第120回 「素直なリーダー」と「頑固なリーダー」の良し悪しの話

人として「素直さ」は大事なこととされ、「頑固さ」は嫌われやすく避けるべきこととされがちですが、その人の立場や場面によって、「素直さ」「頑固さ」の良し悪しと必要性とを考えておかなければなりません。

「素直なリーダー」と「頑固なリーダー」の良し悪しの話

当然ですが、世の中には本当にいろいろなタイプの人がいます。その中で、最近、私の身近で時々話題に挙がってくるのは、「素直な人」と「頑固な人」に関する話です。年齢のせいもあると思いますが、どちらかといえば「頑固な人」に関する不満やダメ出しが多いと感じます。

多くの会社でいろいろな方々とお会いし、その中には若いメンバークラスの人も経験豊富なベテランの人もいます。ここで感じるのは、やはり年齢が高い人の方が、「頑固な人」の傾向が強いことです。あまりにも聞く耳を持っていないのは困りものですが、人生経験を積むほどに自分のこだわりが強まり、自分なりの考え方が固まり、頑固さが増していくのは、自分自身も含め、さらに長い付き合いを重ねて変化が分かる周りの人たちを見ていて、気持ちは理解できるところがあります。

頑固さは肯定的な表現に変わることがある

必ずしも頑固が悪いことではありません。しかし、自分の部下や後輩にどんな人を望むかと考えたら、やはり頑固よりは素直な方が良いと思う人が多いでしょう。友人知人や子供たちも、素直さがマイナスに働くことはほとんどないでしょう。ただ、これがリーダーという立場になると、必ずしもそうとは言えないように思います。

経験を積むほどに頑固さも増すとすれば、リーダークラスくらいになる人は、程度の差はあれ頑固な傾向の人が徐々に増えてくるのではないかと思います。あまりにも頑固すぎると組織の中では多くの問題が起こりますので、個人の意識も含めて注意を要すると思いますが、これまでの人生経験に基づく良い意味での頑固さならば、それは決して悪いことではありません。頑固という表現でなく、「一貫している」「ブレない」「筋道が通った」などの肯定的な言い方に変わります。

素直さが行き過ぎると、リーダーとしてはふさわしくない面も

これとは反対に、「素直なリーダー」というのは、その役割を担う人たちの年齢や経験を考えれば、実際に見かける機会は少ないかもしれません。どんなに偉い立場でも、物事を一方的に否定せずに受け入れる「素直さ」は、リーダーとしてとても重要な要素ですが、この素直さが行き過ぎると、一見よさそうに見えても、リーダーとしては困りごとがいろいろ起こってきます。

一番大きな問題は、上司に対しても部下に対しても、「優柔不断で自分では決めようとしない傾向があること」です。
例えば、自分の上司から何か指示をされると、「分かりました!」などと素直に受けてくれるものの、その先になかなか進まないことが往々にしてあります。

その理由をリーダーに尋ねると、「部下からこんな意見が出た」「こんな反発があった」などと言い、その答えを何も持たないままで「どうしましょうか」などと相談をされます。それに対してあらためて指示したり、提案したりすると、その時は明るい晴れやかな顔で戻っていったのに、しばらくするとまた違う問題を持ち帰ってきます。

上司と部下との板挟みになる中間管理職ということでは仕方がない部分はありますが、この「素直なリーダー」は、その場その場で相手の言うことを受け入れるだけで、自分の意志を持って物事をまとめるということを何一つしていません。

これが新人クラスをはじめとした一般社員であれば、上司は自分より上の立場にしかいませんから、その人に対して素直に対処することで、特に問題が起こることはありません。しかし、これがリーダークラスになると、組織上で自分の上にも下にも関係者がいます。

この間に立つということは、それぞれの意見を聞いて調整、説得する能力が必要となりますが、素直さが過ぎるリーダーは、それぞれの話を素直に聞いてそれぞれに共感してしまうため、この調整や説得ができません。人間性として素直なのは良いことです。しかし組織のリーダーという役割を考えると、全ての言い分を受け入れてしまうような素直さは考え直さなければなりません。

頑固さと素直さはどちらも必要

いずれにしても、頑固さと素直さとは、共に偏り過ぎるのは良くないとはいえ、どちらの要素も必要なことです。特にリーダーの場合は、「意図や意思を伝えて納得させる」「一貫した姿勢を保つ」など、良い意味での頑固さは最低限必要です。

「頑固になるな、素直になれ」は受け入れやすいですが、特に組織をまとめる役割の中で、時には「素直になるな、頑固になれ」ということが必要になることがあります。
場面に応じた「素直さ」と「頑固さ」の良し悪しを、考えておく必要があります。

次回は9月26日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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