第64回 組織内の制度は「道具」でもあり「制約」でもあるという話

組織内の制度や仕組みを、自分たちの裁量が狭まる「制約」という捉え方をされることがありますが、その一方、決められた仕組みを「道具」として、うまく使いこなして仕事に活かそうという捉え方があります。

組織内の制度は「道具」でもあり「制約」でもあるという話

私がお手伝いする機会が多い人事に関する制度は、組織内の仕組みの一つという位置づけです。
組織における制度化や仕組み作りでは、それによって作業や手順を標準化、定型化することで、プロセスを効率的に進められるようにしたり、質を均一に保ったりすることを目的とします。
しかし、こういった取り組みがその会社の状況によっては、自分たちの仕事上の制約や縛りという捉え方をされることがあります。
新しい制度や仕組みの導入について、「そんなことを決めても、うちの会社は大企業でないから守れない」「柔軟な判断が必要」「杓子定規に決めても効率が悪くなるだけ」「顧客に迷惑がかかる」などといい、今までのやり方を変えることを、非効率、無駄、非合理的との言い方で拒もうとします。こういったことがよく起こるのは、事務処理や手続きのシステム化、ルール化などを進めようとしている場面です。

これは私の今までの経験の中で、結構いろいろな会社であったことですが、新しい人事制度の運用を始めたところで、今まで自分の裁量で物事が決められていた経営者や管理職の人たちが、自己判断の範囲が狭まっていることに気づき、「これではだめだ」といって制度見直しを要求してくるケースです。
それまでは金額見合いで個人の顔を見ながら、鉛筆をなめるような評価をしていたものが、評価ルールが決められたことでそれができなくなり、「そんな制度では運用できない」となるのです。

私も、何から何まで細かくルール化することが良いとは思いませんが、人事評価などにおいて、ある個人の主観を含んだ判断で全てが決まってしまうことは、ゆがみや偏りを正せないという点で問題だと思います。
経営者や管理者から自信満々に、「直接見ている自分が一番よく分かっている」などと言われると、それはさすがに過信で傲慢ではないかと思ってしまいます。

制度や仕組みが確立していないことが多い中小規模の企業の方が、そんな反応になることが多いですが、結局はその時その時で自己判断をしてきた今までやり方が、自分たちに裁量があって都合が良いということでしょう。
組織内の制度や仕組みを、自分たちの裁量が減るのが許容できない、面倒でやりたくないなど、自分たちの仕事上の「制約」と捉えています。

その一方で、決められた仕組みを「道具」として、うまく使いこなそうという捉え方があります。
人事制度であれば、目的の一つとして、現場のマネジメントを支援するという機能があります。例えば、制度の中に評価面談という仕組みを設けていることがありますが、これは現場の上司部下のコミュニケーションの場作り、共通の話題作りという側面を持っています。

仕組みがなければ、たくさん話す人とそうでない人が偏ってしまったり、お互いの相性や信頼関係によって、深い話ができる人と、当たり障りがない雑談ばかりになったりする人に分かれてしまったりして、評価やキャリア、その他仕事上の問題など、肝心な話題で話す機会が作れないかもしれません。
しかし、これを制度に則れば、まんべんなく全員と、評価や仕事上の話題に特化して面談をすることが決められているので、いちいち個別に呼び出したり、話題を探したりする必要はありません。制度の使い方次第でマネジメントの効率は上がります。
このことを理解している人は、制度や仕組みを「道具」として積極的に使おうとします。

また、こういう人たちは、可能な範囲で制度運用をアレンジしながらうまく使い、制度自体をより使いやすい形に変えようと、積極的に働きかけてきます。「裁量がなくなった」などといって元に戻そうとせず、よりよい仕組みや運用方法を一緒に考えてくれます。そのおかげで制度と運用が良いサイクルで回るようになります。

組織内の制度や仕組みは、確かに「制約」という側面を持っています。「制度運用のための制度」のようなものが作られ、決めごとが多すぎて逆に非効率を生んでいるようなこともあります。
それでは本末転倒ですが、組織の効率化のためには適切な制度や仕組みと、臨機応変な運用のバランスが必要です。

制度や仕組みと聞くと、どうしても面倒な手続きや裁量の制約と考えがちですが、逆に制度や仕組みが全くなければ、効率的な組織運営は難しくなります。

組織内の制度や仕組みを「制約」と考えず、「道具」としてうまく利用して使いこなしていく姿勢が必要です。

次回は1月22日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

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小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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