第63回 「人を見る目がある」の勘違いと過信の話

「人を見る目がある」といったとき、相手の一部の様子を見ただけで、その人の全体像がつかめてしまうような人をいうと思いますが、その中には多くの「思い込み」が含まれている場合があることに注意しなければなりません。

「人を見る目がある」の勘違いと過信の話

一般的な感覚で「人を見る目がある」といったとき、相手の行動やしぐさ、表情、態度、言動などの様子を見て、「この人はこんな性格、特性、能力がある」といったように、その人の全体像がいろいろ見えてしまうような人を指していると思います。他人に対する観察力が鋭くて、一を見て十を知るというようなことです。

私のように人事の仕事にたずさわっていたり、メンバーのマネジメントに関わったりする人たちにとって、「人を見る目」というのは結構大事なスキルです。潜在能力も含めて人を評価し、採用する、仕事を任せる、役職に抜擢するなどということの成否は、この「人を見る目」の有無にかかっています。

「信頼した人に裏切られる」「期待した人が働かない」などという経験を繰り返している人は、残念ながら「人を見る目がない」となってしまうのでしょうが、こういう人は概して他人に疑い深く、慎重な態度になりがちなので、失敗をいつまでも繰り返すケースはそこまで多くはないでしょう。
他人にあまり期待せず、実際にやらせてみなければ分からないなどと開き直っていたりしますし、たいてい周りにフォローしてくれる人がいるので、「人を見る目」が原因の失敗は意外に起こしません。

これに対して、「人を見る目」に自信を持っている人がいます。確かに相手の内面を見事に言い当てるなど、その観察力は素晴らしく、それはまさに「人を見る目がある人」ですが、中にはそれほどでもない人が、「人を見る目」に妙な自信を持っていることがあります。

この大きな違いは、前者がこれまで自分が経験として積み重ねてきた「事実」に基づいて考えているのに対し、後者も同じように自分の過去の経験から得た法則ではあるものの、例えば「お箸の持ち方が良い人は家庭教育が行き届いている」「体育会出身者は根性がある」「ゆとり世代は協調性が足りない」など、「自分の思いや価値観」で判断しています。
本人は合理的根拠があると思っていますが、ここには多分に「思い込み」の要素を含んでいます。果たしてそれが「人を見る目がある」といえるのかということです。

どんな人でも多かれ少なかれ「思い込み」というものがありますが、「人を見る目」にとって、実はこの「思い込み」はくせ者です。人間は自分の「思い込み」に合っていることは強く印象付けられて強化され、逆に「思い込み」に合わないことは無視して印象に残らないという特性があります。
自分の好ましくない人物の犯した不始末は「ほら、やっぱり」となり、仮に同じ人物に良い行動があったとしても、そのことは目に入りません。
自分の過去の経験が、この「思い込み」を作り出していて、その始まりは印象的な一つだけのことであったりします。そのことをもっと広い視野で、全体を俯瞰してみたときには、実は何も根拠がなかったりします。

ある会社の採用試験で、囲碁、将棋、マージャンをたしなむ人の評価が高いということがありました。社長の趣味だったようですが、囲碁、将棋、マージャンをやる人は「考える習慣がついていて頭が良い」「人付き合いが良い」のだそうです。
またある会社では、出身の都道府県を参考にしているところがありました。それぞれ性格的な特徴があるのだといいます。

しかし、囲碁やマージャンの話も、出身地の話も、“お箸の持ち方と家庭教育の関係”も、“体育会出身者の根性”も、“ゆとり世代の協調性”も、はっきり言ってそんな一括りでは語れないことばかりです。ステレオタイプでは表現できないいろいろな人がいます。
そもそも“行き届いた家庭教育”とはどんな教育なのか、“根性がある”とはどんな状態を指しているのか、“協調性がある”とはどのレベルのことをいっているのか、結局は人それぞれの主観であり、はっきりした基準はありません。

ある講演で、この「人を見る目」に関する話を聞いたことがあります。そこで言われたのは、「人を見る目の基本は、いかに相手に対する思い込みを持たずに耐えられるかどうかである」とのことでした。「先入観を持たずに人を見られる人」が「人を見る目がある人」なのです。
もう少し言うと、「“人を見る目がある人”は、“○○な人は××だ”という見方をしない人」です。この定義からすれば、「人を見る目がある」と自信を持っていた人に、これと反対のことをしている人が大勢いると感じます。

私自身も、自分では「思い込みで人を評価しない」と思っていましたが、それは「思い込みで相手を見ないと自分勝手に思い込んでいる人」ということだったのかもしれません。
やはり「人を見る目」はそう簡単に身に付くものではありませんし、ゴールがない永遠のテーマなのだと思います。

自分が経験してきた過去のモデルに当てはめるのではなく、フラットに先入観を持たずに接する能力の高さが「人を見る目」だということは、人をまとめる立場の人ほど意識しておいた方が良さそうです。

次回は12月25日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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