第65回 「組織変更」と「人事異動」で課題を先送りする社員たちの話

組織変更や人事異動は、変化によるメリットを期待しておこないますが、それがあまりに頻繁だったある会社では、自分はやらずに先送りする悪弊が起こっていました。変化と一貫性のバランスはとても大切なことです。

「組織変更」と「人事異動」で課題を先送りする社員たちの話

4月が年度の切れ目という会社は多いと思いますが、年が明けると会社としては、徐々に組織変更と人事異動を考える時期になってきます。

なぜ組織変更や人事異動をするかといえば、

  • 事業の変化に向けた対応
  • 新しい業務や環境によるモチベーションアップの視点
  • 対象者にいろいろな経験を積ませる人材育成の視点
  • 腐敗や癒着の防止
  • マンネリの回避

などがいわれます。それ以外にもいろいろ理由はあるでしょう。

基本的には会社が事業をおこなううえでメリットになることですが、もちろん組織変更や人事異動に伴うデメリットもあります。

  • 仕事の引き継ぎに関するコスト
  • 慣れや熟練度が失われることでの効率低下

などが大きいですが、これは私がある会社で遭遇して、「こういうデメリットも起こるのか」と強く印象に残っている話です。

それは組織変更や人事異動がある時期になると、その会社では上位のマネージャーから一般社員まで、「とにかく行動しない」「自分では決めない」という姿勢の人たちがどんどん増殖して、課題がどんどん先送りや先延ばしになっていきます。「自分は部署が変わる」「担当ではなくなる」といって仕事を止めてしまうのです。

大きな組織変更や人事異動というのは、一般的には数年サイクルのローテーションなど、中長期の視点も持っておこないますが、その会社はとにかく組織変更と人事異動が頻繁にあります。時には半年待たずに組織名や肩書きが変わり、各社員の仕事内容が変わるようなこともあります。

頻繁な組織変更と異動の理由ははっきり分かりませんが、どうも会社の上層部の考え方として、誰がどんな専門性で何をやっているかということよりも、まずは組織の形ありきで考える机上論が優先されているようです。
そこでどんな問題が起こっているかというと、「自分は変わってしまうから」と言って、仕事に関する数年先の話や中期的な話、年度にまたがる話など、とにかく先の話や将来の話が進められません。

私が関わるのは人事という分野なので、どちらかというと中長期的な視野で進めなければならない課題が多いですが、そういう話題になると、マネージャーをはじめとして、「ここから先は自分が担当するか分からないから保証できない」「自分が判断できる範疇ではないから、その時になったらまた考えてほしい」などといわれます。
これが上司部下の関係、取引先との関係など、会社全体に蔓延していて、社員がみんな口を揃えて「先のことは分からないからできない」と言います。

社員にとっても自分のキャリアを見通せない不安があるでしょうし、責任を持とうとしない上司相手では、本音で話し合う雰囲気もありません。
取引先や出入り業者にとっても、先の見通しがつけられないので、かなり付き合いにくい会社であることは間違いありません。

これに対して会社の上層部は、こんな現場の事情をあまり理解していないのか、このような組織変更のやり方を「事業戦略に合わせた機動的な手法」と捉えています。
しかし、「機動的な組織変更」といえば聞こえは良いですが、ともすると「一貫性のない組織変更」となりかねません。この会社はあくまで極端な例ですが、変化や機動性を強調する半面で、一貫性や中長期視点を欠いている気がしてなりません。

私がいつも思うのは、変化を受け入れて、それに対応していくことが大前提として、物事には変えなければならないことと変えてはいけないことの両方が存在し、場面によって適切なバランスを考えなければならないということです。
どちらか片方だけで良い場面はほとんどありませんし、適切なバランスは常に変わるものです。

やはり、「変化」と「一貫性」のバランスは、常によく考えなければなりません。
ある会社の組織変更、人事異動の様子を見ていて、そんなことを強く感じた一件でした。

次回は2月26日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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