第114回 「報告」を避けられてしまう上司の話

「報連相」はビジネスの基本とされ、中でも報告は組織の義務のように捉えられますが、これがうまくいかないとの話は多々あり、その原因として報告する部下の問題以上に、受け取る上司の問題が大きいことがあります。

「報告」を避けられてしまう上司の話

「報連相(報告・連絡・相談)」は、ビジネス上では最も基本的なコミュニケーションといわれ、新人研修などでも必ず取り扱うようなものとされます。その中でも「報告」については、組織上のルールとしては“義務”といってもよいもので、「報告は早く正確に」「悪い報告ほど早く」などといわれます。
しかし、これほど基本的なことだといわれるにもかかわらず、「報告の仕方や内容に問題がある」という企業の話をよく耳にします。ほとんどが「遅い」「足りない」、中には「全く行われない」という状況を聞くこともあり、まさに基本中の基本を逸脱しているわけですが、そうなってしまう理由には、いくつか典型的なものがあります。

「報告」が足りない状況

ある会社での話です。マネージャーが「部下からの報告が遅かったために、またトラブルになった」と怒っています。いつも口うるさく注意しているにもかかわらず、自分への報告が遅かったり後回しにされていたり、最後まで報告してこないことすらあるそうです。報告不足に起因するトラブルが年に数件はあるそうで、このマネージャーは報告の決まりを作ったり、自分で細かくチェックしたりするそうですが、なかなか改善されないということです。マネージャーの言っていることは正論ですし、何とか改善しようとしている様子も分かります。

ただ気になるのは、このマネージャーのチームだけ、「報告」が足りない状況が特に目立って見受けられることです。そういう意識でこのチームの様子を観察していると、いろいろ気になるところがあります。特に感じたのは、マネージャーとメンバーとの会話の少なさです。チーム全体の状況としても、業績が悪いとまではいえないものの決して良いともいえず、他のチームと比べて退職者も多いようです。

上司への報告を避ける理由

そんな中で、このチームのメンバーたちの数人から話を聞く機会がありました。「報連相」のことを聞いてみると、みんな口をそろえて「問題があることは分かっている」と言いながら、合わせて出てきたのは「マネージャーを巻き込むと話がこじれる」ということでした。

マネージャーに何か報告をすれば、それに対する指示があるのは当然ですが、それがどう考えても必要がない無駄なことだったり、過剰としか思えない対応、作業、サービスだったりすることがよくあるそうです。不要、無駄、過剰と言って反論しても、マネージャーは受け入れようとしません。
何か報告するたびに不要、無駄な仕事がどんどん増え、何かにつけて会議、ミーティングだと時間を取られ、それを真面目にこなしたところで、顧客評価が上がるわけでも仕事の質が高まるわけでもありません。そうなってしまうと、このマネージャーへの報告は、よけいな仕事を増やさないために、できるだけ頻度を下げて後回しにしてしまう傾向があるそうです。ただし、トラブルがあるのは事実で自分たちの責任で、問題があることは十分分かっていて、反省する点もあるといいます。

この「あまり報告、連絡、相談をしたくない上司」の話は、いろいろな会社で耳にします。そうなってしまう理由もこの会社の例とわりと似通っています。
部下からの報告に対する上司の指示が、果たして「過剰」なのか「適正」なのか、「無駄」なのか「有益」なのかは、はっきりいってよく分かりませんが、状況によってどちらの場合もあるでしょう。

ここで一番問題なのは、「上司に報告しても適切なフィードバックが得られない」と、部下たちが思ってしまっていることです。そう思わせてしまう反応、態度、過去のエピソードが、何か必ずあるはずです。
このケースでは「話がこじれる」ですが、他にも「火に油」「過剰な謝罪」「解決にならない対策」「見て見ぬふり」など、いろいろなことがあります。

報告を受け取る上司の対応を見直す

「報連相」の中でも、特に「報告」は部下から始まるコミュニケーションですので、するかしないかの判断基準が相手次第という難しさがあります。ここでは、それを受け取る側の上司がどんな対応をするかが重要になります。
例えば、「報告すると良いアドバイスをもらえる」「一緒に考えてくれる」「勉強になる」などとなれば、部下たちは放っておいても自分たちから素早く報告してくるようになります。これが正反対の状況となれば、報告を躊躇(ちゅうちょ)してしまうのは当然でしょう。

「報告しないこと」が良くないのは大前提として、「報連相」は上司と部下とのコミュニケーションであり、うまくいかないのはどちらか一方だけの問題ではありません。必ず両方に何らかの問題があります。
にもかかわらず、それがうまくいかないときは、多くが部下の側の問題として扱われ、規則ができたり指導されたり研修があったりします。しかし、「報告」を受け取る上司の側の問題のほうが大きいことは、それ以上に数多く目につきます。

「報連相」がうまくいかないという心当たりのある上司は、自分の対応が部下からどう見られているかを、いま一度見直すことが必要だと思います。

次回は3月28日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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