第7回 社長と部下の間で苦労するナンバー2の部長のお話

それなりの社員規模の会社であれば、組織が年齢や経験値を網羅した階層構造で整備され、それぞれの職務権限に応じた組織運営ができるようになっています。
ただ、中小企業ではなかなかそうはいきません。
組織のメンバーの年齢や経験値というのは、必ずしも階層化や序列化がしやすいとは言えないことがほとんどだと思います。

また、どんな大企業であっても、直接的に同じ仕事をするチームというのは、五名程度から最大でも十数名程度という単位になってくるのではないでしょうか。
そういうチームであれば、やはり中小企業の場合と同じく、チームを構成するメンバーの状況はまちまちだと思います。

組織運営、チームマネジメントという中では、リーダーシップの重要性が常に言われるところですが、実際の組織運営がリーダー一人の力だけでできるとは限りません。
やはりリーダーを支える人、組織のサブリーダーと言われるような人の存在が大事になってきます。このサブリーダーというのは、何人かに分担されていたり、キャラクターの違いでサブリーダー的に振る舞う者がいたりするなど、本当にいろいろな形があります。

そんな中で今回取り上げるのは、あるオーナー企業のナンバー2部長という、世間からは典型的なサブリーダー、参謀として見られる方の苦労のお話です。

このオーナー社長は、強引に何でも自分で決めたり、説明もせずに何かを始めてしまったりするようなことはしない、温厚で人の意見をよく聴く方です。
社員たちのことはそれぞれの部課長たちに任せているというスタンスなので、よほどのことがない限り、自分が直接口出しするようなことはありません。

こんなタイプの社長なので、ナンバー2の部長には、当然いろいろなことを相談します。
部長としては、一方的に言われないという良い面はあるものの、そのかわりに社長と一緒になっていろいろなことを考えなければなりません。
中には経営の専権事項と言っても良い重要な内容も含まれます。

この部長の直属の部下は、各課の課長たちになります。
彼らに対しては当然業務上の指示を直接出し、彼らからの報告、相談も受けます。
課長たちから聞く内容は、その配下の部下たちのマネジメントや、部下の不平不満についての処し方など多岐に渡ります。

この状況からお分かりのように、ナンバー2の部長は、社長と部下である課長や一般社員たち両方の事情を良く知っているために、自分の内に抱え込まなければならないことがとても多いのです。
社員には簡単に話せない情報は当然あるとして、それ以外にも「これは社長には言えない・・・」「これは社員たちには言えない・・・」ということも多々出て来ます。
誤った情報による誤解があっても、その事情を説明しようとすると、まだ公表できないようなことに行き当たってしまうなど、両方の板挟みになってしまいます。

割り切ってどちらかに近いスタンスを取れば、それほど問題はないのかもしれません。
一般的なナンバー2であれば、社長寄りのスタンスを取ることが多いのでしょうが、この部長はそうはしません。
そのおかげか社員からの人望も厚く、いろいろな情報がこの人のところに集まってきます。

いろいろなことを気遣いながら、ある時は社長を立て、またある時は苦言を呈します。
部下の課長や社員たちに対しても同じです。
社長と社員の間をつなぐ通訳、翻訳家と言っても良いような役割を担っています。これは管理職という立場であれば、
多かれ少なかれこのような役割を持っていると思いますが、このナンバー2部長の振る舞いは絶妙のバランスでピカイチです。

こんな役割がこなせるのは、部長自身が有能であることとともに、ナンバー2という立場にいるからこそできることでもあります。もしも社長が同じような能力を持っていたとしても、まったく同じように振る舞うことは、残念ながら難しいでしょう。

私の経験として、経営者が直接現場の作業を取り仕切っている会社は、どこかで頭打ちに陥ってしまいますが、有能なナンバー2、ナンバー3がいる会社というのは、継続して伸びていく確率が高いと感じます。

組織の中でリーダーを育てようとする取り組みは良く見かけますが、このナンバー2、サブリーダー、参謀的な立場が取れる人材を育てる取り組みというのは、なかなか見かけることがありません。
ただ、実はこういう人材が、組織が発展できるかどうかの、浮沈のカギを握っていると言えます。

今回のナンバー2部長は、何かと苦労が多い立場ではありますが、組織の中のキーマンとして、これからも活躍していってほしいと思います。

次回は月4月22日(火)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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