第8回 受け身に見えてもやる気満々な新入社員のお話

この4月から新入社員を迎えられた会社も多いと思います。
私もいろいろな会社の研修で、新入社員の方々と接する機会があります。研修ご担当者は、毎年のカリキュラムに頭を悩ませていらっしゃいますが、その指導が年々難しくなっているという話をよく耳にします。
ゆとり世代に関する話題や、モンスター社員といった極端な存在が取り上げられる事もあり、過剰に身構えているようなところもあります。

私の経験でいえば、確かに一般的な常識からかなり外れた行動を目にした事はあるものの、それは本当にレアケースです。
そもそもそんな人の大半は、採用の段階でチェックされているでしょう。
「礼儀を知らない」「自分の予定や都合ばかり主張する」といった指摘がよくされますが、このあたりは新入社員に限らず、世代を超えて見受けられる傾向のように思います。

今の新入社員の多くは、まじめで素直で優しく、集団から浮く事や失敗する事を嫌がります。
そのせいか、ちょっと受け身で慎重なので、行動が遅く見えたり保守的でバイタリティーが足りなく見えたりしますが、概して優秀であると感じます。

ただ、これを指導する側から見ると、どうしても自分との価値観の違いや、欠点の方に目が行ってしまう傾向があるので、「ここもダメ」「あそこもダメ」となりがちなのではないかと思います。

私が新人研修の依頼を受ける際に、会社側からよく言われるのは、今の新入社員は「自律的に行動できず」「受け身で指示待ち」なので、この意識改革をしたいという事です。
このあたりは、世間一般で言われている事でもあり、そのおかげもあってか、私が見ている限りでは、新入社員たち自身も、これを課題として意識していると感じます。

ただ、頭で理解しているからといって、それがすぐにできるかというと、そういう訳にはいきません。
「いくら言ってもできない!」「いつまでたっても受け身」という批判があったりしますが、そんな理由として、私はこれまで彼らが置かれてきた環境に一つの原因があると思っています。

どういう事かというと、例えば「今の若い世代は失敗を恐れる」などといいますが、失敗は誰だって嫌なものです。
そして新入社員たちの世代が、失敗しないですむように導いていたのは、その上の世代である親や教師であったりします。

失敗しないためには、指示されるのを待ち、それを言われた通り的確にこなす事が良しとされ、それができれば褒められます。
逆に指示されない事をやれば、失敗の確率は上がるので、怒られてしまう事の方が多かったはずです。
指示を待って言われたとおりにやると褒められ、自分で考えて動くと怒られる訳ですから、褒められた方の行動が強化されていくのは当然です。

それを今になって「自分たちで考えて動け!」と言われても、過去の成功体験とは真逆の事を言われている訳で、本人たちは混乱して当たり前です。最近は家庭でも学校でも、自律を意識した指導がされつつありますが、一度強化されて習慣化したものを変えるには、なかなか時間がかかります。

気を利かせて自発的に動かなければならない事は、自分たちなりに理解していますが、実際にどうすれば良いのかがイマイチわかりません。
それは今まで置かれてきていた環境とは違う事を要求されているからで、戸惑ってしまうのも無理はないと思います。
これを指導する側から見ると、「まだまだダメだ」となってしまうのでしょう。

ただ、少なくとも新入社員たちは、みんな自分たちなりに努力はしていて、それなりのやる気を持っています。
一見すると受け身に見えても、実はそれが「やる気満々の受け身」で、仕事を指示してもらうのを待っていたりします。

どうも新入社員を指導する側は、“受け身イコールやる気が足りない”と捉えがちなようですが、必ずしもそうではありません。
やる気満々で仕事を待っているのに、「お前はやる気が足りない」などと批判されれば、本人はどうして良いのかわからなくなってしまいます。
肝心のやる気も薄れてしまうかもしれません。

世代が違えば育ってきた時代背景も価値観も違って当たり前です。ただ、その違いばかり嘆いても何の解決にもなりません。
「まじめで素直で応用は利きづらいけど、言われた事はしっかりやろうとする」という特徴を理解して歩み寄ってやれば、意外に早くいろいろな事を身につけて行くかもしれません。

次回は月5月27日(火)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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