第37回 部下たちが積極的に動ける環境を作っているかという話

いろいろな会社で、社長や管理職の方々とお話ししていると、こんな話がよく出てきます。
「うちの部下たちは自分から提案してこない」
「会議で積極的に発言する部下がほとんどいない」
「言われるまで待っている受け身でばかりで自ら動かない」

さらに細かく話を聞いていくと、確かにそう言いたくなる気持ちも分かります。私も同じ立場にいたとしたら、同じように感じたのではないかと思います。

こういう方々は、「自分たちはもっといろいろ上司と話していた」「もっと自分から行動していた」「もっと意見を言っていた」など、自分が部下たちと同じ立場だった頃は、これほど消極的ではなかったということをおっしゃいます。
この手の話は、自己肯定に基づいて誇張されて言われる傾向があるので、実際にどうだったのかは判断のしようがありませんが、私がいろいろな会社での様子を客観的に見ている中では、「何事にも遠慮しがち」「主張は控えめ」「出る杭にはなりたくない」という傾向は、確かに見受けられるので、物足りなさを感じてしまっても仕方がないところはあるでしょう。

ただ、私は、社長や管理職の人たちの、こんな態度や言い分も、ある意味「受け身」で「他責」ではないかということを思っています。相手(部下)の行動を受け身で待っていて、思ったとおりにならないことを非難しているだけだからです。
もちろんそれなりに指導はしているでしょうが、自ら動いた結果で上司から怒られたりダメ出しをされたりということが続いているようでは、行動しづらくなってしまうのは当然ですし、提案しても門前払いばかりだったとすれば、いつかそういう行動はしなくなってしまうでしょう。
批判が正当であると言い切れるほど、本当に部下たちが自ら行動できるような環境作りを行っているのだろうかということです。

これは、ある中堅企業の社長の話ですが、この方はいつも社長室の扉を開けていて、「何かあったらいつでも来なさい」と社員に言っています。現場の社員と直接コミュニケーションをとることが大事だと考えていて、常にウェルカムなスタンスでいて、どんな人の話もきちんと聞いてくれる方です。

でも、そんな社長室に部下たちがいろいろ話をしに行くかと言えば、そんなことはほとんどありません。部下からすれば、社長室という場所はやっぱりどこか敷居が高いし、相手が社長となれば、気軽に何でも話せるような関係ではないからです。

そこでこの社長は、今度は自分の方から社長室を出て、社内を回りながらいろいろ話を聞くようにし始めました。
はじめは「最近どう?」などという程度の世間話からだったようですが、これを続けているうちに、社員の方から少しずつ、「実は最近あったことで…」というような話や、「こんな時はどうすれば…」というようなアドバイスを求める話、親近感を持った雑談的な話などが出てくるようになったそうです。

社長や管理職の方は、よく「何かあったら言ってきなさい」などと言いますが、部下からすれば“何か”がどの程度なのかの判断は難しいですし、気安く何でも話せる関係ならばまだしも、そうでなければ上の立場の人に話をしに行くのは、それなりのハードルがあります。

「皆さん質問がありますか?」と聞くと何も出てこなくても、直接名指しや個別に「質問がありませんか?」と聞くと、何かしら出てくる様子と似ているかもしれません。

もしも“提案がない”、“発言が少ない”、“報告が足りない”、“コミュニケーションが少ない”などという課題を感じているならば、もっと上司の立場からも働きかければ、もっと環境を作ってあげれば、今までよりもいろいろなことが引き出せるのではないかと思います。

「部下たちからの提案がない」「積極的でない」という原因は、実は上の立場の人たちが作り出しているのかもしれません。

次回は10月25日(火)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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