第10回 年功序列から抜けられない会社で見える共通点

このところ、何社か続けて「年功的な人事制度ではいよいよ立ち行かなくなり、制度改訂を考えたい」という会社からのお話をうかがいました。

成果主義の考え方は、90年代前半あたりから入り始め、90年代の後半から2000年代の初頭までに、制度として導入する企業が相次ぎました。
その当時は年功制と終身雇用に問題があると言われていましたので、その時期に成果主義の導入とセットで見直され、年功的な考え方がなくなっていった会社も多いと思います。

最近はどちらかというと、行き過ぎた成果主義の反省や反動から、個人成果よりチーム成果を重視するなど、仕事柄に応じた成果の捉え方を考えることが課題となっていて、その中では年功的な制度の利点をあらためて見直すところも出てきています。

ただお話を頂く会社は、30年以上前の考え方で作られた、右肩上がり経済が前提の年功序列制なので、今の世の中の流れからは、二回りくらい遅れているような位置づけになります。
立ち行かないというのは、これはさすがに仕方がないだろうと思います。

人事コンサルタントの立場から見ると、逆に今までどうやって維持し続けてきたのかが知りたいところなので、これまでの経緯をいろいろ伺いますが、その事情はやはり各社様々です。
担当者不在、制度改訂に対するノウハウ不足、人件費予算の問題、社員や労働組合との関係、その他細かいものまで含めれば本当にいろいろですが、その中ですべての会社に共通していると見えることが一つあります。

それは「結局は会社側から積極的に取り組もうとしてこなかった」という点です。
まだ使えるからと、古い機械を修理しながら、だましだまし使ってきた様子と似ている気がします。

これがオフィス機器や工場設備のような機械なら、減価償却の問題もありますし、ある一定期間は使わなければならないということがありますが、人事制度の場合はこれとは違い、問題があるならすぐに変えることができます。
もちろん頻繁に変えすぎると、今度は定着しないという問題が出て来ますので、何でもかんでも変えればよいというものではありませんが、この仕組みをいつまでは使わなければならないなどという期間的な制約はありません。

厳しい言い方ですが、「なんだかんだと理由をつけて問題を先送りしてきた結果、いよいよどうしようもなくなってきた」ということになってしまうのだろうと思います。

しかし、もう一つ気づいた共通点があります。
これらの会社はどこも社員の定着がとても良く、企業風土が穏やかということです。
たぶん社員に対する接し方は優しく、何でも成果だの業績だのと追い立てたりせず、昇給も社員みんなで少しずつ分け合ってという考え方です。

これを悪平等で非効率の甘い組織と取ることもできますが、視点を変えてみれば、安定的で個人主義や争いがない穏やかな組織という捉え方もできます。

競争が仕事の質を高めるという部分はありますが、一律に上昇志向をあおっても、それにはついて来られなかったり賛同できなかったりする人たちがいます。
そして、他人と競争することが苦手な人のすべてが、仕事ができない使えない人間かというと、決してそんなことはありません。

昔ながらの年功序列制ではもう立ち行かないことは仕方がないですが、今までそれを維持してきた会社の様子を見ていると、その利点は今起こっている人事上の課題、例えば人材の定着や心理的ストレス、モチベーションの問題の解決策といえる部分もあります。
働きやすい職場という視点で見れば、これも一つの正解と言えるのかもしれません。

もう使い古した考え方とはいえ、その利点を今の制度にどうやって活かしていくかという視点も必要ではないかと思います。
古いものが時を経て見直されるということは、往々にしてあるものです。

次回は月7月22日(火)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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