第53回 起業したての社長に見えた「気負い」と「独りよがり」の話

明確な目標を持った経営者やリーダーには感心する一方、これが「気負い」「独りよがり」になっている人を見かけます。経営者や管理者などの組織のリーダーは、「自己中心」が行き過ぎないように注意が必要です。

起業したての社長に見えた「気負い」と「独りよがり」の話

私のコンサルタントという仕事柄、また自分自身も経営者ということから、経営者、社長、役員、事業主といわれる立場の人と接する機会が多くなります。

そういう人たちは、事業規模の大小はありますが、自分のやりたいことがとてもはっきりしています。こういう事業をやりたい、こういう立場になりたい、こんな貢献をしたいなど、その中身は千差万別で大きなことから細かいことまでいろいろですが、そんな思いには刺激を受けたり、尊敬したり、共感したりします。
夢、目標、目指す場所がはっきりしているというのは素晴らしいことですし、皆さんさすが経営者、リーダーだと感心します。

ただ、そんな中でもごく一部ではありますが、「本気でそんなことが実現できると思っているのか」という人に出会うことがあります。事業内容、目標、思い描いている理想の姿が、あまりにも現実的ではないと見えてしまうのです。
もちろん事業は何が当たるか分かりませんし、私のような保守的な発想では、成功することができないのかもしれません。ただ、ここで言っているのは事業だけでなく、その人の態度や言動、思考パターンなどのパーソナリティーも含めてのことです。

これは少し前にある会合でお会いした社長ですが、年令は40代前半くらいのまだ起業したばかりの人でした。
熱心に自分のビジネスプランを語るのですが、あまり人の話を聞かず、要所要所に自分が都合よく解釈した強い思い込みが混じっています。あくまで私の印象ですが、語っていたサービスをお金を払ってまで受けたい人は、なかなかいないのではないかと思う内容でした。
いろいろ質問してみましたが、回答はあまり要領を得ず、最後は「そんな細かいことは考えても仕方がない」「気合でどうにかなる」などと言います。

また、会社を立ち上げたばかりで気負いがあるせいか、強めの押しで売り込みをしてきます。しかし、私も含めた多くの人は、よほどのニーズや興味があることでない限り、会ったばかりの人といきなり取引はしないはずですし、売り込まれたサービスは、そもそも私には全く不要のものです。
この人の「やりたいこと」は理解できましたが、ちょっと「気負い」「独りよがり」「思い込み」が強すぎると感じ、これでは周りの人が味方になってくれないのではないかと思いました。

皆さんもいろいろ経験はあるでしょうが、私はほかにもこれまでに、「“俺が直してやる”と上から目線で近寄ってくる人」「怪しいビジネスプランばかりを一方的に語る人」「手助けと言って立ち入られたくない領域まで踏み込んでくるおせっかいな人」などに出会ったことがありますが、共通するのは「自己中心的な思考パターン」です。
「周りから望まれていること」にはあまり気づいておらず、「自分のやりたいこと」ばかりが優先されていて、なおかつそれが自分の収入とからんで、「早くどうにかしたい」と気負っています。

こんな「自己中心的な思考」は、企業の中でも見かけることがあります。
例えば、上司の指示は後回しで、自分が思っていることばかりを優先するような部下がいます。「上司の指示はあまり重要と思わない」などと言い張りますが、本人がやっているのも優先度が低いことだったりします。

逆に上司や管理者の「自己中心的な思考」では、部下たちは振り回されて右往左往しているのに、本人は何も感じていなかったりします。振り回している張本人が社長ということもあります。
ただし、社長というのは経営リスクを負っていることもあり、その人の「自己中心」は、何があっても最終的には全て自分の責任になりますが、これが一般的な管理者となると、少し事情が違います。自分の行為に対するリスクの認識がほとんどないため、「やりたいこと」ばかりが加速して、その分「自己中心」には気づきづらい感じがします。

こうやって見ると、「やりたいこと」からつながる「気負い」「独りよがり」は、組織の中で起こったときの方が、よほど問題が大きいようです。
経営者や管理者の立場であれば、自分の行動や言動が「気負い」や「独りよがり」に陥っていないか、「自己中心」に傾いていないかということには十分注意をしなければなりません。

次回は2月27日(火)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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