第25回 新たな人事制度に期待し過ぎた会社のお話

それぞれの会社には、さまざまな社内制度があると思います。
私が関わることが多いのは、評価制度や等級制度、給与体系といったことを中心とする人事制度ですが、このあたりを企業が整備しようと考えるきっかけには、大きく二通りあります。

一つは、会社の規模拡大や組織化の必要性に伴って、新たなステップを考えてという場合。もう一つは、既に運用している制度があるものの、方向性が合わない、環境変化に合っていない、思うように機能しないなど、実態との不整合が生じてきた場合のいずれかです。

そんな中で、特に中小企業や比較的社歴の浅い企業ほど見受けられる傾向があります。
それは、制度を作ったり変えたりするということで、“何か全ての問題が解決する”、“画期的に変わる”など、効果を過度に期待していたり、「制度を直せば解決する」と、過大評価しているように感じる場合があることです。

これは、創立5年目で社員数が50名を超えた、あるIT系企業でのことですが、もともとは今の社長が技術者仲間数人と立ち上げた会社で、主要顧客が有名大手企業ということ、社長をはじめとした技術者個人が信頼されていたということから、多くの引き合いが継続的に降ってくるような状況でした。

それらの依頼案件をこなすためには、多くの技術者が必要ですから、積極的な技術者採用を行っており、社歴のわりには頑張って人を増やし、正社員だけでなく、さまざまな雇用形態の人たちが働いているような会社でした。

そこでの問題は明らかで、急成長してきたがゆえに、人事制度をはじめとした社内制度が実態に追いついていないことです。社内で検討チームを立ち上げて制度作りを進め、実際に運用をしはじめたもののあまり変化が見られない。そこで制度を見直したいということでご相談をいただきました。

お話から伺えたのは、やはり、「制度への過度な期待」でした。
こういう会社では、多くのことがまだまだ属人的に動いていて、仕組みや制度を作って組織を動かすという経験があまり多くないこともあり、出てきた課題の原因を「制度がないから」「制度が悪いから」と考えがちなところがあります。何か問題があると、すぐに制度を手直ししようとします。

これは、現場の事情をあまり把握できていない経営者や管理者も、同じような考え方をする傾向があります。現場で行われている仕事のプロセスや人の様子などが見えづらいため、形があって分かりやすい「制度」や「仕組み」の方に目が向きがちなのだろうと思います。

しかし、人事制度の場合でいえば、対象としているのは「人」なので、最後は個人の感情までつながってきます。誰が評価したか、どんな説明をされたか、話す姿勢や態度、評価する側とされる側の人間関係、その他いろいろな要素によって、制度がもたらす効果は変わってきます。
毎回機械的に同じように対応しても、やはり「人」が対象ということで、相手の反応は違ってきます。制度で決まっているからといって、自分の役割や評価や給料について、それだけで納得できるわけではありません。

社内制度や仕組みというのは、それができたからといって、課題が解決されて一件落着になることはまずありません。仕組みと運用が相まって、少しずつ変わっていくものです。

前述の会社でも、制度の微修正は行いつつ、あらためて腰を据えて制度の運用に取り組んでみることとなり、時間はかかったものの、問題は徐々に解消されていきました。

社内制度の成否は、運用に左右される要素も大きいです。制度ができたからといってあまり過大な期待をせず、そこからがスタートであるという認識を持っておくことが必要だと思います。

次回は10月20日(火)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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