第33回 「応募者が多い」と喜ぶ会社は本当に良かったのかというお話

ここ数年は求人倍率が上がり、人手不足だという会社が増えてきました。24時間営業の店でも、パートやアルバイトが集められずに、店を閉めざるを得ない時間帯が出てくるなどという話もありますから、人材確保に関する現場の苦労は相当なものだろうと思います。

人気の大手企業や有名企業は別にして、一般的な中堅・中小規模の企業であれば、採用活動をしても応募者の数を集めることに苦労する場合が多いと思います。今のように人集めが難しい時期であればなおさらですが、たくさんの応募者があれば、経営者や人事担当者はそれだけで嬉しそうにしているものです。

最近は応募者が少ないと嘆く会社が多いですが、このように応募者の数で一喜一憂する理由は、「応募者が多ければ、採用予定人数は確保できるだろう」という“数”の皮算用と、「応募者が多ければ、良い人材が混じっている確率が高いだろう」という“質”の皮算用の両方です。
こんなことから、「応募者の数は多いに越したことはない」「多い方がいいに決まっている!」となり、応募者が多ければ喜び、少なければ落ち込むという図式が見えます。

しかし、本当に応募者が多ければ多いほど良いことなのでしょうか?
ちょっと見方を変えて、採用活動の作業効率を最優先で考えると、最も良いのは採用人数ピッタリの応募があり、その全員が採用基準に達している場合で、その人たち全員が、「御社が第一志望です!」と言って、全員が入社するというのが最も良い状況ですね。条件にぴったり合った応募者が、最小限の人数で集まることが、一番望ましいということになります。

そう考えると、応募者の中で自分たちが採用したいと考える人材の比率が高ければ高いほど、良い採用活動ということになります。いくら応募者がたくさんいても、条件に見合わない人、不採用になる人が多いならば、採用活動としては非効率ですから、良い活動とはいえません。

望ましい人材が集まらないということは、事前の情報提供の方法や内容などに問題があるかもしれません。広報する対象がずれているかもしれませんし、時期やタイミングを逸しているのかもしれません。同業他社の募集の陰に埋もれているのかもしれません。応募者の数が多くても、望ましい人材の比率が少ないようでは、それを喜んでいる場合ではないでしょう。

予算や時間に余裕がある、明確な採用基準がある、理想の人材に巡り合うまで募集しつづけるなどという場合は別ですが、その時の応募者の中から選ばざるを得ないという会社も多いと思います。そうであれば、そもそも多くの応募者を集めることが難しい中堅、中小規模の企業では、応募者の人数よりはその中身の方が重要であるはずです。

応募者が多ければ、採用活動は確かに活気が出ますし、関係者はやる気になります。大勢の中から選んでいることで、優秀な人に出会った気がするでしょうが、過去を振り返ってみたとき、必ずしもそうとはいえないことに気づくはずです。

このように、ちょっと視点を変えてみると、今まで良いと思っていたことが、全然違う形で見えてきます。目の前の状況を一方的な見方だけで一喜一憂するのはあまり意味がないように思いますし、そのせいで問題の本質を見失ってしまうなど、デメリットになることもあり得ます。

これはたまたま採用活動での例ですが、その他のいろいろな場面でも心にとめておく必要があると思います。

次回は6月28日(火)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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