますが、ここ最近、幾つかの会社から出てきた話は、似たような内容のものでした。
「評価制度」で社員の評価はしているが、本人への結果の「フィードバック」は一切していないというのです。一般社員レベルでは「上司が自分を評価していることを知らない」「評価制度の存在自体を知らない」といった話もあります。

今の評価制度の大きな流れは、「双方向性」や「オープン」といったキーワードがあり、企業はそれに基づいて、面談や360度評価といった仕組みを導入していますが、特に面談を通じた評価に関するコミュニケーションは、多くの会社がごく一般的に行っています。そこで、仕事や評価に関するさまざまな「フィードバック」が行われるのは、割と普通のことです。

ただ、これらの会社に「なぜフィードバックをしないのか」と尋ねますと、返ってきた答えは「マネージャーに説明能力がない」「かえって不満を助長する恐れがある」といったものでした。どうも「寝た子を起こしたくない」という様子が見られます。

評価の最終決定をしているある社長は、「自分に質問しに来れば全部説明する」と言っていましたが、特にそれが制度化されているわけでもなく、周知もされていない状況です。そんな中で、個人的な評価結果を社長まで聞きに行くのは、どんなに経営者との距離が近い会社でも、社員にとっては結構な勇気がいるでしょう。実際に話を聞きに来た人は、一人の課長以外には今まで誰もいないそうです。
いずれにしても、これは会社から積極的に「フィードバック」をしようという姿勢ではありません。

それぞれの会社を見ていて、「フィードバック」をしたがらない理由で共通しているのは、マネージャーの説明能力というよりは、制度とはいっても評価基準があいまいで、鉛筆をなめる余地が大きくて、説明が難しいという事情です。「よくやった」とか「頑張りが足りない」といったあいまいな言葉の伝達で、お茶を濁しているところもありました。

評価の「フィードバック」を行うメリット

評価の「フィードバック」というのは、言い換えると「仕事結果の確認」です。部下はそれによって、自分の良かったことや足りなかったこと、これからやっていくべきことなどを認識します。
「評価制度」は、社員の仕事状況などを確認して、その結果を報酬に反映することが目的の一つですが、人材育成、業務適性の把握、適正配置、モチベーション向上といった目的もあり、そのベースになるのは上司と部下のコミュニケーションです。

「フィードバック」をしたがらない会社には、そう考えてしまう理由は確かにありますが、それらは全て解決可能なことであり、そのせいで失っているメリットがたくさんあります。特に人材育成に関しては、せっかくの社員の成長機会を逃しています。

不満をあおるから「伝えない」ではなく、どう伝えれば納得されるのかなど、「フィードバック」する方法を考えることが大事なのではないでしょうか。

次回は10月27日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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