第68回 「結果」と「プロセス」をどう見るかという話

人事評価を行う上で「結果」と「プロセス」をどんなバランスで見るかは、いつも話題になりますが、それは会社毎の環境で異なるものであり、そもそものあるべき姿から考えなければ間違った方向に進んでしまいます。

「結果」と「プロセス」をどう見るかという話

企業の人事評価の中で、「結果」と「プロセス」をどんなバランスで評価するかは、いつも話題になることです。今回はそんなことにまつわるお話です。

数年前のことだったと思いますが、確か夏休みの終わり頃に、「宿題代行サービス」というものが話題になったことがありました。
その当時は「子どもの学力を奪うごまかし」「お金でなんでもできるという歪んだ価値観を子どもに植え付ける」「教育犯罪そのもの」などと批判する声が上がっていましたが、今でも“宿題代行”をネット検索すると多くの業者が存在し、“信頼できる業者ランキング”といったサイトまでありましたから、既に定着したサービスということなのかもしれません。

こういう業者の存在を初めて聞いた時、私はそれ自体が驚きでしたが、もし自分の子供時代にこういうものがあったとすれば、「頼んだら楽だろうなぁ」と思ったかもしれません。確かに依頼する人はいるだろうとは思いました。
依頼する理由は、「習い事その他で宿題をやる時間が取れない」などということらしいですが、学校の宿題の優先順位がそれほど低いという認識なのでしょう。

ただ、学校の宿題というのは、各自の学力向上がそもそもの目的で、そのためには「自分で宿題をやる」というプロセスが重要です。これを「宿題が良い出来だった」という結果だけを優先すると、どんな取り組み方をしたかというプロセスは関係なくなります。誰がやっても、どんなやり方をしても、評価がされるものが提出されればそれでいいという考え方ですが、これは良くない意味での「結果優先主義」でしょう。何を優先するべきかがずれてくると、こういうことまで商売になってしまうのです。

こんなことで思い起こすのは、企業で旧来の成果主義がうまくいかなかった頃のことです。
「結果重視」の名目で、目先の結果ばかりで評価をするようになり、人材育成のように結果を数値化しづらい取り組みや、中長期の取り組みは後回しにされるようになりました。定量的な数値目標や重点目標ばかりを追いかけるようになり、定常的なルーチン業務やプロセスを軽視する傾向が顕著になりました。

その反省から揺り戻しが起こり、最近は短期目標や結果だけで評価するのではなく、取り組みプロセスや数値化しづらい成果にも配慮するようになってきています。
「何を成果とするか」の視点が広がり、結果だけでなく、そこに至るプロセスも重視するようになってします。「良いプロセスは良い結果につながる」として、「結果」と「プロセス」をバランスよく見ることが一般的になってきています。

そんな中、ある会社でこんな話を聞きました。
社員からの要望で、それまでのわりと一般的な評価制度から、歩合給の比率がとても大きい結果主義の評価、報酬体系に変えたと言います。曖昧さを排除して公正な評価をするためには、それが一番良い方法だという判断からです。
ここはバリバリの営業会社で、個人成果も100%数字に置き換えることができます。仲介ビジネスなので、商材を見つけるのも売り先を探すのも本人次第で、活動地域の制約もありません。チームで動くことはあまりなく、営業担当者個人の能力がそのまま業績に直結します。社員全員がほぼ同じ環境下で営業活動をしているといい、個人個人の能力も総じて高い様子がうかがえます。

それまでは定性的な評価も取り入れていましたが、評価者による個人差や判断基準の差など、ただ曖昧さを増しているだけと見られていて、「そんな面倒なことはやめて結果で評価してくれれば一番納得感がある」という社員からの声がきっかけで、制度を見直したそうです。
「良いプロセスは良い結果につながる」を逆説的にとらえて、「良い結果は良いプロセスがあったから」として、あえて途中経過は評価せずに「結果優先主義」にしたということでした。

「結果」と「プロセス」はバランスよく評価することが一般的とはいうものの、その状況は会社によって違います。バランスの見つけ方は、業種や職種、企業規模、その他環境によってもさまざまです。
この会社のように「結果だけで評価するのが最も公正で納得感が高い」というところも、それが本来の目的である「公正で納得性のある評価」に合致していれば良いことです。
セオリーはセオリーとして、評価のしかたでは、自社に合った「結果」と「プロセス」のバランスを目利きすることが重要です。

また、ここで優先するべきものの認識がずれていると、「宿題代行サービス」のように、本来の目的を踏み外しているものが実行されてしまうことがあります。そもそもの目的の軽視は、周りのいろいろなことに少しずつずれが生じ、最終的に本来の姿とは正反対のことが行われてしまうこともあります。これはバランスがどうこうという以前の問題です。
「結果」と「プロセス」のバランスをどう考えるかということと共に、やはり「本来の目的を見失わないこと」は、どんなことにも共通して大切です。
いずれにしても、人事評価が難しいものであることは間違いありません。

次回は5月28日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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