第51回 「どうせ理解できない」と情報共有を軽視する会社の話

情報の開示や共有について、「どうせ理解できない」などといって消極的な会社がありますが、隠す、伝えないということがプラスに働くことはありません。伝えるか否かではなく、どうやって伝えるかを考えなければなりません。

「どうせ理解できない」と情報共有を軽視する会社の話

ここ最近で、また組織の中での不正の隠ぺいや不適切な処理が、問題になっていることが多々見受けられます。
自分にとって不都合なことを隠しておきたいと考えるのは、自己防衛本能や人間の心理ということで考えれば、ある意味自然なことなのかもしれません。また、それほど大きな問題になることではなくても、例えば部下がちょっとしたミスを報告せずにいたなどというのは、決して珍しいことではないでしょう。

ただ、それが発覚してしまったとき、そのツケは結局自分に回ってくるものですし、それが遅れれば遅れるほど、問題は大きくなっていきます。
やはり「隠す」「伝えない」といったことがプラスに働く例は少ないです。

この情報共有を「人のやる気」ということから考えると、自分に関係する情報が知らされていなかったり、隠されていたりすれば、それは確実に失われていきます。
情報共有を避けてプラスに働くことはほとんどありませんし、それが仮にネガティブな情報であっても事前にある程度の情報を得ていれば、ギリギリになって突然知らされるより受けるダメージは少なくて済みます。組織での情報共有が大切であるということは間違いありません。

私は、企業の中で情報共有できないものは、機密情報や個人情報に関するもの以外、基本的にないと考えています。
「公表しない」「知らせない」となってしまう話のほとんどは、組織のルールを逸脱した独断や違反など、それを行なった個人か一部の人間にとって都合が悪いことだけです。それは組織のコンプライアンスを考えれば、排除しなければなりません。

しかし、このような話をしても、多くの経営者や管理者は、透明性の高い情報共有に対して慎重な反応をします。
先日もある会社で社内の情報共有の話になったとき、社長は「どうせ正しく理解できない」「だから最低限の必要なこと以外は伝えない」と言います。
この会社では、情報共有不足によるミスやトラブル、さらにそれらを隠していた例がいくつも発覚しており、その対策を検討している中でのことでしたが、こんな経営トップの意識にも原因の一端があったと思われます。

ここで考えなければならないのは、この「正しく理解する」とはどういうことなのかということです。
多くの場合、“正しく”は伝える側の意図に対して肯定的に、反発せず、従順に受け止めることを指しています。要は反発がなければ正しく、逆に反発するようでは正しく受け止めていないこととなり、さらに反発を受けそうな情報は、これを伝えない、隠すとなります。

確かに私の今までの経験でも、伝えたことに対して適切でない理解、無用な心配、あらぬ誤解、何か隠しているのではないかという疑念など、難しいことがあるのは事実です。
しかし、これらがなぜ起こるのかを考えると、“正しく”理解するための前提となる情報を、きちんと伝えていなかったということがあります。
一度嘘をついたり隠したりすると、その辻褄を合わせるために、さらに嘘をついたり隠したりし続けなければならなくなります。そのせいで正しい情報共有からはどんどん遠ざかってしまいます。

これはある会社であったことですが、当時かなりの業績悪化に見舞われて、賞与の大幅削減をしなければならなかったときに、経営者自身が直接、数字的な背景も含めて実情を真摯に語り、社員に率直に協力を求めていったところ、大半の社員が思いのほか冷静で前向きに対処していたということがありました。
適切な態度できちんと情報を伝えれば、それがネガティブな情報であっても、受け取る側は冷静に、客観的に受け止められるという一例です。

相手が「正しく理解できない」という原因の多くは、無用な情報制御や隠蔽、事実と私見の混同、理解を深める姿勢や態度の欠如など、伝える側の問題です。
情報共有を軽視していると、何か問題が起こったときや隠されていた事実を知ったとき、お互いの信頼関係は一気に崩壊し、人は“やる気”を失います。
伝えづらい情報があるのは確かですが、少なくとも相手が“受け止める”ことができるように、積極的に伝える努力、情報提供をしていくことは、組織のムード作り、モチベーション向上のためには、とても大切なことです。

「伝えるか伝えないか」を迷うのではなく、「どうやって伝えて理解してもらうか」を考えることが、結果的に良い方向につながります。伝えることの難しさの解決も、結局はきちんと伝えるということから始まります。
「理解できないから伝えない」ではなく、「理解できるように伝える」ということが重要です。

次回は12月26日(火)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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