第26回 会社事情を隠す社長の共通点というお話

私の専門は人事や組織ですが、企業のサポートをするうえでは、よほど限定されたテーマでない限りは自分の専門分野だけでなく、その会社の経営・事業をできる限り把握するということが必須要件としてついて回ります。公表されている企業情報や財務データなどは必ず全て確認しますし、時間が許す限り、できるだけ多くの関係者からヒアリングをするようにしています。

特に、中小規模の企業の場合には、社長ご自身からの依頼ということも多いので、直接いろいろお話をうかがいます。ここでなかなか本当のことを話してくれないというか、肝心な情報を隠し続けたり、場合によってはウソを言っている方もいらっしゃいます。

私たちのような社外の専門家に依頼しているということは、当然ご自身が認識している課題があって、それを何とか解決しようと思っているはずです。にもかかわらず、断片的な情報やご自身の問題意識だけを元に、「こういう形にしてほしい」などと言われます。

私たちコンサルタントの経験上、こういう社内での課題認識は必ずしも適切ではなく、本質からずれていることも多いので、なおさらしっかりと状況把握をする必要があると思っています。しかし、社長自らが積極的な情報提供をしないとなると、肝心の情報が得づらいためにコンサルティングそのものがなかなか前に進まなくなります。

私たちとしては一番やりづらいパターンですが、こういう姿勢を取る社長には、ある共通点があります。それは、いろいろな意味で「見栄っ張りである」ということです。

これはある会社で実際にあったことですが、社員のモチベーション向上というテーマでご依頼をいただき、お会いした社長は、会社としての理想の未来像を饒舌に語ってくださいました。「とにかく社員を前向きにしたい」とおっしゃるのです。

しかし、その後に提供していただいた資料や、マネージャークラスの方々にヒアリングしたところで、肝心な直近の業績があまり思わしくないということが分かりました。決算書のうえでは何とか利益が出ていますが、社員の昇給はここ数年凍結だそうで、賞与もほとんど支給されていないそうなのです。

もちろん給与が全てではありませんが、社員のモチベーション低下の主因であることは間違いありませんでした。この件を社長に聞いても、「できるだけのものは支払っている」というばかりで、なかなかはっきりした理由を言おうとしません。

その後、別の役員クラスの方の協力を仰ぎ、いろいろな情報を精査していったところ、決算書に現れてこない、社長個人の隠れた債務が見つかりました。私は会計の専門家ではないので、粉飾決算とまで言えるのかどうかは分かりませんが、実態を反映していないと見られても仕方がないものでした。
その後、この会社は倒産までは行かなかったものの、かなりの事業縮小を余儀なくされてしまいました。

社長がおっしゃるには「社員に不安を与えたくなかった」とのことです。この発言も、会社事情を隠そうとする社長のほとんどの方がおっしゃいます。これは、結局は社長の見栄のように感じ、問題の本質から社員の目を遠ざけようとしただけのように見えてしまいます。このお客様は、見栄を張る一環として社外の専門家を入れた結果、逆に本質的な問題が露呈してしまったように思います。

次回は11月24日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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