第30回 コンサルタントに「起死回生の問題解決」を望もうとする会社のお話

私たちのように企業を支援するコンサルタントの役割というのは、企業が持っている何らかのテーマ、問題、課題に対して、客観性と専門性を持って解決を支援するということです。
課題が何もないという企業は、世の中にはたぶんないでしょうから、そう考えれば存在している全ての企業をご支援する可能性があるということです。
ですから、企業からのご相談や仕事の引き合い、ご要望については、実際に対応させていただくことができるか否かに関わらず、できるだけのお話は伺うように心がけています。

私の専門は組織、人事なので、人に関わる何らかの課題になりますが、その中身を大きく分けると、「終わりの見える課題」と「終わりの見えない課題」の二つがあります。

「終わりの見える課題」は文字どおりゴールがはっきり見える課題で、定型的な生産物作り、スポットで行う研修などはこちらにあたるでしょう。

一方で「終わりの見えない課題」というのは、継続的にPDCAを回していかなければ、解決に向かっていかないような課題です。
実際にはこちらの方が圧倒的に多く、人事制度構築のように一見すると前者にあたりそうなものも、運用と制度見直しのPDCAを回しながら継続していくことが必須になりますので、実はこちらにあたります。

そんな中、これは以前ご相談を頂いたある会社ですが、発生している課題がどう見ても「終わりの見えない課題」であるにもかかわらず、それを「終わりの見える課題」のように捉えていると感じたことがあります。
お話を伺うほどに分かってきたのは、専門医に頼んで手術さえしてもらえば一発で病気が治るというような感覚、要は社外の専門家を入れて何かしらの取り組みをすれば、それまでの課題がきれいさっぱり解決するだろうという捉え方でした。自社の課題に対して、まさに「起死回生の一発逆転」を望んでいるような印象です。

もちろん、そうなるならば、それが一番良いことですし、そのあたりはコンサルタントの力量次第ともいえますが、「終わりの見えない課題」というのは、その会社の歴史とともに、どうしても解決できないままで積み上がってきた課題であることがほとんどです。場合によっては十数年来の課題などということもあり、いくら社外の専門家が入ったからといって、一筋縄でいくものではありません。

にもかかわらず、この会社では、すでに我々が答えを持っているかのように考えていて、その答えだけを要求するような感じで接してきます。
今抱えている課題が「終わりの見えない課題」であるということを、いくら説明してもあまり受け入れていただけず、起死回生がある前提で、「何か方法があるでしょう!」と言われてしまいます。

その後いろいろお話をしましたが、最終的にはこの会社をご支援する形にはなりませんでした。
先方の会社は、「専門家に依頼するのだから、その人が何とかするのが当然」と考えており、私たちが説明する「長年の積もり積もった課題の解決に特効薬はなく、社内の人たちの当事者意識と地道な取り組みが不可欠」ということでは納得していただけなかったということです。

これは一つの考え方なので仕方がない部分はありますが、私が思うに、「終わりの見える課題」であれば、すでに存在している答えを知ることで、解決につなげることができるでしょう。しかし「終わりの見えない課題」の場合、その解決のためには、いくら専門家であっても、その会社の事情をよく伺い、その会社の方々と一緒になって対策を考え、なおかつそれを地道に実行し続けていく必要があります。継続的な取り組みが必要であり、そこには「起死回生」も「一発逆転」もありません。

「起死回生の問題解決」を望んでしまうことは、逆に課題の解決が遠ざかっていってしまうように感じます。やはり企業が持っている課題の大半は、地道な継続がなければ解決が難しいという前提で取り組む必要があると思った一件でした。

次回は3月22日(火)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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