第57回 自分たちの「ブラックさ」は自覚しづらいという話

社員をむしばむ「ブラック企業」や、組織を乱す「ブラック社員」は、それぞれ大きな問題ですが、当事者が自分たちの「ブラックさ」を自覚していることは多くなく、それを自覚することが問題解決のためには重要です。

自分たちの「ブラックさ」は自覚しづらいという話

「ブラック企業」という言葉は、決して良い響きではありませんが、もうすっかり定着した感があります。
最近の学生の就職活動では、この「ブラック企業」をいかに避けるかという意識が強く、その観点でさまざまな情報を得ようと工夫しています。
特に長時間労働とサービス残業は「ブラック企業」であることの象徴のようになっていますが、深夜に働いている社員が本当にいないのかを確かめるために、わざわざ遅い時間に会社の直通番号に電話をかけてみる人もいるらしく、それほど「ブラック企業」が問題視されています。
それでその会社の長時間労働が常態化しているかは分かりませんし、そもそもそこまで疑ってかかるような会社に就職することが、果たして幸せなのかと思ってしまいますが、ここまで疑われてしまう会社側の姿勢は問題です。
そもそも「ブラック企業」の定義というのは、明確にこれと言い切れる線引きはなく、多くの会社はホワイトとブラックの中間に位置するグレーなところがあります。
そんな現状をきちんと説明したり、改善に努力していたりするのなら良いですが、このブラックな部分を隠そうとする会社があります。ただ、意図的に隠すというよりは、自分たちの状況が「ブラック企業」と見られることを自覚していないことが多々見受けられます。

また、この「ブラック企業」と共に、やる気がない、仕事をしないなど、周囲への悪影響や、組織への不利益をもたらすような社員を指して「ブラック社員」と呼ぶことがあります。
こちらも会社にとっては悩みの種ですが、規則違反などがあるならともかく、会社としてはよほどのことがなければ辞めさせることはできません。しかし、その行動によるマイナスは、生活習慣病のように少しずつ効いてきますから、問題を具体的に指摘しづらいということでは、よけいに扱いが難しいです。
そして、こちらでも同じように、本人が「ブラック社員」と言われているのを自覚していないことが多いです。

これは私がいろいろな会社を見ていても感じることですが、この「ブラック○○」というのは、当事者である会社や社員本人が、自分たちの「ブラックさ」を自覚していることは、実際にはほとんどありません。
中には、人件費をケチるために、意識的に法律違反やハラスメントをするなど、確信犯の「ブラック企業」があると聞きますが、これは少し次元が違う話でしょう。

例えば、みんなが口先では「うちもブラック企業」などと言っていることがありますが、どちらかといえば愚痴に近いことが多く、現状を本気で問題視していたり、問題解決しようとしていたりする感じではありません。
特に中堅中小規模の企業では、人手が足りない、代わりの人がいないということが多く、長時間労働にならざるを得なかったり、休みが取りづらかったりしますが、それくらいは仕方がないこととあきらめていたり、それが当然だとしていたりすることも多いです。自分たちの環境に過剰適応していて、自分たちの「ブラックさ」が自覚できないのです。

また、「ブラック社員」に関して言えば、その特徴として、誰でも持っている会社への不満や愚痴が、度を越して過剰だということがあります。
あくまで愚痴として、内輪で言い合っているうちは良いですが、これを仕事中であっても構わず、自分の役職などをわきまえず、公式な会議や顧客の前など、その話がふさわしくない場であからさまに言い始めたりします。
問題は確かにあるのでしょうが、こういう行動は、ただ「ムードを悪くする」というだけで、仕事にプラスに働くことはありません。まさに「周囲に悪影響を及ぼす」「組織に不利益をもたらす」ということにほかなりませんが、本人は正論を言っている意識なので、何か問題があるという自覚はありません。

最近の風潮として、多くの人が他人の「ブラックさ」には敏感で、どちらかといえば過剰に反応したり攻撃したりしますが、こと自分たちの「ブラックさ」については思った以上に鈍感です。
「ブラック企業」に関して言えば、やはり社会的には悪であり、それで不利益を被る働き手が大勢います。できる限りなくしていかなければなりませんが、当事者である会社がそのことを自覚していなければ、改善のしようがありません。
また「ブラック社員」に関しては、彼らが言う会社への不満や批判は問題意識の裏返しであり、組織変革のための活力でもあります。
しかし、こちらも自分の問題点を自覚しなければ、それを改善することはできません。

自分たちの「ブラックさ」を自覚せずに鈍感なままでいると、多くの不都合や不利益が生まれます。ただ、当事者が自覚しにくいということもまた確かです。
自覚なき「ブラック企業」や「ブラック社員」は、誰もが陥る可能性があります。知らないうちに、自分たちがいつの間にか「ブラック○○」と言われる対象になってしまうかもしれません。
あらためて自分たちの身の回りを見直してみましょう。

次回は6月26日(火)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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