第76回 部下への「報・連・相」を大事にする会社の話

仕事の基本とされる「報・連・相」ですが、そのほとんどは上司のみに向けた一方的なものになりがちです。その問題意識から、部下に対する「報・連・相」を重視して取り組んでいる会社があります。

部下への「報・連・相」を大事にする会社の話

ビジネスの基本とされる「報告」「連絡」「相談」を略した「報・連・相(ホウレンソウ)」という言葉は、ほとんどの社会人が知っているかと思います。仕事をスムーズに進めるうえでは必須のこととされ、新入社員の頃からことあるごとに「報・連・相」の重要性が説かれます。これをテーマにした書籍もたくさん出版されており、また研修なども数多くの会社で実施されています。

「報・連・相」の中でも「報告」は、その基本中の基本とされていて、多くの場面でその大切さがいわれます。
多くの報告書類や報告会議があり、報告することは、勤怠、出張、営業状況、作業状況、顧客動向、予算実績、部門業績など多岐にわたり、報告するタイミングも日次、週次、月次、四半期、半期、年間、その他、日常業務の中でも折りに触れて行われます。

肥大化しがちな部下から上司への「報・連・相」

しかし、組織の規模拡大や会社の成長とともに、無駄な報告書類や意味のない報告会議が増えてきたり、報告そのものが形骸化してきたりすることもあります。報告に関わることで多くの時間を費やしているにもかかわらず、その情報が生かされた組織運営になっていないなど、報告の仕方や取り扱い方には多くの問題点が挙げられます。

なぜ「報告」が肥大化するのかといえば、基本的に報告は、部下から上司に向けられた情報伝達であり、上司から不要だと言われない限り、報告し続けなければならないからです。
上司から「報告しろ」と指示されることは数多くあっても、「報告不要」と言われることはほとんどありません。
やはり仕事の責任上、情報把握が必要だという立場を考えれば、より多くの報告を求めたくなるのは仕方がないところではあります。

一方的なコミュニケーションへの気付き

このように「報・連・相」は、基本的には部下から上司や会社に向けたコミュニケーションですが、ある会社では、反対に上司から部下への「報・連・相」を、とても重視して取り組んでいます。
そもそもの問題意識は、「報・連・相」のほぼ全ては上司や会社に向けたもので、逆に部下、社員への「報・連・相」は、強調されることがほとんどないからでした。上司への「報・連・相」に比べて圧倒的に少ないか、もしくはほとんど行われないため、あまりにも一方通行ではないかと考えたのです。

上司への「報・連・相」は、どんな会社でも所定の書式やシステムが用意され、提出の頻度や方法が決められ、会議が定例的に行われるなど、さまざまな仕組みや決まりが作られています。しかし、反対に部下や全社員に向けた「報・連・相」は、たぶん大部分が上司の個別判断に委ねられています。そうなれば、部下に何をどうやって伝えるかは、所属部門や管理者の姿勢、能力による取り組みの差が生じます。

上司から部下への「報・連・相」の方法と効果

しかしこの会社では、部下や社員への「報・連・相」も、仕組みと決まりを定めています。まず報告書式があり、報告会の開催も義務付けられており、さらに上司が何らかの判断を下す前に、できるだけ部下に「相談」して意見を聞くことも求めています。
また会社からは社員向けの情報発信を積極的にしていて、わりと些細なことであっても伝達事項や周知事項として共有されるようになっています。
これを始めたことによって、それまで多く聞かれた社員からの不満、他部門や会社への批判といったものが、ほとんどなくなったといいます。

「報・連・相」の新しい考え方

ちなみに、最近は「報・連・相(ホウレンソウ)」よりも「雑・相(ザッソウ)」だそうで、これは「雑談」「相談」とのことです。コミュニケーションを取りやすい雰囲気づくり、信頼関係づくり、話し掛ける心理的ハードルを下げるという点で「雑談」が有効だということですが、部下への「報・連・相」を大事にすることも、一方通行にならないフラットな関係でのコミュニケーションという意味では、似たような考え方かもしれません。

コミュニケーションは、双方のやりとりがあって初めて成り立つものです。情報格差で支配するような時代ではありません。一方通行になりがちな「報・連・相」も、少しの工夫でより良いものになるのではないかと思います。

次回は1月28日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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