第50回 せっかく開催した「社員誕生会」がうまくいかなかった会社の話

社員旅行や運動会などの社内行事が最近また見直されていますが、ある会社が実施した「社員誕生会」は社員の不評を買って中止になってしまいました。その理由はやはり企業風土に合わないやり方をしたことに尽きるようです。

せっかく開催した「社員誕生会」がうまくいかなかった会社の話

経費削減や時代に合わないなどといった理由から、おこなう会社が減っていた社員旅行や運動会などの社内行事が、最近また見直されているそうです。準備や運営を全て代行してくれる業者もあるようです。
組織内のコミュニケーションでも、「直接顔を合わせる」「部門横断」といったものが不足しているとの問題意識から、それを解消するための手段の一つとして考えられていて、実施した結果もおおむね好評ということを聞きます。

私がかつて在籍していた会社は、社員旅行や節目の宴会、その他レクリエーションなどの社内行事が比較的活発で、私自身はその目に見えない効果を実感してきましたので、最近の動きは当然ありうることと捉えています。
だからといって、社内行事をどんどん取り入れていけばよいかと言うと、必ずしもそうとは言えない面があり、やはりその会社の風土や社員の考え方に左右されるところがあります。

これはある会社でのお話ですが、社内の雰囲気を変えようという一環で企画された「社員誕生会」でのことです。2カ月に1回の頻度で、誕生月ごとに該当する10数人を集めておこなう会で、費用は全額会社が負担するというものでした。
当時入社したばかりだった総務部長の企画で、社長をはじめとした役員と社員との懇親を深めようという主旨でした。
この会社は上下関係が非常にフラットでしたが、その反面で上下のけじめが不足しているようなところもある会社だったので、部長なりに何か問題意識があっての企画だったようです。

しかし、社員はそんな事情を知ることもなく、単なる飲み会くらいにしか思っていませんから、中には欠席希望をいう者も出てきましたが、総務部長は全員参加にこだわって「強制参加」などと言います。
そうなると社員たちは途端に気が進まなくなり、当日は嫌々参加しているので、やはり会話も盛り上がりません。
さらにここでも総務部長の提案で「自分の抱負」などのスピーチをさせられて、その結果参加者からは大きな不評を買ってしまい、役員の中からも「会の雰囲気が良くない」などと批判が出る始末です。

さらにこういう話は社内に口コミで伝わり、それでは良くないということで、その後は縛りの少ない普通の飲み会に変わっていきましたが、そうなると今度はそもそもの主旨は何かという話に立ち戻ることとなり、これではあえて実施する意味がないという話になって、参加者が一巡したところでこの「社員誕生会」は中止されることとなってしまいました。

会社としては、せっかく良かれと思ってやったことが裏目に出たということですが、その理由を一言でいうと、「社員の気質と会の主旨や進め方が合っていなかった」ということです。会社の雰囲気、風土に合わないやり方で実施したことが、一番問題だったということでしょう。

この会社は、平均年齢も若かったためお互いの関係性はフラットで、良くも悪くも“上司を上司と思わないような風土”がありました。また会社もそれを活力として、肯定的な捉え方をしていました。
ただ、この会を企画した新任の総務部長は比較的古い体質の業界出身で、職制での上下関係を強く意識している人でした。そのため、この会社の社員が「上司への態度や礼儀がなっていない」と映ったようですが、社員の側からすると、この部長は「必要以上に上司を持ち上げて媚びを売っている人」と見えていました。
また部長は「組織は上からの指示どおりに動くもの」との考えが強かったですが、社員たちは「納得できなければ上司ともどんどん議論すべき」と思っていました。

要は会社の持っている風土や社員の価値観と、この「社員誕生会」が目指そうとしたものが食い違っていたということで、そのせいもあって「参加の強制」「懇親に似合わない内容」など、食い違いを増す事柄が積み重なっていってしまいました。

そもそも、こういう社内行事で期待できるのは副次的効果でしかありませんから、あまり多くのことを求めすぎてはいけませんし、宴会やレクリエーションなど公私の区別が難しいところでの無理強いは、結局は反感を買って逆効果となります。上下のけじめをつけるような目的であれば、オフィシャルな仕事の場で行うべきであり、インフォーマルな社内行事はふさわしい場ではありません。

このようにせっかくの社内行事でも、目的ややり方を間違うとマイナスに働くことがあります。お金と時間をかけてやっているのに、それではあまりにもったいないことです。
やはりどんな行事でも、自分たちの組織風土を考え、多くの人が前向きに取り組める環境を作り出さなければなりません。社内行事は自社に合ったやり方を、よく考えながら取り入れていく必要があります。

次回は11月28日(火)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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