第55回 「リーダーが足りない」という会社の「リーダーへの過剰期待」の話

多くの会社から「リーダー人材が足りない」という話を聞きますが、優秀なリーダーがいれば全ての問題が解決するかのような過剰期待が見受けられます。しかし、そんなリーダーがある日突然現れることはありません。

「リーダーが足りない」という会社の「リーダーへの過剰期待」の話

多くの会社でお話をうかがっていると、「リーダーにふさわしい人材がいない」「リーダーが足りない」という話を、特に最近はよく聞きます。
リーダーになるためには、それなりの知識やスキルと、それを駆使した経験が必要ですし、人それぞれが持って生まれたキャラクター、さらには職場環境や相手との相性などに左右されることもあります。リーダーとして力を発揮するためには多くの関門があり、そこまでには相応の時間が必要です。また、他社でリーダー経験があるからといって、自社でも同じことができる保証はありません。
リーダーの役割を担っていくのは、それほど難しいことです。

多くの会社で言われる「リーダーがいない」「リーダーが足りない」という話は、その中身をよく見ていくと、ここには二通りのニュアンスがあります。
一つは、既にリーダー役を担っている人たちが、「自分の役割を任せられる人材がいない」と言っている場合と、もう一つはリーダーでない人たちが、「自分たちをリードしてくれる人がいない」と言っている場合です。

前者の場合は、その人さえいれば「仕事が回る」「受注が増やせる」「生産性が上がる」などといい、後者の場合は「自分たちのスキルが伸ばせる」「お手本ができる」「チームが良くなる」などといいます。
そしてこのどちらも、優秀なリーダーさえいれば問題が解決するかのような言い方をし、典型的なカリスマリーダーを求めています。
そんな状況を見ていると、「リーダーが足りない」の言葉の裏には、そのリーダーに任せておけばあとはうまくやってくれる、リーダーが決めてくれることに自分たちは従っていればよいなど、他人任せで思考停止している様子を感じてしまうことがあります。

これは明らかに「リーダーへの過剰期待」で、一種の他者依存です。現実にはそんな都合の良いリーダーがある日突然現れることはありませんし、一人のカリスマリーダーの力で全ての問題が解決することもありません。リーダー人材の不足を社外から穴埋めする活動は必要ですが、それとあわせて社内にいる人材の中から適任者を見極め、地道に育成するという取り組みも必要です。

リーダーシップのスタイルにはさまざまな形があり、場面によっての使い分けが必要だといわれています。
理論的にいろいろなものがありますが、その中の一つで1977年に提唱された「SL理論」では、リーダーシップスタイルを以下の四つに分類しています。

  1. 教示的リーダーシップ:具体的に指示し、事細かに監督する。(部下の成熟度が低い場合)
  2. 説得的リーダーシップ:こちらの考えを説明し、疑問に応える。(部下が成熟度を高めてきた場合)
  3. 参加的リーダーシップ:考えをあわせて決められるように仕向ける。(部下の成熟度がさらに高まった場合)
  4. 委任的リーダーシップ:仕事遂行の責任をゆだねる。(部下が完全に自立性を高めた場合)

ここで、自分が置かれた環境において、リーダーとしてどんなスタイルで振る舞うのが望ましいかは、結局はリーダー自身が判断していかなければなりません。そのためにはそれなりのスキルと経験が必要です。
私もリーダーシップ研修などをやりますが、実際の現場でリーダーの役割を担うには、小手先のテクニックだけではどうしようもないことも多く、その人の経験やマインドによって結果が左右されることは数多くあります。

リーダーとして一定のベースを持っている人ならば、研修などをきっかけに一段とレベルアップできることがありますが、では研修を受けたからといって、全ての人がリーダー役を務められるようになるかというと、残念ながらそうはいきません。
リーダーとして活躍できるようになるまでにはそれなりの時間も掛かりますし、掛けた時間に比例して成長するとも限りません。また、リーダー的な素養はあったとしても、その人の得手不得手によっては、リーダーシップが取れる分野とそうでない分野が出てきます。

こうやって見ていくと、「リーダーの役割を担う」というのはとても難易度の高いことであり、そうであれば、リーダーが不足することはあっても過剰になることはまず考えられません。「リーダーが足りない」という話は、きっと半永久的に続きます。

日本人はお上意識が強いと言われ、リーダーに従うことで自分の存在を保とうとするところがありますが、これも度が過ぎると、自分で考えることをやめてリーダーに何でもお任せにしてしまい、その意向に従うだけで物事を済まそうとし始めます。
「リーダー不在」という嘆きが強い人、「リーダー批判」が多い人、「強いリーダーシップ」を期待する人ほど、私はそこに“無いものねだり”や“他者依存の強さ”を感じてしまいます。

リーダーを人任せにせず、自分でもその役割を担っていこうとする姿勢がなければ、身の回りのリーダー不足が解消することはありません。
「リーダーが足りない」と言っている中で、それが「リーダーへの過剰期待」に陥っていないか、度が過ぎた他者依存になっていないか、いま一度確認する必要があります。

次回は4月24日(火)更新予定です。

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この記事の著者

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小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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