第61回 「素直な人」を集めた会社で起こったことの話

「素直な人」という人材要件は、企業にとっても本人にとっても大事なことですが、素直さの本質を見誤ってしまったことで、いろいろな問題が起こった会社があります。

「素直な人」を集めた会社で起こったことの話

皆さんの会社に、「現状を肯定的にとらえ、不平不満を言わず、多少つらいと思っても黙々と仕事をこなす、指示に対して素直な社員」がいたとしたら、きっとその人は上司をはじめ周りの人からの信頼も厚く、好ましい人材として高く評価されるのではないでしょうか。こういう社員を最も理想的な人材だとする考え方もあるでしょう。

私自身は今まで、企業の採用や人材育成の場面にずっとかかわってきていますが、この「素直さ」というキーワードは、人材の資質の中でも重要な位置を占めていると思っています。
「素直でない」というのは、否定、批判という行動につながりやすく、周りからの共感も得づらくなります。すぐに納得できないことでも、「なぜそう思うのか」「なぜそういう結論なのか」と相手目線で考え、まず初めは素直に、肯定的に受け入れてみることを続けると、かかわる人たちからは信頼してもらえるようになり、自分の敵になる人は少なくなり、味方してくれる人が増えていきます。周りの人からさまざまな良い話がもらえるようになり、身の回りのことが良い方向に回っていきます。初めは受け入れなければ、その後の議論も成り立ちません。「素直さ」が大事な理由はこういうところにあります。

そんな中、私の関係先のある会社では、自社の人材要件として「素直な人」を前面に立てて、採用活動とその後の人材育成をおこなっています。
思いどおりの人材には、そう簡単に出会えるものではありませんが、できるだけ妥協せずに活動していて、お話を聞くと、それなりの良い人材を集めることができていると自己評価しています。
こちらの社員にお会いすると、確かに皆さん人当たりが良く、研修などをやれば前向きな様子で取り組みます。会社の雰囲気としては好ましいものです。

ただその一方、他の会社と比べて、何となく物足りなさがあります。言葉では表現しづらいですが、活力とか、強さとか、頼りがいとか、そういったたぐいのものが感じられないことです。

この会社が「素直な人」を求めるようになってから、社内で何か問題があったり、今までのやり方を変えなければならなかったりしたとき、それがなかなかうまく進まないということがあります。
みんな仕事には真面目に一生懸命取り組みますが、その一方、どこかで指示を待っている受け身の様子が見て取れます。経験を積ませようと、リーダー役を任せたりもしますが、その人たちの裁量だけでは、なかなか最後までやり切れません。
この会社の社長やマネージャーたちは、「優等生揃いにしすぎてしまったのではないか」と反省の言葉を口にします。

こんな様子を見ていて思ったのは、「素直さ」という資質が大事なことは間違いないものの、こういう人を別の観点から見たとき、「問題意識がない人」「ただの従順な人」「先頭に立たない人」「自分の意見がない人」「ただ他人の言いなりの人」という可能性があることです。

問題意識があるうえで、現状を肯定的にとらえているのであれば良いですが、もしも問題意識を持っていないとすれば、文句を言わないから扱いやすい、ただの作業者ということになります。
言われたことはやるけれども、それ以外のことにはあまり気づかず、非効率だったり、場合によっては間違ったやり方であっても、それに疑問を持たずにやり続けていたりします。

逆に「不平不満が多くて扱いづらい人」がいたとして、これを別の観点で見たときに、本人の行動が伴っていて、他人への伝え方を良く考えたうえでの不平不満であれば、これは「問題意識を持っている」という見方ができます。
不満というのは、“本来あるべき姿”とのギャップがあるから生まれるものであり、このギャップこそが「問題」「改善点」にあたりますが、それを自分なりに考えているといえるからです。

こういうことに限らず、長所と短所は常に裏表の関係にあります。「好奇心旺盛な人」が「継続性がない人」であったり、「集中力がある人」が「視野が狭い人」であったりします。
この会社で求めた「素直な人」は、「許容範囲が広い人」「他人や周りを受け入れる度量のある人」だったはずですが、それがいつの間にか「従順な人」「扱いやすい人」と置き換わってしまっていました。
その結果、「従順さ」の反面で「自分の意見が希薄」「積極性が足りない」「人任せ」といった部分が出てしまっていたのです。

相手が自分たちにとって都合が良い人材だったりすると、ついつい見逃してしまいがちですが、こんな逆の面があることをしっかりと想定しておく必要があります。
さらに、似たタイプの人ばかりを集めても、会社は決して成長しないことを知っておかなければなりません。

次回は10月23日(火)更新予定です。

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この記事の著者

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小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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