第5回 管理職の仕事も一手に抱える社長のお話

よく「社長は孤独」といいます。
自分だけで決断しなければならないことも多いですし、社員には話せないような課題をたくさん抱えています。
日々のストレスも一般社員とは比べものにならないほど大きいはずですから、ある程度は仕方がないことだと思います。

ただそうは言っても、会社のことを何でもかんでも自分だけでできるわけではありません。
最終的な決断と責任は社長にあるとしても、現場での日常的なことについては、管理職やその部下たちに任せていることと思います。
ナンバー2、ナンバー3という人がいれば一般社員にはできない相談もするでしょうし、他の社員にもそれぞれの人材に合わせて権限委譲をしていると思います。

ただ今回のお話は、普通であれば権限委譲していそうなことでも社長が一手に抱えている、そんな会社のお話です。

その会社は技術系の会社で、人数でいえば20名に届くか届かないかというような規模なので、まだまだ社長一人でも目が届くというような会社ではあります。
ただ、どうもマネージャーとして扱ってよいレベルの人材がいません。年令的には相応の人がいるものの、あまり経営的な視点を持っていない、しいていえばグループリーダーレベルの人が数名いるだけです。

ですからこの社長は、担当者がやることに近い営業活動も、技術開発現場のマネジメントも、財務経理業務や資金繰りも、その他社長でなければできない仕事だけでなく、現場の管理職レベルがやるべきと思われるようなことまで、全部一手にたずさわっています。
ですから当然ものすごく忙しく、「相談相手がいないから相談したい」などといわれてうかがったものの、じっくり相談するような時間もありません。

その社員たちはというと、本来ならばマネージャーを担ってもよさそうな年令の人は、どうもお気楽で人任せな感じですが、その下の若手社員たちはいろいろ心配をしています。
でも「自分たちは何もわからないから手助けもできないので、与えられた仕事をやるしかない」という感じでいます。

この様子だけを見れば、「マネージャー人材を外部から連れてくるしかない」となってしまいますが、時間がない中でうかがった社長のお話から、一つ気づいたことがありました。
それは忙しくて時間がないことも、相談相手がいないことも理由ではあるのでしょうが、この社長さん、とにかく自分がやっていることを社内に説明したり、情報共有をしたりということをほとんどしていないのです。

ですから社員たちは、忙しそうな社長が何をしているのかよくわからないし、そこに自分が肩代わりできることがあるのかは見当がつきません。
自分の仕事もそれなりに忙しいし、給与も賞与も世間並み以上には支払われているから、まぁ大丈夫なのかな・・・というような感じです。

情報共有を全くしていなければ、10人いれば10人ともその中身は知る由もありませんが、もし何らかの情報共有をしていたとしたら、10人が10人とも理解するのは難しいとしても、そのうちの何人かは状況を理解して、社長を手助けする自分なりの活動を始めてくれるかもしれません。

結局は社長自身の思い込みから、自分で仕事をたくさん抱え込んでしまっていて、それが会社での適切な役割分担や権限委譲を妨げたり、人の成長機会を失わせていたりする一因となってしまっていたということです。

リーダーが、例えば「こっちに泳ぐぞ!」などと方向を示すことは重要です。
また、初めは泳ぎのうまい人が泳ぎ方を見せながら、全体を先導していくことも必要です。
ただ、何も知らせていないということは、目隠しをして泳がせているのと同じようなものです。
泳ぐ方向も良くわからないし、どんな泳ぎ方をすればよいのかも見えません。
それではやっぱり人材は育たないし、社長は本来の仕事には集中できず、いつまでも忙しいままです。

経営上の理由で知らせることができないことはあるにしろ、自分のやっていることを、部下に適切に知らせて理解させるということは、リーダーたる社長の役割として重要なことだとあらためて思った一件でした。

次回は月2月25日(火)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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