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第3回 一人で背負うしかない人事担当者のお話
今回は、ある会社から人事制度改革の引き合いを頂いた際のお話です。
中堅の技術系企業からのお話で、特に人事評価制度に問題があると感じており、何か改革に向けた提案をしてほしいというお話を頂きました。
企業規模の拡大とともに業績も伸びていて、非常に成長している会社です。
全国に拠点展開されていて社員数もそれなりの規模ですが、人事部というセクションがなく、人事関連の機能はいくつかの部門にまたがって分担されています。
全社の人事最高責任者ということでは、社長がほぼ一手にその役割を担っているようです。
まずは関係者の方々から、現状で起こっている現象、認識している課題や問題意識を一度ヒアリングさせていただき、こちらから課題解決への提案レポートをお出しした上で、その後の展開を考えるということになりました。
ヒアリングと意見交換を通じ、こちらで作成したレポートでの課題提示には多くの部分で納得していただき、今後の取り組み内容のご提案についても、だいたい認識共有はできたようでした。
その後、先方企業としての意向は、「まずは外部に頼らず、自分たちの力で解決してみる」ということでした。
社長から「自分たちで把握できている課題も多いから、まだ外部に頼るのは時期尚早で、まずは自分たちでできることに取り組め」という話があったということです。
課題を一手に背負わなければならない先方企業の部長は、少々心細そうな感じでした。
私たちの仕事の中ではよくあることですが、今までの経験として、「社内でやるから今回は・・・」といわれても、それまでの様子から「社内でやるのは厳しいだろうな」「かなり時間がかかるだろうな」と思うことがたくさんあります。
実際にそのとおりになってしまうことも多々あります。
その理由として多いのは、「社内で対策を検討したり、企画したりするための“体制が足りない”」ということです。
対策の検討や制度の企画というのは、文字通りルーチンワークではないので、多くの情報を取捨選択しながら自社の状況にあったものを考え出さなければなりません。
こういう取り組みは、個人のアイデアだけでは限界があるので、効率よく進めるためには、複数の人がかかわるチーム体制で取り組むことが必要になります。
“体制が足りない”というのは、例えば「考える人は担当者一人だけ」「決める体制はあるが議論する体制がない」というようなことです。
このような状態は、人事制度のような社内の仕組み作り、社内組織向けの様々な施策の企画や実行など、社内のスタッフ業務の中ではかなり多くの企業で起こっています。
会社の上層部は、「社内で解決できる課題」と捉えていても、現場で具体化を進めていくと、課題山積で立ち往生ということも少なくありません。
やはりマンパワー不足とノウハウ不足が大きいようです。
私は企業人事の立場もコンサルタントの立場も両方経験しているのでよくわかりますが、特に人事関連の課題は、会社としては「外に頼むとお金もかかるし、満足できる結果になるかもわからないから、できることは自前でやりたい」と思って当然です。
一方コンサルタントとしては、「依頼してもらえれば、結果的に早くて安上がりで課題解決につなげられるのに」と歯がゆく感じることも少なくありません。
これはあくまでコンサルタントの立場から見てですが、社内の課題解決をうまく進めている企業の中に、「コンサルタント扱いのうまい企業」があります。
信頼できる外部人材とつながっていて、それを適正価格で適宜活用しているような企業です。
ビジネス上の取引なので、そう簡単にはいかない事情がたくさんありますが、もしも「社内でできるはずなのになかなか進まない課題」があり、「信頼できそうな外部人材・コンサルタント」がいるならば、そんな人材をうまく活用してみると、意外と物事が進みだすこともあるのではないかと思います。
次回は12月24日(火)更新予定です。