第60回 「降格してほしい」と強く希望する課長の話

最近、特に若い世代で「管理職にはなりたくない」と考える人が増えています。ある会社での事例を見ていて、役割の与え方やフォローの仕方を会社がよく考えていかなければ、この傾向は止められないと思った出来事をご紹介します。

「降格してほしい」と強く希望する課長の話

最近は、昇給や昇格、昇進といった上昇志向をあおる手法では、モチベーションアップにつながらないという例が増えています。特に若い世代では、「管理職になりたくない」と考える人が増えていて、実際に昇格、昇進を断る人もいます。
さまざまな意識調査で見ると、「管理職になりたくない」という人の比率は6~7割という結果が多く、女性に限ると9割近くがそう回答しているという調査結果もあります。
その理由を聞くと、「金銭的メリットがない(残業代がなくなる)」「業務の負担が増えるだけ」「責任ばかり押し付けられる」「現場の仕事の方が面白い」などが出てきます。「割に合わない」「向いていない」「今の管理職を見ていると……」などと思う人が多いようです。

そんな人たちを見ていて、私はそう思っても仕方がないと思う部分と、そんなことはないと反論したくなる部分の両面があります。
組織の中で自分の考えで仕事をするためには、それなりの権限が必要ですから、自分で物事を決められる管理職でいる方が都合が良いのです。しかしその権限が少なく、上司と部下の間に挟まれて責任だけが押し付けられ、負担が増えるばかりでは、その組織で管理職になることのメリットはありません。
最近は、少なくとも管理職の仕事を魅力的に思えない人が、それほどたくさんいるということだけは間違いありません。

そんな中、最近ある会社で、課長職からの降格を希望している人と出会いました。人事の現場にいると、昇格や降格という話は常に出会うことではありますが、ほとんどは昇格昇進の話です。
降格はごくたまにある話で、そこに至るまでには相応の時間をかけ、いざ実行するとなっても、かなり慎重に本人と話し合いを重ねます。
よほど明確な降格基準がある会社であれば、スパッと躊躇なく行うところはありますが、大半の会社は本人といろいろ話し合いをして、お互いにどうすることがより良い方向になるのかを考えて、そこで何らかの妥協点を見つけていこうとします。
その結果として、役職を外すこともそうでないこともありますし、部署異動などを合わせて考えることもあります。仕事をフォローする人材をつけたり、体制変更を考えたりすることもあります。中には退職を勧めるような会社もあるでしょう。

ただ、今回降格を希望している課長には、そんな話し合いをする余地がない、ちょっと次元が違うかたくなな感じを受けています。
もともとは真面目で素直な人ですが、よほど自信を喪失したのか、やる気を全く失っており、周りのアドバイスにも聞く耳を持とうとしません。
「新人レベルの平社員にしてくれ」「給料もそれで構わない」などと言っていますが、本当にそうなったら、自分の身の上にどんな影響が出るのかを考えていると思えません。メンタルダウンの兆候にも注意していますが、そういう様子は今のところは見られません。
その振る舞いを部下たちが見れば、「あきれた上司」となってしまうので、さらに風当たりが強くなって本人のつらさは増しているように見えます。

会社の中では、この課長をどういう扱いにするか、いろいろ話し合いがされています。「本人にやる気がないなら、外すしかない」というのが本来なのかもしれませんが、すぐに代わりの人材を充てられるような規模の会社ではありません。

人材に対してポストが不足している大企業のような話がある一方、中堅・中小規模の企業では、ポストがあってもそれを担う人がいないという問題があります。
そんな中堅・中小企業の場合、能力的に多少物足りなくても、いなくては組織が回っていかないので、そんな人材をなんとかフォローしながら役割を担わせることも多いです。甘い処遇といわれても仕方がないところですが、組織運営のためにはやむを得ない事情もあります。

この降格希望の課長について、結論を出すのはこれからですが、周囲への影響が大きいので、たぶん役職は外すことになるのでしょう。
しかし、本人は降格希望が叶ったからといって、その後やる気を出して仕事に取り組むとは思えませんから、何とか戦力化しようという取り組みを続けることになるのでしょう。どうすることが正解なのかは、はっきり言って分かりません。本人が辞めるなどと言い出せば、たぶん会社は止められませんが、それがお互いにとって良いことなのかも分かりません。

ここで一つ意識しなければならないのは、従来の「上を目指すモチベーション」には限界があり、それを求めることが逆にマイナスに働くケースがあるということです。
この降格希望の課長も、自分なりにできることを真面目に取り組もうとし、ただそこに能力の限界を感じ、しかし周りに相談することもできずについに切れてしまったとすれば、役割の与え方や周りからのフォローのしかたには、考える余地があったはずです。
「管理職になってみたい」という人を増やすには、いろいろ考えなければならないことがあります。

次回は9月25日(火)更新予定です。

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この記事の著者

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小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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